著者紹介
【宮台真司】
1959年宮城県生まれ。東京都立大学教授。
公共政策プラットフォーム研究評議員。社会学者。映画批評家と幅広く活躍している。
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了し、社会学博士を取得。
主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)などがある。
【藤井聡】
1968年奈良県生まれ。京都大学大学院工学科教授。同大学レジリエンス実践ユニット長。
『表現者クライテリオン』編集長を務める。
京都大学工学部卒、同大学大学院終了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学教授を経て現在の職に至る。
2018年からはカールスタッド大学の客員教授も兼任。
主な著書に『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』(共著・晶文社)などがある。
内容紹介
損得マシーン、自己保身に走る劣化した日本人。
ニヒリズムを潰し、社会の理を取り戻すには。
天皇、キリスト教、メタバース、街づくり、経済政策、社会福祉
――現代社会の根本問題に対する、タブーなき議論が満載!
コロナ禍で、「仲間が消えた社会、人間の叡智が湧き出ない社会。システム化・画一化で危機に脆弱な社会」という“日本の弱み”をさんざん見せつけられた状況だ。 そこで本書では、
1、経済第一主義の社会で失ってきたものが何だったのかを、社会学的見地から明示し、
2、日本人が本来、大切にしてきた生き方、社会の在り方とは何か説く。その上で、
3、本来的な生き方や社会を取り戻すため、ポストコロナで日本人の意識をどう目覚めさせるか。
4、平成そして令和の経済・社会政策で失った何を復活すればよいのかと提案する。
「前向き」な道筋を交えながら、日本社会の新たな在り方、幸福論を提示する。
本書は『表現者クライテリオン』2021年7月号、TOKYO MXテレビ『藤井聡の東京ホンマもん』教室2021年8月14・28日放送分の対談内容に加筆修正し、新たにオリジナルの対談を追加しまとめたものです。
目次
【まえがき】――宮台真司
【第1章】「若者の未来」は守れるか
- 「羊のように大人しい日本人」のレジスタンス
- 国民の利益を一顧だにしない政治家と専門家
- 「仲間以外はみな風景」の下劣日本人が、さらに劣化している
- コロナ自粛の若者に対する被害は、バタフライ・エフェクトで甚大化する
- 「共通前提」が消えうせ、日本人と日本の劣等生が顕在化した
- パブリックな議論ができない日本人と、如何に議論すべきか
- 日本を如何に立て直すのか?――マクロ経済政策と言論活動
- 日本を如何に立て直すのか?――堕落と局所的共同体の活性化、そして貧困対策
- パルチザンと連合軍のタッグに向けて
【第2章】クズ化を防ぐ共同体
- 「クズレベルを防ぐ三つの処方箋」と「焚き火の効用」
- 「閉ざされ」から「開かれ」へ子供たちを導く
- 「個人」という存在は仮説にすぎない
- 意見や立場の違う相手に「ピティエ(憐れみ)」を感じられる範囲
- 「友達」も「親友」もいない若者たち
- 「これからは君の時代だ」と西部邁は言った
- 仲間を幸せにできなければ、自分も幸せになれない
- 人間は弱いから、クズ界隈にいればクズ化する
【第3章】荒野を生んだ都市工学
- 「移動の自由」は「表現の自由」につながると問うたアガンベン
- 都市も環境も、自然に出来上がるからこそ「生きている」
- 「当たり前の全体をうまく計画」することが大事
- 「街に車を入れない」街づくりの重要性
- 日本の都市計画はあまりに「プレイス」を失わせた
- 人心が分からない理系人間と、数字を見ない文系人間
- 民が頓馬なら、民主主義はでたらめに機能する
- 座回しするファシリテーターが共同体を復活させる
- 経済問題で考慮すべき「日本の特殊性」
- 雇用や経済の問題と、街づくりの問題は一つにつながっている
【第4章】「天皇」を参照せよ
- 「弔う」ことさえ禁じられた社会で
- 歴史を継承せず「仕切り直し」てしまう日本人
- 日本人が近代に見失った「道」の思想
- 世俗とは対極にあるはずの皇室
- 「開かれた皇室」「王室化する皇室」はあり得るか
【第5章】神なき時代のメタバース
- キリスト教を考えると世界の見方がクリアになる
- 自分が救われるために人を助けるのはクズ
- 神の不在はメタバースで加速する
- 「あちらの世界」に取り込まれることは悪なのか
- 「人間の数だけメタバースが存在する」恐怖
- 新反動主義者たちの思い描くこれからの世界
- 訪れるニヒリズムに満ちた世界と、抵抗するテクノロジー
- 「個人の内面の空洞化」とどう戦うか
- 宇宙規模の時間軸を持つことで超えられるものがある
- 「有限性の哲学」こそが、人間の本当の価値を呼び覚ます
【あとがき】――藤井聡