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日本人よ、蘇れ

辻井健太郎(29歳、京都府、会社員)

 

 日本人よ、今こそ真に目覚める時である。もうこれ以上、日本国の解体を黙って甘受してはいけない。かつて三島由紀夫は次のように述べている。「守るべきものは日本というものの特質で、それを失えば、日本が日本でなくなるというものを守るということ以外にないと思う。」(『栄誉の絆でつなげ菊と刀』)我が国はこの「日本というものの特質」が完全に失われようとしている。というのは、東日本大震災後の消費税の増税、種子法の廃止、水道事業の民営化、TPPの推進、入管法の改正など日本のナショナルなものを徹底的に破壊することが推進されているからである。このままでは政治家が「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と発言した通りに日本は日本でなくなり消失するだろう。三島は人間性について次のように云う。「そもそも人間性の無制限な開放とは、おのずから破壊を内包し、政治秩序の完全な解体を目睹し、そこに究極的にはアナーキズムしか存在せしめないのは論理的必然である。」(『自由と権力の状況』)

 現代日本では政治秩序の解体が進行している。おそらく、政治の大衆化が原因であり、反知性主義が横行しているからであろう。法や社会制度を失えば、人間性の恐ろしさが解放されるのは自明のことである。一定の秩序があるからこそ人々は自由で安心な暮らしができるのである。もし、一定の秩序がなければ人間というものが恐ろしくて外出することも困難になってしまう。そして、そんな社会の到来が徐々に近づきつつある。

 たとえば、自衛隊の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造、森友事件における公文書改竄などがその証拠である。これを見る限り、日本の無秩序化は急速に進行していることが伺える。戦後日本は憲法問題を棚上げし、民主主義を金科玉条のごとく崇め、憲法九条の上で胡坐をかいてきた。そして、自分の国を自分達で守るという独立の気力をもたなかった結果、モラルがだんだん蝕まれているのである。三島は云う。

「今この危機感が全然ないというような時代になってきて、今、世界中で一番呑気なのは日本かもしれないんですが、日本に果たして、こういう危機がもし生じた場合、対処するような大きな精神的基盤があるだろうか。」(『我が国の自主防衛について』)

 残念ながら、このまま目が覚めなければ危機に対処することは不可能だろう。そもそも大半の日本人は現在の日本が危機的状況であるということをほとんど理解していない。まるで、夢を見ながら、あくびをしている愚鈍な羊のようである。しかも、消費増税が敢行されれば日本国は再起不能となり亡国に至ってしまうことが決定的となるだろう。多くの専門家達が警鐘を鳴らしている通りである。しかし、今、目が覚めれば消費増税を阻止することができる。つまり、恐るべき未来を回避することは可能なのである。三島はさらに云う。

 「楽天主義と悲観主義、理想と実行、夢と一歩一歩の努力、こういう対蹠的なものを、両足にどっしりと踏まえたバランス、それこそが本当の現実的な政治、現実的な経済、現実的な文化というものであると思う。」(『世界の静かな中心であれ』)現代日本は、あらゆる面でバランスを崩してしまっている。いまこそこのバランスをしっかりとり、日本人一人一人が常識を取り戻す必要がある。常識について小林秀雄は云う。「常識は、何事によらず、行過ぎというものを好まない、ただそれだけの事に過ぎないのかも知れない。」(『常識について』)

 もうこれ以上、日本人自ら日本を破壊してはいけない。日本で繰り広げられている急進的な「改革」という名の日本国の解体をいまこそ全力で止めるべきである。