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現代日本のキーワード:人物像・思考編

吉田真澄(62才、東京都、会社員)

 

イラストや写真入りではご紹介できませんが、いま、この国を国難に導いている人々の生態や思考形態をキーワード化してみました。いわゆるレッテル貼りや誹謗中傷に使うのは本意ではありません。あくまで専守防衛が目的です。特に人物像を表すキーワードについては、できるだけ、さんやくん、殿などの敬称をつけ、愛をこめて、ご利用いただくことをお勧めいたします。

グローバカさん

 洋ものの情報や知見を咀嚼、吟味することなく丸呑みしては、日本国内で披瀝することを生業とする人々。欧米まねっこ政治・経済学者などがその代表格。単なる輸入屋なのだが、いつのまにかプライマリーバランス、自己責任。なんでも規制緩和、民営化。とにかくインバウンド、ダイバーシティ。さらには首相公選、一院制、英語の公用語化などと吹き始めるので始末に負えない。重層的かつ有機的な思考や、伝統的な価値観を嫌い、改革の名のもと、手あたりしだいモジュール化(交換可能な構成単位に分解して標準化すること)という手法によって均質化。境界線や国境を取り払い、集合知や歴史的な知見をつぎつぎと解体していく。輸入に忙しいためか、オリジナルな立論は意外に苦手。上質のスーツなどを着用しているわりに「勝ち組」「負け組」などという下品な言葉を好む。C•ゴーンには逃げられ、新型ウィルスに易々と侵入されてもまだわかんないのかなあ。別名、周回遅れのトップランナー。天敵は、ナショナリズムと真の国際派知識人。                                           

キヌサヤくん

 あたたかく、湿度も高く、密閉された風のない場所を好む。日本全国、政官民を問わず、さや状の組織体の中に生息。規則という細糸を編み、繭をつくる。触覚の退化によって生きた情報を捕捉できないため激甚災害や国家的リスクへの対応は不能。小さな頭で考えた小さな想定範囲を超えた、あらゆる事象を「想定外」という言葉で括り、社会化する。リスクの気配を何より嫌い、組織原理では理解できない知見や人物に遭遇すると、イエスともノーともとれる曖昧な表情でヘラヘラと笑う。さまざまな擬態を駆使、逃げ足も早い。成長期に、空気を読む能力を獲得した個体を核に同心円状に繁殖。高めの学歴を武器に日本の中枢部にも巣食っているが、その内部完結型で静止的な思考性は、この国を芯までスカスカにしかねない潜在的大脅威。生物が外部(水や空気や食べ物、そして情報など)を取り入れなくなった状態って「死」を意味しているのにね。

半径10メートルの平和主義

 たとえ自国のタンカーを守るためとはいえ、危険なホルムズ海峡に自衛隊を派遣してはいかん!あるいは、断固派遣すべきだ!と叫ぶだけで、特措法さえ成立させずに送り出す政治家たち。また、半世紀以上も帰国できずにいる北朝鮮拉致被害者と憲法9条の関係について気づかないふりをしている人々やその言説などを指す。身のまわり、半径10メートルくらいが平穏であればOKという姿勢は指導者層というより穴ウサギのイメージ。しかし穴ウサギほどの可愛いさもなく、遠目も効かず、警戒心もないのが痛い。野党ばかりではなくマスメディア、学界、官界、政権与党内にも広く分布する。天敵はリアリズムや地政学。

偽り人

 深々と下げる頭、必要以上の敬語、一見古風な接続詞、伝統的な言い回しやお作法。偽り人は意外なほど慇懃である。彼らは、そのようなスタイルを模倣することで、あたかもエスタブリッシュメントのような空気を身に纏う。しかし、じっくり観察してみると敬語は文法的に間違いだったり、お作法は正式なものでなかったり、頻繁に使うキーワードは意味をはき違えていたりする。国際的学・経歴ロンダリングなども駆使。テーマを一つに絞り、深く議論することが、彼らにとって大きなリスクを伴う行為であることを本能的に察知。多忙さを装ってあちこち動き回る。TV映えを狙ってか、髪型、髪色、スカーフなどには細心の注意を払う。いんちき討論番組から続々と輩出され、各界の要職に就く。

 あらかじめ、このようなキーワードでもワクチンのように接種して国民全体の免疫力を高めておかなければ、いま、この国に忍び寄る、知的パンデミックは防ぎようがないと思うのです。

 まだまだあるのですが、すみません。書いているうちに気分が悪くなってきたので、今回はこの辺で失礼します。