【藤井聡】石破政権側の陰湿な「圧力」に対抗すべく、国民側は「総裁選前倒しに賛成しなかったリスト」を公開し「石破政権の延命に加担した人々の晒し上げ」を宣言すべし。

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

こんにちは。京都大学の藤井聡です。

 

今、自民党では「総裁選の前倒し」についての、自民党全国会議員と各都道府県連代表者を対象とした意向調査に向けて、様々な駆け引きが展開されています。

 

全体的な構図は、「石破政権続投」勢力と「総裁選実施」勢力の対立となっているわけですが、今、総裁選を実施すべきだと考えてられている論拠は、おおよそ次の四つに集約されます。

 

「総裁選前倒し」が必要である4つの理由


【1.衆参選「大敗責任」論】衆参両国政選挙で大敗を喫し、過半数割れを導いた最大の責任者は石破茂総裁であり、その大敗の責任をとって石破総理は辞職すべきである(一部メディアの世論調査で石破支持の結果が出ているが、真の民意は全国民対象に行われた国政選挙結果である)。

【2.政権担当「能力不足」論】衆参両国政選挙の大敗は政権担当能力不足の証左である。さらに、衆参両院で少数与党となったが故に適正な国会運営が不能となっており、政権担当能力がさらに失われる帰結となっている。

【3.自民党「分断回避」論】党内に石破総理交代論が大きく存在している現状において、石破政権が持続すれば自民党がさらに分断される事になり、自民党衰退を直接導く事になる。

【4.自民党「衰退回避」論】衆参両国政選挙で大敗を喫する程に国民の支持を失っている石破総裁が続投し続けると、自民党が国民の支持をさらに失い、自民党衰退がさらに加速する事になる。


 

つまり、民主主義を前提とするなら選挙で大敗をした総理は辞任することで責任をとるのが当前であるし、選挙大敗を通して政権担当能力が大きく失われている以上、石破政権が続けば日本の国益が内政、外交ともに激しく毀損していくことは避けがたい、さらには、自民党の分断や衰退を回避するためには石破総裁の交代は必須である、という理由から自由民主党において総裁選前倒しが求められているのです。

 

一方で、石破「石破政権続投」勢力の論拠は、石破氏本人が「政治空白の回避」や「政権の責任遂行」、「重要課題への対応」を挙げていますが、これらは全て理由としては極めて脆弱です。

 

これらが政権続投の根拠になるなら、一旦誰かが総理になれば、政権交代は永遠にできない、という恐ろしく理不尽な事になります。如何なる状況でも、政治空白は回避されねばなりませんし政権責任は遂行せねばなりませんし重要課題は存在するからです。トランプとの関税交渉ですら、これまでの交渉経緯を踏まえれば国益毀損を最小化するためにむしろ、総裁交代の重大な論拠となり得るものです。

 

そう考えると、上記に挙げた四つの理由からして総裁選前倒しは不可避と考えざるを得ません。仮に自民党だけに関わる党の「衰退回避」論や「分断回避」論をさておくとしても、国民の民意を反映すべしという民主主義の原理原則が軽視され無視される事を避けるためにも、政権担当能力不足の政権の延命を回避するためにも、石破総理の辞任は日本の国益にとって必須なのです。

 

しかし、それにも関わらず石破政権は恐るべき事に民主主義の原則を踏みにじり、国益の毀損を度外視してまでも政権延命のための様々な「工作」をしかけてきています。

 

そんな中でも特にあからさまな工作が、自民党の各議員および各県連に対する、石破政権の権限を駆使した「圧力」です。

 

石破政権によって設置された自民党総裁選選挙管理委員会(以下、選管)は、総裁選前倒し(以下、「前倒し」)に賛成する国会議員は、所定の文書に署名捺印の上、9月8日の所定の時間帯(午前10時から午後3時までの5時間)に選管に、国会議員「本人」が直接提出することを求めています。それと同時に、賛成者全員を全て「公表する」ことを決定しています。

 

国会議員の中には、判断を決めかねている者が今時点でも多数いるわけですが、彼らにとってみれば、これは相当に高いハードルとなります。

 

それはいわば氏名の「晒し上げ」という「踏み絵」を踏ませることを意味するからです。

 

したがってそれは必然的に、もしも「前倒し」に賛成すれば、「石破政権が延命した場合には、自分自身が大臣や副大臣等になる可能性が引き下がり、最悪、公認取消など不利益を被るリスクが確実に高まる」という恐れを国会議員らに抱かせ、萎縮させ「前倒し」賛成する書面提出を「躊躇」させる圧力を強烈にかける事になります。

 

