週刊ラジオ「表現者」
KBS京都ラジオ[AM 1143kHz]毎週月曜夜9:30
最新の「週刊クライテリオン」をスグにお聞きいただくために、
ぜひ下記のリンクからYouTube「チャンネル登録」をお願い致します。
https://www.youtube.com/channel/UC9GNcWzLq0k7io20AHjN4qQ
-
グローバリズムへの「防衛戦争」が始まった!
2018.10.01
今週のテーマは『グローバリズムへの「防衛戦争」が始まった!』。
グローバリズムとは、「国境にこだわる時代ではなくなった」として、貿易や移民の拡大を奨励するものである。しかし今、このグローバリズムへとの戦いが各国で始まっている。アメリカのトランプ大統領がメキシコ移民の規制強化を主張し、ヨーロッパで反EUの機運が高まりつつあることがその典型だ。
じつはこの事態は、100年ほど前に経済人類学者のカール・ポランニーを予言したことであった。市場というものは「社会に埋め込まれる」ことで初めて正常に機能するものだが、グローバリズムとは市場が国境を超えて社会を飲み込んでいくような現象だ。「カネ」が全ての世の中になり、人間らしい生活は失われ、人々はフラストレーションを溜める。それはいつか爆発し「大転換」を引き起こす。
19世紀から20世紀初頭にかけては、共産主義やナチズムの台頭、そして二度にわたる世界大戦が「大転換」であった。そして今また、その大転換が始まろうとしている。 -
災害大国ニッポン、今やもう「後進国」
2018.09.24
今週のテーマは「災害大国ニッポン、今やもう『後進国』」。 六月の大阪北部地震、七月の西日本豪雨、九月に入ってからの台風21号と北海道地震と災害が続いて明らかになったのは、日本は「災害大国」であると同時に「防災後進国」と化しつつあるということだ。
関西空港の水没も、北海道の大規模停電も、防災の専門家が以前からその危険性を指摘していたシナリオの一つであり、想定どおりの対策をしてさえ入ればあのような惨事にはならなかった。しかし例えば関西空港については民営であることなどがネックとなり、十分な対策が施されていなかったのである。
起きると分かっていて、しかも十分に防止することができる被害を防止できないのであるから、「防災後進国」と言われても仕方ないであろう。 -
「身の丈のべき論」から始める保守思想――「戦後」を考える(ゲスト:浜崎洋介)
2018.09.17
今週のテーマは「『身の丈のべき論』から始める保守思想――『戦後』を考える」。
戦前の日本では、賛否はともかくとして「尊王攘夷」「大東亜共栄圏」といった「べき論」が社会に緊張感を与えていた。ところが敗戦後の日本人は、「べき論」をアメリカに預けて自ら語ることをやめてしまい、少しも緊張感のない社会を作り上げてしまった。
文学においても、戦後すぐに登場し「第三の新人」として耳目を集めた作家たちが、この社会の緩みを象徴している。文学界においては高く評価されているのだが、『表現者クライテリオン』の座談会で取り上げて論じてみたところ、散々な評価を下さざるを得なかった。
戦前の日本には、大東亜共栄圏という大きな「べき論」があった。これが身の丈に合わないものであったならば見直しはされて然るべきだが、戦後日本人が全く「べき論」を持たなくなってしまったのは明らかに堕落である。第三の新人が描いた、たとえば恋愛のような「目の前のべき論」をさえ引き受けることができない日本人に、まともな社会や国家を築き上げることなどできるわけがない。ゲスト:浜崎洋介
-
近代日本の「宿命」から考える保守思想――「戦前」を考える(ゲスト:浜崎洋介)
2018.09.10
今週のテーマは「近代日本の『宿命』から考える保守思想――『戦前』を考える」です。黒船襲来からはじまる欧米列強からの日本への侵攻がはじめられる
。その後、「100年」に渡る日本の防衛戦争は、 かの大東亜戦争/太平洋戦争の敗北で幕を閉じる。そして、 占領国「文字」が全て書き換えられてしまう程に、 社会が凄まじく作り替えられてしまう―――この「 哀しくてやりきれない」真実を、認識せずして、 戦後日本の再生はあり得ない。そんな話を、文芸批評家で、 表現者クライテリオン編集委員の浜崎洋介氏をゲストにお迎えして 、お伺いします。 ゲスト:浜崎洋介
-
-
-
ポピュリズムが暴走すると、ホントに怖い
2018.08.21
今週のテーマは「ポピュリズムが暴走すると、ホントに怖い」です。
欧米の「労働者のためのポピュリズム」とは違って、日本国内では単なる「人気取り」に過ぎないポピュリズムが頻繁に生じている。にもかかわらず日本のマスコミは、海外のポピュリズムを批判しながら、国内のポピュリズムは歓迎するのが常となっている。
最近の例で分かりやすいのは東京都の「小池百合子」現象。豊洲市場移転にわけの分からない理由で反対し、メディアもこれを歓迎して大人気を得たかと思いきや、国政選挙では大敗するというふうに、節操なく暴走するのが日本のポピュリズムである。
「バッシング」により「炎上」を焚き付けて衆目を集めるのが、最近の日本の政治家の悪しきセオリーとなっているが、庶民は政治家の炎上商法に騙されてはならない。 -
日本には今、「ポピュリズム肯定論」が必要です!
