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【藤井聡】「台風19号」は例外ではない。もっと強い台風が、来年以降も必ず来る。

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

コメント : 3件

東日本を中心に凄まじい被害をもたらした
台風19号。

20以上の河川が決壊し、
100カ所異常で氾濫が起こりました。

死者・行方不明者も、
本日(14日)午前6時点で、
34名となっています。
https://news.nifty.com/topics/tbs/191013370581/

避難所等での「災害関連死」の可能性も踏まえると、
さらなるたくさんの方の人名が
失われる事が危惧されます・・・。

故人の冥福をお祈りするとともに、
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

こうした被害を繰り返さないためにも、
今回の堤防決壊、氾濫のそれぞれの事例について、
「それは事前の対策で防ぎ得たのか」
という視点の徹底的検証が必要です。

それと同時に、今回は「ギリギリ」
利根川や荒川といった超大型河川の決壊や、
東京湾の大型高潮被害が回避されたのですが、
これらは交通事故の世界で言うと、

「ヒヤリハット」

のようなもの(つまり、“やばかった”わけですです)。

後何がどうなっていれば、
巨大被害が生じ得ていたのか、
という視点の検証も必要です。

さて、こうした検証において重要となるのが、
この台風19号クラスの台風が、
今後やってくる可能性がどれくらいあるのか、
という一点。

もし、もう二度と
このクラスの台風がやってこないなら、
今回の検証は、将来にとって
あまり役立たない、と言うことになります。

実際、この台風19号はメディア上では、
「過去最強クラス」
等と紹介されていましたが、
https://www.yomiuri.co.jp/topics/20191009-OYT8T50036/

事実を踏まえると、決してそうではないのです。

すなわち、このクラス、あるいは、
それ以上のクラスの台風は、これからも十分に有り得る
のです。

まずはコチラのリストをご覧ください。

1位 925ヘクトパスカル 1961年9月 高知
2位 929ヘクトパスカル 1959年9月 和歌山
3位 930ヘクトパスカル 1993年9月 鹿児島
4位 935ヘクトパスカル 1951年10月 鹿児島
5位 940ヘクトパスカル 1991年9月 長崎
6位 940ヘクトパスカル 1971年8月 鹿児
7位 940ヘクトパスカル 1965年9月 高知
8位 940ヘクトパスカル 1964年9月 鹿児島
9位 940ヘクトパスカル 1955年9月 鹿児島
10位 940ヘクトパスカル 1954年8月 鹿児
https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/ranking/air_pressure.html

これは、気象庁が発表しているもので、
1951年から今日に至るまでの、
上陸時点における、
「台風の強さ」(ヘクトパスカル)のトップ10です。

ご覧のように、過去においては、
940ヘクトパスカルから、
最強で925ヘクトパスカルで、
日本列島に上陸してきたのです。

それでは、今回、どれくらいの強さで、
台風19号が上陸したのかというと、それは、

945ヘクトパスカル

だったのです。
https://www.asahi.com/articles/ASMBD2C86MBDUTIL001.html

つまり、今回の台風19号の強さは、
トップ10のランク外だったのであり、
決して「例外的に超強い台風」ではなかったのです。

もちろん、台風の被害には、「大きさ」も重要です。

が、その点を加味したとしても、

『来年以降、この「19号」よりもっと強い台風が繰り返しやってくる』

であろうことは、過去の実績から考えても、
十二分以上に考えられる事態なのです。

今後の防災・国土強靭化の取り組みは、
こうした基本認識の下で、
進めなければなりません。

もしも政府が、
そうした取り組みを“おざなり”にすれば、
荒川や利根川決壊による数十兆円規模の被害や、
東京湾における100兆円を越える高潮被害が、
「たった一発の超大型台風」によって
近い将来、引き起こされてしまうことは、
もはや避けられなくなるでしょう。

