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『表現者クライテリオン2025年3月号 [特集]トランプは”危機”か”好機”か?』から特集論考をお送りします。
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化石燃料の利用を敵視する脱炭素は自滅的エネルギー政策であり、
産業を空洞化し、経済を崩壊に導く。
米国では「トリプル・レッド」が実現した。バイデンが進めてきたグリーン・ディール(米国では脱炭素のことをこう呼ぶ)は、悉く廃されることになる。
トランプはエネルギー政策について、はっきり公約していた。選挙戦中もそれを繰り返し、一切ブレることはなかった。それは「エネルギー・ドミナンス(優勢)の確立」である。
すなわち、米国が有する石油、天然ガス、石炭などの採掘を進め、豊富で安価なエネルギー供給を実現する。それにより製造業を発展させ、経済成長を実現して、敵(名指しはしていないが、中国など)を圧倒する、というものだ。これは、かつて日本が敗れた、太平洋戦争の時のアメリカの物量作戦の発想そのままだ。
「エネルギー・ドミナンス」はトランプ氏の独断などではない。共和党の総意である。「愚かなグリーン・ディールを止めるべきだ」とは、二〇二二年二月にウクライナでの戦争が始まった直後の、マルコ・ルビオ上院議員による米国フォックス・ニュースでの発言である。ルビオは二〇二四年十一月にはトランプ大統領から次期国務長官に指名された。
ルビオは、環境規制の強化によって米国の石油・ガス生産を妨害してきたバイデン政権を鋭く批判した。米国が自滅的な政策を採った一方で、ロシアは石油・ガスの輸出で莫大な利益を手に入れ、軍事力も強化した。また輸出を通じて欧州やグローバルサウスに対する政治的な影響力も高めてきた。もしも米国が大量に生産し、世界中に供給することで石油・ガス価格を下げてしまったならば、石油・ガスの輸出以外に外貨獲得源が乏しいロシア経済に対しては大打撃のはずだった。だがバイデン政権はこの真逆をやっていた。
トランプ大統領は選挙運動中にも「ドリル・ベイビー・ドリル」(掘って、掘って、掘りまくれ)と繰り返し発言してきた。トランプ政権は、気候危機説に惑わされることなく、石油・ガス・石炭を生産し、利用する姿勢が鮮明だ。
これに対して、日本はどうか。石破政権は、菅・岸田政権の路線を継承し、二〇二四年十月三十一日に開催されたGX実行会議で、年内に第七次エネルギー基本計画を策定するよう指示した。
三年前に第六次エネルギー基本計画が策定されたときは、二〇三〇年までに二〇一三年比で四六%削減というCO2目標が書きこまれた。この数字を当時の小泉環境大臣は「おぼろげに浮かんだ」と説明し失笑を買ったが、実態は二〇五〇年にCO2をゼロとして二〇一三年から直線を引いて二〇三〇年の数字を読んだだけだ。
同じ論法で、日本政府は二〇三五年は六〇%削減、二〇四〇年は七三%削減という数字を二〇二四年十一月二十五日の有識者会議で提示した。これを第七次エネルギー基本計画(案)に書きこんだ。そしてこの数値目標を二五年二月十日までにはパリ協定に提出する構えだ。
すでに、再エネ賦課金などにより、光熱費は高騰している。政府は、日本のCO2が順調に減っていると自慢するが、その最大の理由は産業空洞化である。一体何を喜んでいるのか。このまま突き進めば製造業は消滅し日本経済は崩壊する。
米国のエネルギーは今後ますます安くなるのに、日本のエネルギーはますます高くなる。すると企業は、米国に工場を建てる一方で、日本からは逃げ出すか、追い出されるか、あるいは潰れるだろう。
パリ協定の下、西側の先進諸国は二〇五〇年CO2ゼロという出来るはずのない約束をしてしまった。これを続けるとどの国も経済の崩壊は必定だ。トランプ氏は、大統領就任の初日にパリ気候協定から離脱することは確実と見られている。
日本政府も愚かなCO2目標の設定を止め、またパリ協定への目標の提出は延期すべきだ。そのまま提出しなければ、事実上のパリ協定からの離脱となる。米国に続いて日本も離脱すれば、パリ協定は事実上消滅する。これには前例もある。二〇一〇年に日本が数値目標を提出しなかったことで、京都議定書は空文化した。
その後は、安全保障と経済を重視する本来のエネルギー政策に戻ればよい。即ち化石燃料の安定・安価な供給を実現し、コストのかかる再エネ推進を止める。
米国もパリ協定離脱後には新しい枠組みを求めるだろう。それはエネルギー・ドミナンスの国際版であり、友好国が協調してエネルギー供給を強靭化するものになる。日本は勿論参加すればよい。加えて、脱炭素お説教に飽き、経済成長のために化石燃料の利用を渇望するグローバルサウスの諸国も喜んで参加するだろう。
同枠組みの一部として、日本は米国から石油、ガス、石炭を長期契約で買うと良い。長期契約を結んでしまえば、将来、米国で民主党政権が誕生しても供給が途絶えることはない。何よりこれは、、、続きは本誌にて…
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