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「抗中」の精神を持て

菅谷勇樹(北海道、32歳、会社員)

 

 尖閣問題で、中国が考える最善のシナリオとはなんだろうか。
 それは戦わずして日本を屈服させることだろう。一滴の血も流さずに支配権を奪う。
 現在の弱腰な外交を見ていると、そうなる可能性も決して低くないのではないかと思ってしまう。そもそも多くの日本人は、尖閣を奪われることの危険性を理解していないのではないか。
 王毅氏に「尖閣は中国領である」と公言されて、茂木外相は平然としていたという。政治家ですらこんなものだ。メディアとて、ろくにこの対応を批判してはいない。
 中国や韓国から「靖国神社へ参拝するな」「歴史を歪曲するな」と言われたとき、日本は十分な反論を行わなかった。外交において、沈黙は金ではない。日本は自分たちの主張を認めたのだ、と解釈するだろう。
 靖国に参拝しないくらいならいいじゃないか。日本は侵略戦争の加害者なのだから、彼らの感情を傷つけてはいけないじゃないか。尖閣諸島なんて小さな島、取られても問題ないじゃないか。
 なるほど。確かにそれだけで済むのであれば、そうかもしれない。だが、本当にそれだけで済むだろうか。
 最初は小さな要求を飲ませ、徐々にそれをエスカレートさせていく。かつてナチスのヒトラーは、そうやってドイツの勢力を大きく広げていこうと考えた。最終的にはベルサイユ条約を破棄し、ドイツはポーランドへと進行した。それが、第二次世界大戦を引き起こしたのである。
 ヒトラーは危険だ。譲歩しなくてはならない。
 そう考えて取ったはずの行動が、裏目となった。日本全土の主権が脅かされるまで中国の要求はエスカレートしない、とどうして断言できるだろう。
 以前に衆議院議員の丸山穂高氏が、元北方領土の島民に対して、「戦争で取り返す気はあるか」という旨の発言をしたことがある。その際、世論からは激しいバッシングがおこった。 
 だが、国の主権が関係してくる問題であれば、ときにそのくらいの覚悟が必要になってくることもあるだろう。そのくらいの気概がなければ、領土問題の解決などは不可能だ。丸山氏の問いかけは、決しておかしなものではなかったと思う。
 中国は台湾、尖閣諸島、さらには沖縄までも狙っている。
 コロナで世界各国が衰退の一途をたどる中、中国はほぼ独り勝ちを収めている。
 中国の繁栄は一時的なものに過ぎない、いずれは凋落するだろう。それはもはや完全なる楽観論だ。いまや中国は、自他共に認める大国だ。
 対抗するためには、まずは中国のことを知るべきだ。
 大陸国である中国は、古代から常に異民族の侵略を警戒していなくてはならなかった。
 日本は海が天然の要塞となっている為、そのような脅威にさらされることは少なかった。
 日本人と中国人の平和観が著しく乖離している一因は、そこにあると思う。
中国にとって平和とは、戦い続けなければ得られないものだった。
 日本は第二次世界大戦で敗戦国となった。だが、この戦いは、あくまでもアメリカに敗れたものだ。中国との戦いでは、日本軍が終始優位に戦局を進めた。持ちこたえることができたのも、アメリカやイギリス等の支援があったということが大きい。中国に敗れた、という意識が日本人にはない。これはおそらく向こうも感じていることだ。中国が「日本軍国主義の復活」を危惧しているのはそのためだろう。まだ、日本の力を警戒しているのである。いくら、そんなつもりはないと主張したところで、彼らが信用するはずはない。
 それが変わるとすれば、日本が本当の意味で中国に屈服したときだ。
 私たちは日本を亡国にしてはいけない。中国の行動は逐一注視していくべきだと思う。