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思想・言論誌表現者クライテリオン

西部邁氏が創刊した『発言者』『表現者』の後継誌として、藤井聡・柴山桂太・浜崎洋介・川端祐一郎の編集体制で2018年2月より隔月刊で発行。
右翼とも反左翼とも異なる「真正保守」の立場で、人間と社会に関わるあらゆる問題を論じます。

表現者クライテリオン』創刊の辞

グローバリゼーションによる世界的な国家の融解と地域紛争・テロの拡散、国内では二十年を超えるデフレと格差・貧困の拡大、あらゆる伝統、文化、そして社会的に共有されていた知徳や見識の蒸発、それらに伴う急激な国力低迷と背中合わせに進行する周辺領土問題の深刻化、核攻撃のリスクすら危惧される北朝鮮問題、国運の衰微に追い打ちをかけるように迫りつつある巨大自然災害――どれ一つとってみても我が国は今、二十世紀にはほとんど想像もできなかった深刻な数々の危機に直面している。しかもこれらの数々の危機の存在を認識している国民が、政治家、官僚も含めてほとんどいないという現状が、その深刻さの度合いをさらに加速させている。
 かくして我々は今、無為無策のままに国家としての息の根が止められかねない程の大きな災禍に幾度となく苛まれるであろう状況に至っている。

 ――本誌「表現者クライテリオン」はまさに、こうした数々の危機と対峙せんがために創刊されるものである

 もちろん本誌創刊は、一九九四年に「発言者」を創刊し、その後継誌「表現者」で健筆を揮ってこられた(そして平成三十年一月二一日に永眠された)故西部邁先生が言論活動から勇退を宣言されたことを受けてのものである。しかし、西部邁先生より生前ご指名いただいた当方が編集長を務める形で、各編集委員(文芸評論家の浜崎洋介氏、社会科学者の柴山桂太氏、長年西部塾で研鑽を積み、2018年度より京都大学助教授に着任した川端祐一郎氏)と前編集長の富岡幸一郎顧問らと編集方針を議論する中で、「危機と対峙する保守思想」という基本方針を確定するにさして時間を要しなかった。そもそも「保守思想」において保守すべきものを奪い去る危機との対峙は逃れえぬ宿命だからだ。
 かくして時代に導かれるように、半ば必然的に今日的なあらゆる危機(cri-sis)を乗り越えるためのクライテリオン(cri-terion’規準)を探し求める実践的なる批判(cri-tique)を全面展開するという大方針が、新しい編集体制下で決定せられたのであった。
 この大方針が定まれば、後の具体的内容は半ば必然的に決定されていった。
 第一にこの大方針を表すものとして、雑誌名が「表現者クライテリオン」とあいなった。
 第二に、危機を乗り越えるにはさらなる総合性、多様性が必須だ。かくして本誌では個々の特集記事の分量を倍増し、各批評の深化、総合化を図ると同時に、毎号の特集テーマにふさわしい執筆者にもあわせて寄稿依頼をすることとなった。加えて様々な実践的なテーマについて批評してこられた執筆陣(野中郁次郎氏、大石和久氏、松原隆一郎氏、竹村公太郎氏、松林薫氏、磨井慎吾氏)を新たに迎え、様々な連載を始動していただくことになった。さらには本誌の評論活動それ自体の立体化、多面化(およびその「相対化」を通した動態化)を企図し、定期執筆者各位による実に多様(かつ柔軟)な新連載がそれぞれ始動することとなった。
 第三に、批評活動の社会運動拡大を企図した、本誌を中心としたメディアミックス戦略を展開することとなった。これまでのTOKYOMXでの放映に加え、KBS京都にて『~週刊ラジオ「表現者」~藤井聡あるがまま日本・京都』(毎週月曜夜九時半~)を新番組としてスタートさせた。あわせて「表現者」関連の各種情報を掲載するホームページを立ち上げる。さらには、一人でも多くの国民に評論活動を届けることを企図して表現者執筆陣が中心となって速報的に各種批判を配信していくメールマガジンを始動する。同時に、北海道から沖縄まで、各地の問題や危機と対峙するためのシンポジウム開催を検討している。
 最後に次世代も見据えた本誌の批評活動の広がりを模索すべく、読者からの投稿・寄稿を積極的に公募、掲載することとなった。同時に、新しい書き手の発掘を企図した「表現者賞」を再始動することとなった。
 本誌によるこうした社会的、実践的かつ思想的な批評活動が、今日の様々な危機の超克にどれだけ貢献し得るのかはもちろん分からない。しかし、故西部邁先生が「逆境であればこそ希望の炎が立ち上がる」と宣言しつつ展開した「発言者/表現者」の、まさにその「希望の光」が本誌、そして読者各位の内に引き継がれていることは確かだ。
 であるなら我々はその炎をいかにして重ね合わせ、灯し続けることができるかを総合的、多様性、運動性の全てを見据えながら、時にこれまでの形式・内容を打ち捨ててでも個別具体的かつ戦略的に考え続けねばなるまい。そして、時宜を得た暁には一気呵成に大きな火炎を巻き起こし、それぞれの危機を乗り越える生の実践を全力で模索せねばなるまい。繰り返すがもちろんその帰結がいかなるものとなるかは分からない。しかし、だからこそ、その思想と実践を駆動する「希望の炎はより大きく立ち上がる」のである。
 ――こうした本誌の思想的実践運動、実践的思想運動に共感、ご賛同いただける方がおられるのなら、ぜひともご支援頂きたい。本誌のこの試みが僅かなりとも奏功することを心から祈念し、本誌創刊にあたり編集長として平にお願い申し上げる次第である。

表現者クライテリオン編集長 藤井聡

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