メディアも政治家も経済界も、口を開けば「増税」のオンパレード。
そんな彼らの〝ウソ〟には、こう対処せよ。
【Q1】「戦後二番目の景気拡大期」などと言われている今が、増税のチャンスではないのか?
【A1】今の増税は最悪のタイミングです。今、増税してしまえば、日本は再び激しいデフレ不況に舞い戻ってしまいます。
「戦後二番目の景気拡大期」と言われているのは、ただ単に、景気が上向いてきている期間が「長い」、というだけで、その成長の勢いが二番目に強い、という話とは全く違います。現下の状況は、全く勢いのない経済成長がダラダラと続いているに過ぎません。しかも、そのダラダラと続く成長がもたらされているのは、単に、世界経済の好景気を背景とした「輸出の増加」がメインの要因。日本経済の勢いそれ自身は極めて脆弱。こんな状況で増税をしても、それを乗り越えることはできません。
それ以前に、増税をする予定の2019年というタイミングは、文字通り「最悪」のタイミングです。「オリンピック特需」が終わり、「世界経済」が不景気になっていき、しかも、働き方改革で残業代が5~8兆円程、私たちの給料が減っていく時期でもあります。だからそもそも、増税などしなくても「大型の景気対策」が必要なくらいに、最悪の状況になっていくのが、2018年という年なのです。そんな状況で、日本経済の6割を占める消費に「増税」なんてしてしまえば、最悪の経済状況となるのは明らかです。
このあたりの状況についての詳しい議論は、「なぜ今、『消費増税を凍結せよ』なのか?」──以下、巻頭企画と呼称します──や、本誌に寄稿された数々の経済学者、エコノミストたちの記事を参照ください。各寄稿者がそれぞれの立場で、それぞれの視点で、如何に来年の消費増税が「危険」極まりないものであるのかを、冷静かつ客観的に議論しています。
【Q6】福祉とか社会保障のためには、やっぱ、消費増税が必要なんじゃない?
【A6】社会保障のために、消費増税は、必要ありません。むしろ、消費増税をすれば、安定的な社会保障が不可能になってしまいます。
高齢化社会を迎える我が国で、「社会保障」をどうしていくのかは、とても大切な議論です。でもだからといって、「消費増税すべきだ!」と考えるのは、あまりにも短絡的。というよりもむしろ、「愚かの極み」と言わざるを得ません。
第一に、先に指摘したように性急な消費増税で、かえって税収が減り、将来の社会保障が難しくなってしまいます。あるいは、経済評論家の島倉原氏が指摘するように、「生活に困窮している人」それ自身を減らすのが社会保障政策の目的なのですから、格差と貧困を拡大する消費増税などあり得ない選択だとも言えます。
第二に、本誌の座談会の中で元財務官僚で経済学者の髙橋洋一教授が指摘するように「社会保障」のための財源に「消費税」を当てるのは、「世界の非常識」。おおよそ社会保障制度は、飯田泰之准教授が指摘しているように「世代で閉じた社会保障制度」にしておかなければ、その持続性が保てません。にもかかわらず長期的な展望もなしに、目先の財源確保で消費増税をしてしまえば、経済が不安定化し、将来世代の社会保障財源が、ますますなくなっていきます。
だから財源確保のためには、(例えば、島倉氏が主張するように)「成長」こそが必要なのであり、(例えば、エコノミストの会田氏や岩田氏が論じたように)大局的視点の下で「国債」を発行しつつ、(例えば、髙橋氏が指摘したように)保険制度を見直すことが必要です。そして、消費増税の代わりに、例えば塚崎公義教授が指摘する所得税増税や、岩田教授が指摘した相続税の見直しなどを行えばよいのです。
第三に、消費増税が行われてきた背景には、法人税減税が繰り返されてきたという歴史的背景があります。例えば、経済学者の菊池英博教授が指摘しているように、法人税が縮小してきた減税分はおおよそ、消費税増税による増収分とほぼ同水準。つまり「法人税減税のために空いた穴埋めのために、消費税が増税されてきた」のです。だから、このバランスを見直し、消費税の代わりに法人税を増税すべきであるという議論は当然成立します。
このように福祉や社会保障を充実したいなら、成長すべきであり、一時的な国債発行の可能性も見据えながら社会保障制度それ自身を見直すべきであり、税制そのものを見直すべきなのです。にもかかわらず、目先の財源確保のために焦って消費増税をしてしまえば、成長できず、かえって日本人の社会保障環境は「最悪」なものとなってしまいます。
(その他のQ&Aは、別冊クライテリオン「消費増税を凍結せよ」にてお読みください)