クライテリオン叢書 第5弾!『敗戦とトラウマ 次こそ「正しく」戦えるか』【8月1日Amazon先行発売】

浜崎洋介

浜崎洋介 (文芸批評家)

皆さん、こんにちは。

表現者クライテリオン事務局です。

8月7日、クライテリオン叢書から第5弾、『敗戦とトラウマ 次こそ「正しく」戦えるか』が全国の書店で発売となります!(Amazonでは先行して8月1日に発売となります。)

敗戦とトラウマ
次こそ「正しく」戦えるか

浜崎洋介 編著

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今回は、戦争前後で生じた日本精神の断絶を追体験し、断絶を直視することによる接続を試みた「戦争文学座談会」の書籍です。

 

わたしたちはなぜ「あの戦争」を上手く語れないのか?
 

あの戦争について、歴史的な経緯は分かる。悲惨な出来事が起こったことも分かる。不条理さも残酷さも分かる。

なのになぜ、わたしたちは、いまだあの戦争のことを語りあぐねるのでしょうか。
かつて私たちが確かに感じていたもの、しかし無かったことにしてしまったもの、そしていまや、全く失くしてしまったもの、私たちは自分たちの精神の中に無いものであの戦争を見なければならない困難に晒されているのではないでしょうか。

戦後八〇年。日本人はいまだあの「敗戦とトラウマ」に向き合い切れていません。

 

本書は、単なる戦争文学の読書案内ではありません。『表現者クライテリオン』に集う多様な専門を持つ言論人が、

“戦前から戦後へ”という精神的断絶を、文学作品を通じて追体験し、今の日本人が取り戻すべき精神とは何かを徹底的に考えた記録です。

 明確に意識に上ることはありませんが、確かに自身の潜在意識の中に、あの戦いの記憶が厳然と存在しているのだなぁということも改めて確認出来たように思います。

 そんな記憶が僕個人の中にあるのは、精神というものが元来共同体的なるものだとするなら当たり前だということができますし、個人的精神を前提としても、父や母、祖母が口にしていたその記憶の片鱗を幾度となく聞き、この戦後日本の中にも残されている様々な記憶の片鱗に触れるたびに、徐々にその記憶が構成されていったのだと考えることもできます。これらの小説は、そんな戦後日本の中に残されている記憶の残滓の中でもとりわけ強烈なものであり、あちこちの家のそして書店や図書室の書棚の中にひっそりと残されているものなのだと思います。

 だから今10代や20代の日本人達の精神の中にもこの座談会を通して、そして実際にこれらの小説に触れることを通して、十分に改めて構成され得る記憶なのだと思います。 (第一章 89-90頁)

全ての座談会を終えた後、藤井先生はこう総括しました。

失ったように思える記憶も精神もその残滓がひっそりと残っていて、もう一度構成することができる。
この希望を戦後八〇年で確認できたことは、大きな成果です。

 

座談会のテーマ
 

本書の全四章のテーマを簡単にご紹介します。

第一章|断絶編 孤児になった感情

(『大義の末』城山三郎/『英霊の聲』三島由紀夫)

 総論的に本書のテーマである「戦前戦後の日本精神の断絶」を議論する。対米戦争に突入する時抱いた「大義」はどのようにして日本人から失われていったのか。生きていく中で当然のように摩耗していく戦前の精神と、死んだからこそ輝かしく残された英霊たちの精神、その幽かな結節点としての三島。

 

第二章|激戦編 語りえぬ戦いの記憶

(『肉弾』櫻井忠温/『月白の道』丸山豊)

 小幡敏先生主催の座談会。日本人が戦わなくなって80年、日本人にとって「戦う」ということのリアリティーは遠ざかるばかりである。戦争をするとはどういう体験なのか。激戦を描いた文学から読み解く。大義と一体化できた戦争とできなかった戦争、苛烈な体験の中におけるぎりぎりの倫理的な決断。

 

第三章|沖縄編 「宿命の島」で考える文学

(『カクテル・パーティー』大城立裕/『平和通りと名付けられた街を歩いて』目取真俊)

 20191月号掲載の沖縄で行った座談会を収録。日本人が断絶を決め込み、無きことにした戦前と戦後の葛藤は、今でも沖縄という現場に身体感覚として残されている。トラウマとしての沖縄。戦後日本人の覗き込みたくない深淵としての沖縄。

 

第四章|特攻編 「特攻文学をめぐって」

(『戦艦大和ノ最期』吉田満/『出発は遂に訪れず』島尾敏雄)

 2019年9月号掲載の知覧で行った座談会を収録。敗戦と決死を覚悟しながら散っていった若者たちの精神。極限の葛藤とその超克、そこからの解放と堕落。戦前的なものと戦後的なものの落差の究極の経験。

 

また、「まえがき」を文芸批評家の浜崎洋介先生、「解説」を文芸評論家の富岡幸一郎先生にお書きいただきました。

 

次こそ「正しく」戦うために
 

戦争が起きなければそれに越したことはないでしょう。誰も自分が戦う悲惨な戦争を望みません。

しかし、それは不条理に、不可避的にやってくるかもしれません。
戦争は個人の人生を砂つぶのように攫っていきます。
であればこそ、その時に「正しく」ありたい。
その犠牲が「罪」となり、蓋をしたい「黒歴史」になどしないで済むようにするために、過去のトラウマに日本人として向き合う、そのための一助として、本書をお読みいただければ幸いです。

 

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敗戦とトラウマ 次こそ「正しく」戦えるか

● 全国書店:2025年8月7日発売

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