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【森田 実×藤井 聡×柴山桂太】政治家よ、勇気と情熱を取り戻せ! ――戦後政治史から学ぶこと <特集座談会一部公開>

啓文社(編集用)

啓文社(編集用)

皆さんこんにちは。
表現者クライテリオン編集部です。

今回は表現者クライテリオン最新号の特集座談会を一部だけ公開します。

戦後間もない頃から令和の現在に至るまで、日本政治を観察し続けた巨匠、森田実先生とクライテリオン編集委との政治論談です。

私たちの国にも、気概に満ちた本物の政治家は過去に存在していた。そんな彼らの人物像を余すことなく森田先生に描写いただきました。

是非、ご一読ください!!

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【特集座談会】

政治家にとって「真の行動力」とは何か 戦後政治史に学ぶ

森田 実×藤井 聡×柴山桂太

 

占領軍と戦った石橋湛山

藤井 今回の特集企画「日本を蝕む『無気力』と『鬱』」の記事の一つとして、森田先生に「政治家の無気力」についてお聞きしたいと思っております。

 日本が全体的に「何も変えられない、という無気力感に覆われている」と指摘される中、「政治家が小粒化している」ともよく言われます。では、現在の政治家は過去の政治家と比べて、一体何が違うのか。ここを解き明かしたいと考えています。

柴山 政策論争という意味では、今の方が華やかかもしれません。高等教育の普及で、それぞれの分野で専門知識を持つ人は増えていますし、海外の情報もすぐに入ってきます。にもかかわらず、「人を率いる」という点で見ると、政治家が小粒化していると言われて致し方ないところがありますね。

 現実に新旧の政治家とお付き合いがあった森田先生はどうお考えでしょうか。

森田 結論を言う前に、体験的なところからお話ししましょう。

 昭和二十年八月十五日に戦争が終わりました。月末にマッカーサーが来日し、十月の初めには対日政策方針を出し、日本国内での政党活動が再開しました。しかしその前、終戦の玉音放送を聞くや否や、志ある人たちは政治活動を始めていました。例えば大阪にいた西尾末広は、その日のうちにリュックサックに鍋窯を詰めて上京した。途中、京都に寄って水谷長三郎と社会党づくりを相談しています。自由党を作った三木武吉も、高松から上京し、鳩山一郎を担いで自由党結成を目指した。みな、八月十五日と同時に動き出しています。

藤井 終戦という大きな出来事を前に、打ちひしがれているどころではなかったんですね。

森田 芦田均に至っては、八月十二日に鳩山一郎を訪ねて、その後のことを相談しています。こうも動きが早かったのは、やはり日本の将来の統治を考えなければならないという強い思いがあったからでしょう。

 政党の発足は十一月に入ってからになりますが、まず社会党が立ち上がり、続いて自民党、日本進歩党ができ、日本共産党が再建され、日本協同党ができた。自由党は鳩山を総裁にし、三木武吉がナンバー2の筆頭総裁に。そして幹事長に河野一郎を据えました。

 私は戦争中、伊東から小田原の中学区に通っていて、列車で河野一郎に何度もばったり出くわしました。

 そのうちによく目が合って挨拶するようになったのですが、一見して「これは普通の人ではない」という、光り輝くような雰囲気を持っていて、責任感や情熱の塊のようなものがあふれていました。誰が見ても「この人は指導者だ」と思うような風格にあふれていたんですよね。

 当時、熱海の駅で演説をやっている石橋湛山も何度か見かけましたが、彼もやはり一目で人物と分かるような、自信に満ちた風采でした。

柴山 写真で見る限り石橋は小柄ですよね。

森田 そう、小柄ではあるんだけれど、まとっている空気が違うんです。

 戦後最初の選挙が昭和二十一年四月に行われるんですが、大選挙区制で、一つの区に三十人くらいの候補が立った。それで石橋のような大物でも落選してしまうんですね。

 ところが昭和二十一年に総理になった吉田茂が、落選した石橋を内閣でナンバー2の大蔵大臣に据えるんです。占領軍が大蔵省の財産に目をつけて「使わせろ」と言ってくるのを退けなければならなかった。そこで石橋の力が必要だったんです。石橋は「日本人のために使う」、「失業者があふれているんだ」、「八百万人の在外邦人が帰国する、財政がなければ立ち行かない」と言って抵抗し、毎日、占領軍と戦ったんです。

 実際、当時の厚生省の統計では、失業者が六四〇万人に上るとされていました。実際はその半分くらいだったのではないかと思いますが、それでも当時の人口比で考えればものすごい数です。彼らを食わせていかなければならない。そのためには雇うしかない、賃金を払うしかない。石橋は「地方自治体でもどこでもいいから、とにかく人を雇え」と発破をかけました。

 しかしついに頭にきた占領軍が昭和二十二年、石橋を公職追放しました。これで占領軍は大蔵省を握ったんだけれど、石橋がガンガン蓄えを使っていたものだから、占領軍の不満はかなり高まったようですね。

藤井 今の政治家は財務省とさえ戦おうとしないのに、石橋は占領軍と戦ったんですね。

森田 そういうことを、当時の人たちはやってのけたんです。アメリカは当初から大蔵省支配を重点に置いていた。もう一つは法務省です。この二つの官庁の人間をアメリカに送り、アメリカ型の教育を施した。両者はアメリカというバックを得て強くなり、あるところまでは大蔵省と戦っていた政治家も、次第に弱くなって勝てなくなっていきました。この大蔵省―財務省とアメリカの関係は今も続いていて、在米日本大使館の筆頭公使は財務省からの出向者です。

藤井 このアメリカによる財務省支配の根は深いですね。現在の緊縮財政にも影響を及ぼしているのではないでしょうか。

(続きは表現者クライテリオン2022年5月号にて!)

 

『表現者クライテリオン』2022年5月号 『日本を蝕む「無気力」と鬱』
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