【浜崎洋介】表現者塾・信州支部学習会に向けて——「自然の教育」に因んで

浜崎洋介

浜崎洋介 (文芸批評家)

表現者塾・信州支部学習会に向けて——「自然の教育」に因んで

 こんにちは、文芸批評家の浜崎洋介です。

 今日は、表現者塾・信州支部学習会について告知するためにメールを書いています。

 ちなみに、今回の信州学習会の主題は「教育」。

 まさに、「塾」の根幹であり、また、私たち『表現者クライテリオン』の言論活動(一種の教育・啓蒙活動)の根幹にもある概念だと言っていいでしょう。にもかかわらず、これまで、なかなか表立って語られてこなかった主題でもあります。

 ただ、改めて考えてみると、私の人生のほとんどは「教育」と共にあったのでした。

 私自身が長く「教育」を受けてきたこと——私が大学院の博士課程を卒業できたのは、ようやく齢三十を過ぎてからです——、大学生の頃から、長く塾の講師として小学生から時には高校生までを教えてきたこと(およそ十四年間)、また、現在まで大学の教師として学生と付き合ってきたこと(およそ十三年間)、そして、十年前からは子育てという場所で、新たな「教育」にも携わってきたこと、それらのことを考え合わせると、私の人生は、延々「教育の現場」と共にあり続けたと言っても過言ではありません。

 ところで、そんな私が、つくづく「教育」の本質を言い当てていると思ったのは、次のような福田恆存の言葉でした。少し長くなってしまいますが、引用しておきましょう。

 

「人柄といふものは、その人の人間附合ひの型を決定する、いや、その人特有の附合ひ方がその人の人柄のすべてであると言へよう。その場合に、人と人との附合ひの根本をなし、それを教育し維持してゆくものこそ、自然であり、自然との附合ひなのである。〔…〕

  自然は私達人間の方で附合はうとし、その道を考へなければ、決して自然の方からこちらの都合を考へてくれようとはしないからである。自然はそのやうにして私達を教育する。それが自然の教育法である。そしてまたそれが最高の教育技術である。

  自然は私達に忍耐を教へ、勇気を教へ、深切を教へる。思ひやりや愛情を教へる。また時には冷酷になれと教へ、厳しくなれと教へる。草木や山や河や、雪や嵐や、その他、自然現象のすべてが季節の変転を通じて、私達に絶えず道徳教育を施してゐるのだ。」「自然の教育」昭和三十六年十月、『保守とは何か』文春学藝ライブラリー所収

 

しかし、だとすれば、私たちが、子供や学生として、あるいは親や教師として心がけるべきなのは、まずは自分自身の内なる「自然」を自覚することであり——あるいは、その自覚のための手助けであり、その「自然」に沿って他者との関係を紡ぐことであり、さらには、時にそこに立ち上がってくる「調和」が、目の前の他者に対する、いかなる踏み込みや距離感で成り立っているのかを考えることだと言ってもいいでしょう。そもそも研究や学問も、そんな「自然」との「附合ひ方」を探求するところから生まれたものでした。

ただ、その一方で、近代文明社会は、そんな「自然」を尊重するのではなく、扱いにくい「自然」(計算不可能なノイズ)を排除し、「ああすれば、こうなる」というシステムを覚え込むことを、あるいは、そんなシステムに人を適応させることを「教育」と称してきたのでした。そして、その結果として、戦後日本人は、人との「自然」な附合い方を学び覚える時間を失い、人格や倫理を涵養する機会を失い、関心のない領域には目もくれない自己満足と自己閉塞に満ちた〈専門人=大衆人〉を多く生み出してきたのでした。

しかし、それなら、ここで改めて「教育とは何か」と問い返しておくことは、意味のないことではありません。人が一つの有機体として自立的に活動しはじめるには何が必要なのか。そして、その間、そこに水と栄養を与え続ける教育者には、一体、どのような心構えが必要なのか。それらの問いは、私たちがどんなに文明化されても、なおそこに残る人と人との附合いの形を、そして、そこで生きられる「自然」のあり方を教えてくれるはずです。

この度の表現者塾・信州支部学習会は、私自身の経験をもとにしつつ、そんな「教育の原点」を議論する時間にできればと思っています。

では、また信州でお会いしましょう!

 

浜崎洋介

 

===信州支部学習会の情報は以下の通り===

1、【信州支部7月定例会(学習会)】

来月の「文芸批評家 浜崎洋介先生」による特別講義の詳細が決まりました。以下の情報をご確認いただき、下記フォームから事前の申し込みをお願いいたします。

〇日時 7月27日(土)
15:00~18:30(90分2コマ、前半「講義」後半「テキスト読解」、途中、休憩と質疑応答あり)
〇定員 30名
〇場所 松本市駅前会館 中会議室(第1)
〒390-0815 長野県松本市深志2丁目3番21号
電話 0263-33-2966
https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/3/5648.html
〇内容 「文芸批評家 浜崎洋介先生」特別講義
テーマ「教育論」
〇講義参加費 5000円(当日受付払い)
〇懇親会 19:00~22:00
松本の郷土料理と3時間飲み放題付(8000円、受付払い)
※懇親会参加希望の場合、申込みフォームにてチェックをお願いします。
〇参加申込み
下記のフォームからお申込み下さい。
https://form.os7.biz/f/2132c689/

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