もちろん名前が公表されなくても、「そのリストに名がない議員/都道府県連」は、自動的に前倒しに反対したという事にはなりはします。

 

しかし、必ずしも全国民が現役国会議員の名前を全員知っているわけではなく、名前さえ載っていなければ「前倒しに反対した」という事実が俄に明らかになる(=バレる)とは限らないわけです。ところが、前倒しに賛成すれば氏名が公表される以上、「前倒しに賛成した」という事実が即座にバレる事になります。結果、自身の判断をできるだけバレないようにするために書面を提出しなくなる(=石破政権延命に賛成する)議員が拡大することが危惧されるのです。

 

誠に情け無い話しですが、これでは公正中立な意向調査とは言えません。

 

そもそも選挙においては、有権者に不当な圧力がかからないように無記名にすることが基本です。

 

もちろん今回の意向調査は一般的な選挙とは異なりますが、それが国政に重大な影響を及ぼすものである以上、その重みは一般的選挙に優とも劣らぬ意味を持つ事実上の「選挙」です。石破政権側は、「責任ある判断が求められるから、記名式が適当だ」と説明していますが、かの総裁選ですら無記名が基本となっているのですからそれは単なる詭弁に過ぎません。

 

この石破政権の延命を促す「不当な圧力」を国民側の方で軽減するには一体、どうすればいいのかと言えば―――石破政権側が「前倒し」賛成者のリストを公表した瞬間に、国民側が『総裁選前倒し「反対者」リスト』を作成し、公表する(=晒し上げる)ことであると考えます。

 

『総裁選前倒し「反対者」リスト』は、石破政権が賛成者リストを公表した瞬間に誰でも容易く作成することが可能です。全国会議員のリストと都道府県リストさえ手元に用意しておけば賛成者を一つづつ消していけば即座に作成できます。

 

ついてはそれをメディア各社、SNS上のインフルエンサー、そして一般国民があらゆるテレビ、新聞、雑誌、そしてSNS、Youtube等を通して公開することで、国民側は瞬時に石破政権の延命に加担した人々を「漏れなく」把握することができるようになるのです。

 

もちろん、石破政権が延命すれば、今回「前倒し」に賛成しなかった加担した人々は、石破政権側からの不利益は回避できるでしょう。しかし、石破政権がこれから安定的に国民から支持され続けるということは到底考えられません。したがって、石破政権の延命に手を貸すことで得られるメリットは「一瞬」のものでしかないのです。

 

石破政権が続く限り、石破氏による日米交渉の現状や財務省との関係から考えて、経済や日米交渉等の様々な問題が噴出することは必至なのです。そして何より、仮に今瞬間的な若干の政権支持率上昇があったとしても、政権支持率の「長期的トレンド」について言えばあいかわらず「低水準」であり「低迷傾向」にあることは明らかだからです。

 

だから今回前倒しに賛成しなかった人々は漏れなく、石破政権がもたらす様々な問題が生ずる度に「こんな被害を導いた張本人達は、石破政権の延命に加担したコイツらだ!」と国民側から批判されるリスクを背負い込むこととなるのです。

 

そして、最終的に必ず訪れる次の選挙で、大きな不利益を被ることは必至なのです。

 

一方で、今回「前倒し」に賛成しておけば、国民から批判されるリスクは大きく回避されるのです。むしろ、国益を毀損する石破政権の交代に努力した政治家(都道府県連)として、国民支持を拡大することすら期待されるのです。

 

つまり、「公表」しておけば、前倒しに賛成しなかった人々は長期的には不利益をもたらす一方、「前倒し」に賛成した人々に長期的に利益をもたらす構造ができあがるのです。

 

しかも、ここで重要なのは、「前倒し」反対者リスト=石破政権延命「加担者」リストを、あらゆるメディア、SNS上で作成し公開するという事を、予め「宣言」しておくことです。

 

この「宣言」によって、「賛成すれば官邸側に名前を曝されるし、賛成しなければ「石破政権延命加担者」として国民側に名前を曝される」という状況を作り、賛成する事のリスクのみならず、賛成しないことのリスクもあることを各国会議員、ならびに、各都道府県連に理解させるわけです。

 

これによって、今回の石破政権側の「賛成者の晒し上げ」工作による不当な圧力を大きく軽減させることが可能となるのです。

 

ついては本記事読者の皆様方には是非、とりわけマスメディア、そしてインフルエンサーの皆様方には是非、「前倒し」意向調査の公正中立性の回復のため、『総裁選前倒し「反対者」リスト』の公表にご協力願いたいと思います。

 

何卒、よろしくお願い申し上げます。

 

京都大学大学院 藤井聡

 

 

 

執筆者 : 

CATEGORY : 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

メールマガジンに登録する(無料)