2025.04.02
2月16日発売の最新刊、
『表現者クライテリオン2025年3月号 [特集]トランプは”危機”か”好機”か?』から特集論考をお送りします。
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令和七年、米国の話であるから二〇二五年と書いた方がいいかもしれないが、現地時間の一月二十日、ドナルド・トランプ氏が第四十七代アメリカ合衆国大統領に就任する。間に第四十六代のジョー・バイデン大統領を挟んで二度目の大統領就任である。
大統領に初当選した二〇一六年の選挙では、トランプ氏は泡沫候補扱いをされ、日本の主要メディアはおどけた喋り方をする声優による吹き替えまでして、「おかしなことを言う変な候補」として扱っていた。しかし、トランプ氏の発言を注意深く聞けば、主権国家として当然考えるべき内容が多く含まれていた。筆者はトランプ氏の過去の発言まで遡って調べてみたが同様のことが言えたし、ある種その主張は首尾一貫していた。そうしたことも踏まえ、筆者はトランプ氏の当選の可能性について様々な機会において言及するようになっていたが、今度は筆者が「頭のおかしい人間」か「変な人」扱いされるのがほとんどであった。その背景には主要メディアの報道の影響や、アメリカの政治経済、社会についての理解や知識の欠如もあると考えられるが、「ヒラリー・クリントンが勝つはずだ。」、「ヒラリーが負けるはずがない。」という盲目的な思い込みが日本のメディア関係者や政治家、霞が関、そして多くの一般国民に浸透していたことが大きく影響したものと思われる。(1)
では、なぜ「ヒラリーは必ず勝ち、トランプは絶対負ける」と言えたのか? これについては明確な根拠や解は彼ら彼女らにはなく、ただ「ヒラリーはマトモ、トランプは変」程度の認識しかなかったようだ。まさに盲信そのもの、と評してもいいような状況だったわけである。
これが一般市民ならばまだ仕方がないと言えるが、それが政治家、特に国会議員や霞が関の官僚までそうだということになると話は異なってくる。
そのことの問題がまさに表面化した好例が、外務省、在ワシントンの日本大使館がトランプ陣営にパイプを持っておらず、関係者との接触も怠っていたため、安倍総理(当時)とトランプ次期大統領との会談が設定できなかった時であろう。その後、官邸の指示の下、日本大使館等が死に物狂いで走り、結果的に例のトランプタワーでの会談が実現したわけであるが、これは明らかに日本大使館、外務省の失態であると言わざるをえないだろう。
なぜこのようなことになったのかと言えば、在米日本大使館も外務省もヒラリー勝利を決めてかかり、トランプ陣営との接触は不要であると思い込んでいたことがあるようだ。
およそ先進国と呼ばれる国の大使館であれば、選挙結果がどう転んでもいいように普段から各党、各陣営に接触し、関係を構築しておくのが当然である。筆者も政策担当秘書時代に、小政党とはいえ幾つかの国の在京大使館の政治部門の公使や参事官から党代表への接触に同席している。(2)
しかし、日本の外務省の場合は、ある種の認識共同体とでも言うべきか、多くの普通の国の外務省、大使館が当たり前にやっていることにはどうも消極的なようだ。「出来ない」と書いていないのは、やろうとしている外交官、やっている外交官がいることを知っているからだが、人事異動でそれが途切れてしまったり、人的関係が継承されなかったりして、一代限りになってしまうことや、上から否定されることもあるようだ。(3)
外交は関係条約や関係国内法制の下でのシステマティックな面がある一方で、極めて属人的な面も強い。筆者の霞が関での外交経験は、外務省やそれ以外の各府省で頻繁に外交交渉を行っている部局に在籍したことがある官僚と比べれば微々たるものである。そんな筆者でも、ある国際会議で構築した国際機関や外国政府関係者との人間関係に大いに助けられたことがあり、そうした実体験からもこのことは明らかである。こうした属人的関係、いわゆる人脈は外務省のみならず各府省にとっても、ひいてはこの国にとって貴重な「資産」のはずであるが、どうも必ずしも上手に活用されているようには見えない。先にも少し触れたが、場合によっては「資産」凍結というか毀損されてしまうことすらあるようである。
さて、なぜこうしたことを長々と書いてきたのかと言えば、現在の日本政府、石破政権は新たに誕生する米国トランプ政権に的確に、上手に対応できるのか、大いに疑問を持っているからである。石破総理とトランプ次期大統領との会談は、表面上は大統領就任以降の二月に行うこととされているようだが、会ってもらえないというのが本当のところではないかと思われる。先の総選挙で過半数割れし、支持率も伸び悩むか停滞、調査によっては下落傾向の石破総理と会談しても意味がない、石破政権は長くはもたないだろうからマトモに相手にする必要はない、こうしたことが背景にあると考えられるが、カナダのトルドー首相は十一月末にフロリダのトランプ氏の私邸で会談している。与党自由党の支持率が野党保守党と拮抗していたものが、十二月後半からは下落が止まらなくなっていたところ、与党内からは早期辞任を求める声が上がり、ついに一月六日(日本時間の七日)に辞意を表明するに至るような状況であったにも関わらず、である。石破総理は余程嫌われているか遠ざけられているということなのだろうとも言えるが、いずれにせよ、最初から第二次トランプ政権との関係構築に躓いたに等しい。(4)
そうは言っても、日米間の外交関係が、、、続きは本誌にて…
(1)筆者は当時、日系米国人専門家による講演会に呼ばれて話を聞いたが、彼は「ヒラリーは勝ちます。」を繰り返しており、聴衆、と言ってもある程度社会的な地位がある人達ばかりだが、彼ら彼女らはそれを当然のこととして聞き、頷いていた。筆者にそれに疑問を呈する余地は皆無であった。そんなことでもしようものなら、異常者扱いされて総スカンを喰らっていただろう。
(2) 平成二十四年十二月の衆議院議員選挙において、みんなの党は改選前の八議席から倍増以上の一八議席を獲得、その後参議院において民主党からの離党者が二名加わる等、小政党とはいえ躍進・党勢拡大を続けており、注目を集めていたことは確かであるが。されど小政党である。彼我の差を大いに感じる。
(3) 一つの例として、某省からある在外公館への出向者は、三年の任期の間に徹底した情報網の構築、人脈形成に励み、それまでにはつかめなかった情報へのアクセス、関係者との人脈形成に成功したが、人事異動によりそれが途切れてしまい、帰国後もその「資産」を活かすことが出来るポストとは全く無関係のポストに配属されてしまったとのことであった。
(4) なお、この点に関しては外務省や在ワシントンの日本大使館にその責を負わせるのは少々酷であると考えられるのみならず、今後石破官邸に振り回され、トランプ政権との間で板挟みになることが容易に想定できる。実に気の毒なことである。
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