改題第8号(通巻第86号) 読者からの手紙

侵略戦争への姿勢の責任

 日本の過去の侵略戦争の責任、そういう言葉を使うと左翼だと思われそうだが、対米従属を考えるためには日本の植民地支配を振り返る必要があると思う。
 日本の植民地支配について、日本は支配地域に良いことをした、としばしば保守派は言う。
 なるほど朝鮮は日本の植民地となり近代化した。公共インフラもたくさん整備した。近代的な学校教育も行き渡った。満州でも同じだ。 
 結果、日本が重点的に投資した朝鮮北部がソ連に占領され北朝鮮となり、その(南朝鮮より)豊かな国力を以て朝鮮戦争を起こした。
 また発展した満州地域とそこに住む日本流の教育を受けた人々は中国の近代化に大きな貢献をした。
 別に投資先が共産主義に染まってしまったことを批判したいのでは無く、それだけ日本の植民地支配は手厚かったということを言いたい。
 これは他国の植民地で似たような例をあまり聞かない。オランダなどは搾取ばかりしていたようだ。それに比べて日本のなんと良心的なことか。
 そんな日本の植民地支配だが、好意的に受け止められたかと言えば必ずしもそうではない。          
 映画『この世界の片隅に』でも少し描かれていたが、玉音放送の後、太極旗が各地で振られ、我は戦勝国民なりなどと振る舞っていた人間が多くいたのが証拠と言える。
 我々日本人は彼らのナショナリズムを傷つけてしまった。
 しかし歴史を知っている人なら、朝鮮や満州を始め日本の植民地の多くは当時独立できない状態だったと言うだろう。
 ただ、その理論は現代日本にも当てはまるのではないだろうか。たとえアメリカが日本の主権・独立を破壊し支配したという歴史はあれど、現代日本は自分たちで独立できるのだろうか。
 そんな人間達が朝鮮や満州・中国は独立できない状態だったのだと、偉そうに言えるのか。
 別に本当の事を言うなとは言わないが、自分たちを慰撫するためにそんなことを言うのは異常だ。
 中国人や朝鮮人には近代国家をつくる力が無かったという主張は、現代日本人が言えたことではない。その理論ではアメリカに「日本は独立する力が無い」と言われればおしまいだからだ。そして残念ながらそれは事実かもしれない。
 その意味で、日本の植民地支配正当化は自虐になってしまう可能性をも孕んでいるのだ。
 ひと昔前までは左翼の自虐史観が流行しており、日本の植民地支配がその地域のためになった、という事は自虐史観打破に大いに役立った。
 しかし今一部で、日本の侵略戦争責任は全くないといった主張がみられる。
 東京裁判を始め法的に責任があるという理論は確かに破綻している。不戦条約など、いや国際法など「A君がやったから私もやっていい」という程度のものであるし、そもそも不戦条約は自衛戦争を禁止していないためだ(自衛でない戦争など広義の上では無いのだが)。
 しかし道義的責任はあるのではないか。
 もっとも、道義的責任とは曖昧なものなので、具体的に国が謝罪するべきだとか、そういうことを言うつもりはない。
 繰り返すが、日本の植民地支配はその地域のナショナリズムを大いに傷つけた。この点が問題なのだ。
 植民地支配は列強各国がしていたのだから、日本が批判されるのはおかしいと思うだろう。    
 しかし道義的責任はナショナリズムを傷つけたという点で各国にあるのではないか。
 植民地支配の優劣としては日本はかなり優秀な方だろうが、ナショナリズムを傷つけることは良い施政をしていても避けられない。たとえ経済的にある程度発展していたとしてもだ。その痛みは心ある現代日本人ならよく分かるはずだ。
 であるから植民地支配というのは本来、相手を否応なしに傷つけてしまう、だから相手に申し訳ないという、そんな誠意と覚悟を持って行うべきことなのかもしれない。
 戦後の人間にも、戦争に対する姿勢についての責任があるだろう。
 植民地支配を正当化するのは、アメリカによってナショナリズムを根っこから傷つけられ、いや、「傷つける」という言葉では表現できかねるほどの現代日本の植民地支配を肯定することに繋がりかねない。
 中国人や朝鮮人の場合、長きに渡る植民地支配があっても、宗主国日本の敗戦後、(不健全な形で)ナショナリズムを発揚した。
 他の植民地の場合でも、一時的には他国の支配に甘んじることがあるが、その後は多くの場合独立の気運が盛り上がる。
 日本の場合、アメリカが何かの拍子で没落した時、(アメリカに対して)ナショナリズムを発揚できるのだろうか。不健全な形ですらできないのではないか。
 またウィルソンの唱えた民族自決が世界中に混乱をもたらしたのは否定できないから、何も当時の朝鮮・中国を支配せず、放っておくべきだったとは言わない。
 ただそれを日本に適応すると、「日本の対米自立はアメリカのアジアに於ける影響力を低下させ、混乱をもたらすから、諦めよう」という理論にならないか。
 つまり民族自決を否定するのは奴隷のような現代日本を肯定する事にならないか。
 私にはこれらの問題に対する答えが思い付かない。確かに日本の植民地の多くに独立する力が無かったのは事実であるし、民族自決を認めることは世界に混乱をもたらすからだ。
 対米従属からの脱却を目指す、特に保守派の人には、ぜひ以上のことをよく考えていただきたい。
 最後に、日本の所謂「侵略戦争」は自衛的なものであったという事実を付して終わる。

投稿者 : 

  • 實山由斗(東京都在住、17歳、高校生)

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