2022年2月16日に発売『表現者クライテリオン』最新(’22/3月)号
今回は、本誌編集長、藤井聡の巻頭言を公開いたします。
「危機と対峙する保守思想誌」である表現者クライテリオン、その本誌が対峙せねばならぬ最大の「危機」--それこそが「皇室問題」である。
我が国の皇室はその皇位のみならずその伝統全てはただ漫然と継続されてきたのでは決してない。それらの存続は有史以来、常に「危機」に晒され続けてきた。それにも拘わらず令和の今日に至るまでその伝統が途絶えずに存続できたのは、その断絶の危機を回避するための努力を、皇室自身のみならずそれを支え護る日本国民が揺るぎなく続けてきたからに他ならない。
ついてはこの令和においてもこれまでと同様、否、それ以上に、皇室存続のための努力を続けなければならない。さもなければ、近代に毒され俗悪に満ち満ちた令和日本にてその危機は全て現実のものとなる他ない。
本特集はそうした国民的努力のささやかなる一端として企画したものである。我が日本国民がこの「皇室問題」に、真剣に向き合わんとする気風を高めんことを、この機に改めて祈念したい。
愛無き対象に差し向けられるものはしばしば憎しみよりもむしろ無関心である以上、愛すれば愛する程にその対象に対する批判はより激しくならざるを得なくなる──かくして、愛国者はただただ日本を深く愛するが故に「反日」となり得る宿命を持つ。
本特集はこの必然と向き合い、日本を愛すればこそ、戦後のみならず戦前から我が国日本が抱える本質的な欠陥から眼を背ける事なく、そのおぞましさと惨たらしさを力の限り認識せんとするものである。
この愛する我が国日本、ひいては「君が世」の弥栄を護り続けるためには、我々が抱えるその宿痾を認識し、可能な限り治癒せんと努力しつつ、もしもそれが叶わぬのならその宿痾と付き合い続ける覚悟を持たねばならない。
その作業が間に合うのか間に合わないのか──残念ながらそれを問う暇すら、我々には残されていない。成すべきを成さねば我々が愛するもの達は全て無に帰す事になる。是非ともこれ以上の恥の上塗りを避けるためにも、自身の恥部から目を背ける事なく対峙せんとする勇気を持たれんことを、心から祈念したい。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
『表現者クライテリオン』2022年3月号 「皇室論 俗悪なるものへの最後の”反(アンチ)”」
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