メアリー・ウォーノック 著 『想像力「最高に高揚した気分にある理性」の思想史』 法政大学出版局/2020年10月刊 の書評です。
書評者:酒井佑陶
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西欧哲学の伝統の中で、「想像力(イマジネーション)」概念に関する議論は盛んに行われてきた。古代ギリシャの時代から現代哲学に至るまで、想像力論は様々な思想家による蓄積がある。一方我が国においてはその蓄積がほとんどない。日常的な使用や辞書的な定義を超えて、「そもそも想像力とは何か」と哲学的に問うことは稀である。
本書はその西欧における近代以降の「想像力」概念を、思想史的かつ哲学的に探究している。ヒュームやカントらの議論を入口とし、英国の詩人であるコールリッジとワーズワースによるロマン主義的な想像力論を深く掘り下げる。
さらに「イメージ」と「想像力」の関係性を、現象学、サルトル、ウィトゲンシュタインらの議論を参照しつつ哲学的に問うている。そして終章では本書で議論された想像力論を踏まえつつ、ウォーノックの教育論が語られる。
心的なイメージを形成すること、芸術作品を理解し創造すること、現実の世界に意味を与え解釈すること、これらは同じ思考様式に拠っており、それこそが「想像力」であるとウォーノックは述べる。
人間の日常的な知覚から芸術や象徴の解釈に至るまで、すべて想像力なしには不可能である。その意味で想像力は普遍的であり、感情を触発する知性の一部である。このような包括的な能力としての想像力を、様々な思想家たちの議論から引き出している。
ウォーノックの想像力論が他と一線を画すのは、ロマン主義的な想像力の重要性を強調している点である。コールリッジとワーズワースは、具体的・限定的な経験や「今、ここ」を超えて、言葉では汲みつくしえない何かの存在を看取する能力として、想像力を捉えている。
想像力の本義は「決して完全にはとらえることのできないものをとらえようとすること」にあるという。有限な存在としての人間が、想像力をもって思考を巡らせることで、普遍的な何かへと接近することができるのである。
ヒュームやカントといった西欧近代の代表的哲学者のみならず、ロマン派詩人の理論と実践(詩作)を俎上に載せることで、ウォーノックはより多角的な議論を展開している。
当然ながら本書は想像力論を網羅したものではない。例えばウォーノックは、想像力と感情との間に必然的な関係性があると主張しているが、思想史的な記述を超えて、「なぜそこに関係性があると言えるのか」という哲学的な掘り下げはなされていない。「想像力」のみならず「感情」もまたロマン主義の主題であったことを鑑みれば、その手がかりもまたロマン主義にあるのかもしれない。
それでもウォーノックの想像力論は、現代社会に様々な示唆を与えてくれる。何かを知り尽くしたという独断主義と、何も知りえないという冷笑主義の間で平衡感覚を保つには、想像力が、とりわけロマン主義的な想像力が必要だと言えよう。
(『表現者クライテリオン』2021年3月号より)
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コメント
まさに酒井先生のおっしゃる通りで、ロマン主義の時代に欧州の金融システムが完成されたのですね。
そこにはナポレオンがワーテルローで敗北した背景を想像すれば、ロスチャイルド一族かナポレオン軍と欧州各地の双方に金融を融通して大儲けをしたから、途方もないイングランド銀行の紙幣発行権を、手に入れられたのです。
それがやがては産業革命に結びつくのですが、それが次第に帝国主義に変わりユダヤ係のロックフェラーやモルガンなどを従え米国のFRBを創設して国際的な金融支配を保っているのであり、国際社会の縮図であるのです。
ちなみに現状もユダヤ係のジョージ・ソロスが世界各国で紛争を誘導し対立や分断を仕掛けており、一方ではビル・ゲイツがコロナ騒動を掻き立てて、国際社会からの医療や保険の略奪を行っているわけですね!