2018.08.14
今週のテーマは「日本には今、『ポピュリズム肯定論』が必要です!」
「ポピュリズム」は日本では「大衆迎合主義」と訳されていて、大衆の人気取りに専心する政治家への侮蔑語となっている。しかしその元来の意味は「ピープル」つまり「人々」のための政治を行うということであって、それが悪いことであるはずはない。
いま欧米で台頭しているポピュリズムは、エリート政治家やビジネスマンが推進してきた「グローバル化」のせいで仕事を失った労働者が、怒りの声を挙げるという現象である。エリートたちが労働者に不利益と不自由を押し付けて、自分たちは大きな利益と自由を手にしている今のような世界では、「ポピュリズム」こそが肯定されるべきなのだ。 -
「大事なこと」を忘れてしまった戦後日本人(ゲスト:川端祐一郎)
2018.08.07
今週のテーマは「『大事なこと』を忘れてしまった戦後日本人」。ゲストは『表現者クライテリオン』編集委員の川端祐一郎です。毎年この季節になると戦争の話題が多くなりますが、あの戦争が素晴らしかったとか愚かだったとかいう論争の前に、兵士たちの戦いの壮烈さ、非戦闘員の犠牲の悲惨さ、そして敗戦の悔しさといったものを「記憶にとどめておくこと」こそが大事なのではないでしょうか。
ゲスト:川端祐一郎
-
「素朴な文化」と「気取った文化」の対決が始まった世界(ゲスト:川端祐一郎)
2018.07.31
今日のテーマは「『素朴な文化』と『気取った文化』の対決が始まった世界」です。グローバル化によってエリートと庶民の所得格差が開いており、それが今欧米世界を動揺させているポピュリズム運動の引き金になっているわけですが、同時にエリートと庶民の間には「職業観」「人生観」などをめぐる深い対立があって、それがややこしい混乱を引き起こしています。この問題を、『表現者クライテリオン』編集委員の川端祐一郎とともに語ります。
ゲスト:川端祐一郎(京都大学大学院助教・表現者クライテリオン編集委員)
-
危機には、「バケーション」が必要です。
2018.07.24
今週のテーマは「危機には、「バケーション」が必要です。」
ヨーロッパ人は夏になると、四、五十日の休暇を取るのも珍しくはない。それにもかかわらず彼らは、日本以上に高い経済成長を成し遂げているのである。
適度に息を抜いて遊ぶ時間を設けなければ、日に日に視野が狭まって、柔軟な発想力や問題解決力を失っていくのが人間である。我が国が「緊縮財政」と「デフレ不況」の悪循環に陥っているのも、休みなく働き、遊ぶことを知らないせいで、政治家や官僚たちの頭が凝り固まっているからではないか。適度に息を抜いていれば、自分の思い込みの誤りに気づいたり、思いもよらないアイディアに恵まれたりするもの。そうしてこそ人間は「危機」への対応力を持ち得るのである。 -
「人の命」より「財政規律」を守るという政治犯罪
2018.07.16
今週のテーマは「 『人の命』より『財政規律』を守るという政治犯罪」です。
6月末から7月初頭にかけて西日本各地が驚異的な豪雨に襲われ、大規模な洪水や土砂災害により200名以上の命が奪われた。見過ごせないのは、これらの被害が単なる天災ではなく「人災」でもあったことだ。
今回氾濫した河川の多くには、じつは堤防の整備計画が存在し、完了していれば殆どの被害を防ぐことができたと考えられる。それらの整備は実現が不可能だったわけでも、やむをえぬ理由で遅れていたわけでもない。「財政規律」を口実に、政治と行政が予算をカットしてきた結果なのだ。
多くの命を奪ったもの、それは緊縮を優先して災害対策を怠ってきた政治家や役人たちによる「不作為殺人」であったと言わざるを得ないのである。