英国のロックバンドPULPが一九九五年に「コモン・ピープル(Common People:直訳すれば“普通の人”、“大衆”と置き換えても良い)」を発売し全英一位を獲得。私のロックやファッション、サッカーといった英国文化好きが高じて、仕事を一度辞めて英国で暮らした時期の数年前のヒット曲だけど、その当時も約三十年経った現在でも英国内では長年愛されている曲の一つです。
先日YouTubeで、二〇一一年の英国野外フェスで彼等がトリを務めこの曲を演奏したライブ映像を偶然にも視聴した。バンドと観客が一体となっての大熱狂ぶりにえらく感動し、興奮冷めやらぬ間に歌詞を調べてみた。ざっと要訳すると次の通り。
「彼(バンドのヴォーカリスト)は彼女(ギリシャからの留学女性)と出会う。彼女の父は大金持ち。彼女は言う、“普通の人のように生きたい、あなたのように”(一番のサビ)。彼女に英国の普通の人の暮らしを教えるも、最後に彼は言う、“君には絶対普通の人のようには生きられない(二番のサビ)、だって部屋にゴキブリを見つけてもパパに電話して済ませるんだろ? 暮らしが落ちぶれていくのをただ眺めるしかない中、僕等は踊って、飲んで、ヤる(隠語)。だってそれしかすることがないから”。」
楽曲の良さはさることながら、社会格差を労働者階級目線で英国人らしいユーモアと皮肉を交えた歌詞も共感を呼び大ヒットしたのでしょう。社会格差は英国だけでなく、日本でも“勝ち組”、“負け組”という言葉と共に近年定着しています。負け組とは収入・財産の低さの面で定義されるのなら、英国も日本も労働者階級は負け組です。
しかし日本はさておき、英国の労働者階級を見ると、希望に満ち溢れてはいないが、悲観的に暮らしているとも感じなかった。更に彼らの生活振りに着目すると、夜はパブで飲み、週末はクラブで踊り、サッカー観戦と、文字通り“踊って、飲んで”を地元の仲間(他者)と関わりながら生活している(或る意味、それだけ)。他者との関わりは決して傷を舐め合う為ではなく、地元に根付いた習慣や文化を通して共に暮らしていることが悲観的に見えないのでは、と考えた次第です。
さて、二〇二〇年にコロナによる予期せぬ自粛と在宅勤務生活が始まりました。通勤の煩わしさからの解放等、最初は在宅勤務の利点を存分に満喫していました。しかしずっと閉じ込められた生活に息苦しさを感じ、元来寂しがり屋ではない私が、何より人恋しくなっていることに気付かされました。出社が緩和されると、面識の薄い方も含めて会う方々に積極的に話しかけ、時には昼食に誘ってみる。すると皆さんも同じ気持ちだった、と快く応えていただき、現在でも各々交流は続いております。
今、日本国内では、大手マスメディアは麻疹だ、紅麴だ、と新たな不安を煽る一方、コロナ渦中の例の被害には目を瞑ったままの相変わらずの偏向報道振り。経済は日経平均株価は過去最高値を更新するも大衆の実生活への恩恵は感じられません。世界に目を向けても各地で紛争が勃発中。どこを見渡しても不安定・不確実な事ばかりが溢れる中に私達大衆の実生活は身を置いています。大衆に出来ることなんてたかが知れている。PULPに習えば、私もすることは、飲んで、歌って、語り合う、のその程度。だけど、地元を愛し他者と関わり家族と実生活を営んでいる。自己弁護かもしれないけど、その実生活で充分ではないだろうか。
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奥野健三(大阪府)
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長瀬仁之介(16歳・学生・京都府)
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北澤孝典(信州支部、50歳、農家)
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前田 健太郎(49歳・東京都)
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浅見和幸(東京都、54歳、システムエンジニア)
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柏﨑孝夫(東京都、38歳、自営業)
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