私のように、定年退職後、田舎で家庭菜園を含め農業に携わる人が少なからずいるだろう。
まわりでも、キュウリ・ナス・トマト・人参・玉ねぎ・ジャガイモ・白菜他、少量多品種を楽しみながら栽培している方が何人もいる。
私もいろいろな野菜を栽培し、取れ過ぎた時はご近所や介護施設、子ども食堂等に配る。土づくりは、町内に唯一ある牧場の牛糞堆肥を使用し、有機野菜づくりを試みている。
そして、私には特に思いをめぐらせながら作って食べているこだわりの野菜がある。その名は・・・「オクラ」。
意外でしょうか。私にとって、この数年、夏季のオクラを作り食べる生活は、思索をより促しているように思う。それには理由がある。
私は庭の畑の他、隣りの放棄地を借り、整地して畑にしている。しかし、1メートルほど低く、雨が集中して降ると“プール畑”に変身。
あまりの事態に自吸式エンジンポンプを購入し、妻とポンプ隊1号2号を結成(1号は指揮命令者の妻、2号は実行者の私)。毎年出動し、「まさかやー」である。
そんな劣悪なプール畑に浸りながら、生き延びている強健な作物が「オクラ」なのだ。高温を好み乾燥につよく、多湿に耐える野菜として、私にとっては思索を巡らす特別な存在である。
アフリカ大陸原産でエジプトでは2000年以上前から栽培されており、日本に入ってきたのは幕末~明治初期といわれる。普及した背景には、大東亜戦争で東南アジアを転戦した日本人兵士たちが飢餓にあえぐ自給生活の中で、生育の旺盛なオクラにしばしば救われ、帰国後オクラを栽培し定着したそうだ。
朝方に咲く薄黄色の花は、可憐で清楚。この花が五角形の細長い実に変身し、食用になる。この食べごろの実を見つけるのが重要なポイント。私は朝夕収穫するが、小さいと思っているとあっという間に成長し、見逃すと巨大化していることが幾度とある。茎と葉と同じ緑色なので、見つけにくいのだ。
何回か見回り確かめないとどうしても見落とす。大きくなると固くなり木質化して食べれない。このあいだは、20センチほどに成長した剣の様な姿を見つけ、神々しく思い神棚にお供えした。オクラを毎日いただける自然の恩恵に感謝している。
私の好きな食べ方は、みそ汁の実や茹でて和え物にするといったおとなしいものではない。オクラと納豆と山芋とモロヘイヤ(時にモズクも)を一緒にしたネバネバ大集合物をかき回し、豊富なネバネバを創出する。
含有するペクチンやムチン、ビタミンCやβカロテン等により整腸作用・免疫力の強化・抗酸化作用他があり、苦手な方には失礼ながら、夏バテや疲労回復にも超効果的で好んで食べる(オクラ水も)。
この「粘る」という事象について、思うことがある。かつて、「粘る」は「踏ん張る」「我慢する」「辛抱する」というポジティブな価値を表した。
松下幸之助の「粘り強さは必ず不可能に勝つ」や、稲盛和夫の「成功する人とそうでない人の差は紙一重、違いは粘り強さと忍耐力」などのことばである。
しかし、現在はコストパフォーマンス社会であり、「我慢や忍耐」は「コスパが悪い」と遠ざけられていないか。若者は就職してもすぐやめてしまう。もっと手軽に高い給料を得るため躊躇せず転職する。
我慢して勤めていれば気づくことがあり、辛いからこそ学べることを見失っている社会は、行き詰まっていると私には感じられる。
教育界でも、不登校児童に対し、「我慢しなくていいんだよ」と即答する。しかし、イジメや不登校の主因は、相手との関係であり「一人で悩んでいること」ではないか。昔だってイジメはたくさんあった。肝心なことは、「相談する人が身近にいないこと」なのだ。
親も先生も忙しく疲れていて、子供の相談相手になれず、またタブレット学習やゲーム等で子供が個々ですごす時間が増え、小さいときに他者とコミュニケーション能力を育む機会が欠如しているのではと危惧する。
時には、オクラの収穫を子供に体験させ、「注意深く見逃さない」ことを学ぶことは粘りの行動につながると思う。
また、家族でオクラを食しながら「ネバネバ」について語り合ってはどうか。「オクラ」は健康にとっても、生き方にとっても、重要なことを教えてくれる「教師」なのだと、私は勝手に思っている。
今日も朝からオクラを食べ、快調(腸)にすごそう!
林 文寿(岐阜支部・NPO法人職員)
2025.04.09NEW
清水 一雄(東京支部)
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長谷川 正之(信州支部・経営コンサルタント)
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富加見絹子(45歳、ギリシア、翻訳家)
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前田健太郎(50歳・東京都)
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小野耕質()
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髙江啓祐(中学校教諭・38歳・岐阜県)
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火野佑亮(奈良県、26歳、フリーター)
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織部好み(東京支部)
2025.01.21
北澤孝典(農家・信州支部)
2025.01.21