2024.12.20
こんにちは、京都大学の藤井聡です。
明日の,インターネット読書ゼミ『死ぬまでに読みたい世界の名著』で,ウィリアムジェームズの「心理学」という書籍を取り上げます.
https://in.24criterion.jp/24bc_teika
このネットゼミは,『表現者クライテリオン』プレゼンツということで,藤井,浜崎,柴山,川端という編集委員四人が毎月持ち回りで一冊ずつ,「世界の名著」を紹介する,というもの.
もちろん,各編集委員が「この本には凄まじい影響を受けた」「この本があるから,今の自分の人生がある」「これは是非とも一人でも多くの心ある皆さんに読んで貰いたい」と感じた書籍を紹介するもの.
四人でもちまわり,ですので,一年で3冊ずつ紹介しているのですが,これまで当方,社会科学や思想,哲学の書籍が多く,「自然科学」の話しは取り上げてこなかったのですが,思想や哲学を考える上で,最も重大な意義を持つ自然科学として「心理学」があるのですが,今回はその名著中の名著であるウィリアムジェームズの「心理学」を取り上げたという次第です.
当方,30才の時にスウェーデンイエテボリ大学の心理学科に留学して以来,職業として心理学を学び,研究を進めてきましたが(今でもなお,当方の研究,思想,言論には,「心理学」の要素がふんだんにちりばめられています),その中でもこのジェームズの心理学は別格に重要な書籍でした.
この著者,および,書籍の概要は,以下の通り.
『ウィリアム・ジェームズ』(1842~1910)
・アメリカ合衆国のプラグマティスト
・哲学者、心理学者に分類されることが多い
・哲学者としては…パースやデューイと並ぶプラグマティストの代表
・心理学者としては…アメリカ最初の心理学者,意識の流れの理論を提唱
・ウィリアムジェームズの法則「それを信じたい人には信じるに足る材料を与えてくれるけれど、疑う人にまで信じるに足る証拠はない。 超常現象の解明というのは本質的にそういう限界を持っている」
『心理学』
・心理学の最重要古典.プラグマティズムの思想によって(形而上学とも関わりがあることを留保しつつ)心理学が科学的に発展する端緒を与えた.
・教科書として執筆した「心理学原理」(1889,ジェームズ47才:12年を費やして書いた1000ページを超える大著)を,圧縮した「心理学要論」(1892).これが1927年の岩波書店の心理学名著叢書の第一巻として出版された.
当方は,アメリカの哲学流派である「プラグマティズム」にも甚大な影響を受けていますが,ジェームズは,心理学の始祖であると同時に,このプラグマティズムの(パースと並ぶ)始祖であり,当方にとって必然的に重要な学者であったわけです.
詳細は,明日の読書ゼミで解説いたしますが…その中から一つ,一般の方にももの凄く「有用性」の高い心理学論の一つである「記憶」について,簡単に紹介しましょう.
当方,ゼミの時にはいつもレジメを用意するのですが,本日は丸一日,そのレジメ作りをしておりました.で,その中の「記憶」の節を下記にご紹介します.
―――――――――――――――――――
【記憶】
-記憶とは「これは(暖かさと親しさのある)私の経験だ」という意識と共に想起される認識
-「想起」は「連合」(脳内の特定部位と特定部位の連結)における信号の到達である
(古い友人に会った時,名前を想起するのは…その「顔」に「連合」している「名前」を検索する作業.検出されたときが「思い出す」時)
-「記憶の保持」(しっかり記憶している)は,日常で使う特定部位と「連合」している状態.
(「記憶の優秀さ」は日常で使う特定部位の多さとそれとの連合数(結合回路数)の多さ)
-連合数(結合回路数)は「考える」ことで増える
-だから,自分の経験についてよく考え,多様な部位と多様な部位を有機的に結合させた人(認知的「体系」を作り上げた人!)こそ,良い記憶を持っている.そうなれば,一部を忘れてもスグに別の部位から「連絡」され,忘れ得ない.だから忘れることが不可能になる!
-だから,「詰め込み記憶」(何も考えず,連結をしない,記憶)は最悪である.
-記憶の改善は,「認知的体系の綿密化」以外にあり得ない!
-記憶の改善にとって「不要なものの忘却」は重要.忘却がなければ,特定のものを想起するには,それを認識したために必要だった時間と同じだけの時間が必要となる.
―――――――――――――――――――
…お分かり頂けましたでしょうか…?
唐突な専門用語が多数並んでいるので,少々分かりづらいかも知れませんが,要するに,
「何でもかんでも,凄い発想でいろんな発言を言う頭がいい人,っていうのは兎に角,普段からいつもいろんなことを「考えている」人だ.
いろんな事を「考えている」からこそ,いろんなことといろんなことが,どういう風に「繋がっているのか」を「発見」し,いろんななことといろんなことを「繋げて」いる.
そして,いろんなこと同士が,まるで「芝生の地下茎」の要に複雑に繋がり合う状況になっている.
そして,その地下茎の複雑な根の絡み合いを,毎日いろんな事を考えることを通して,日々,複雑なものにしていっている(これは現代認知心理学では,Cognitive Tree認識樹といいます).
だから,何か一つの事を聞かれたら,それについて多種多様な解釈が可能となる.
だから,何か一つの問題があったら,それを解決するための解決策を多種多様に考え,最もベストな方法を見いだすことができる
だから,何か一つのことを人に伝えようとするときに,その対象の人の状況や種類屋レベルにあわせて,もっとも適切な説明の仕方を想起し,実践することが可能となる.
だから,何か忘れても,その忘れたことと繋がっている物事を覚えている限りスグに思い起こすことができる.だから,一旦覚えたことを忘れることができない…というか,忘れることが不可能となる.
だから,頭がよくなりたいのなら,普段から,なにかあるごとにあれこれあれこれ考えて,あれとこれとはこういう関係があるのか,これとそれともそういう関係があるのか!と,自信の認知の地下茎(認識樹,あるいは,認知連合システム)を成長させていけばよいのである」
…いかがでしょう?こういう風に解説を聞くと,ジェームズが何を言ってるか,よりくっきりと分かってくるのではないでしょうか…?
…というような事を明日,ゼミで徹底解説したいと思います.
ご関心の方は是非一度,ゼミにご参加なさってみてくださいw
(ご参加はコチラから→https://in.24criterion.jp/24bc_teika)
過去のゼミでも,実に色んな素晴らしい書籍を当方だけでなく,浜崎さん,川端さん,柴山さんが解説されています.
皆さんの人生も,たった数冊,場合によってはたった一冊の書籍の解説を耳にするだけで,決定的な影響を受けてかわっていくかも…知れません…というか,そういう本ばかりを,我々四人が選定して,解説しております.
ご関心の方は是非,読書ゼミ,ご購読ください!
(ご参加はコチラから→https://in.24criterion.jp/24bc_teika)
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