台風や大雨の発生を防ぐことはできませんが、
我々の治水の努力によって、
「災害」を防ぐことは決して不可能ではない
のです。

したがって、あらゆる水災害は、
天災のみならず「人災」の側面を濃密に含んでいるのです。

これ以上の犠牲者や経済被害を出さないためにも、
後先を考えない硬直的な「緊縮財政」を回避し、
必要な防災・国土強靱化を徹底的に進めることを、
政府に強く「要請」したい
と思います。

追伸1:
日本人は、こうした災害の度に「思想」として、その天災を捉え直す努力を重ねねばなりません。これを機会に是非、昨年に敢行した「思想としての防災」を改めてご一読頂きたいと思います。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JZB8FZ2/

追伸2
政府が「空虚」な行政を重ねている限り、災害は繰り返されることになります。国民は自らの命と財産を守るためにも、政府の「空虚さ」を徹底批評し続ける事が必要です。
『安倍晋三 この空虚な器』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07YMF27NQ/

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コメント

  1. ジャパンハンドラー より:

    台風が直撃した先々週の土曜日に、日本橋と人形町界隈を通りました。
    昼過ぎでしたが完全にゴーストタウンと化していました。

    飲食店、カラオケ、デパート、ドラッグストア等は全休で、
    ファミリーマートとセブンイレブンだけが営業という有様。
    夕方以降、大雪などで早々に看板してしまうということは過去にありますが、
    都内でこれほど人が消えたのを見るのは初めてでした。

    帰宅するまでに見かけた通行人は10人ほど。車も皆無。
    ホテルで暇を持て余している外人観光客が、
    スマホを片手に台風撮影をしているか、後は休日のメンテナンス業者ぐらいです。

    薄暗いのは台風の影響だけではなくて、
    待ちに絶望のムードが蔓延しているんですね。
    疲労感と先行き不透明感でとにかく暗いんです。

    昭和の頃ならば、個人経営のとぼけた飲食店主がいたりして、
    閑古鳥を承知でそれでも店を開け、近所に住むなじみの客と台風を酒の肴にして、
    ささやかに愚痴を語らう。
    そんな光景があったように思いますが、
    縋るように裏通りを探してみても全くのゼロ。

    在宅率は極めて高いはずなのに、マンションの明りもなぜか少ない。
    富裕層の住むタワーマンションも同様です。
    単身者向けの賃貸マンションなどに住む人は、
    そこそこ収入があるはずなんですが、みんな寝て過ごしたんでしょうか?

    増税の影響がいかに顕著であるか、台風だからこそ見えてきた風景でしたね。

  2. 木田茂夫 より:

    最近思うのですが反緊縮を唱えるためにMMTは特段必要ないのではないか? と思います。

    そもそも憲法25条で健康で文化的な最低限の生活を保障するとなっているわけですから、借金まみれになろうが、何しようが、とにかく、やらなあかんことはやらなあかん、と言うことではないかと思います。

    なので、単純にプライマリーバランスを考えること自体が憲法違反なんじゃないのでしょうか?

    日本が災害大国であり、自然災害の大きさは人間が神ではなく被害想定すらできないのであれば、プライマリーバランスをふりかざす、思想がそもそも25条違反でしょう。

    憲法違反以上の判定は官僚にはできないのだから、そもそも論で徹底的におかしな主張を叩き潰すべきだと思います。

    緊縮で堤防が不十分になったら人が死ぬのです。
    とっくに「最低限」を突き破っている話だと思います。

  3. 学問に目覚めた中年。 より:

    十四日の二十二時からサンTVでグローバリストのハシゲと三浦某とが、どうでもイイ事をあーやでもない、こーでもない、くだらない講釈をたれていましたがホント、インテリ連中が幅をきかせる愚劣の舛添要一レベルでしかありませんでしたよ。ホント我が国にとってマイナスしかないので、むろん勘弁してもらいたい。 これらを真に受ける観覧者も、多くが恐らく維新の関係者でしょうね。これらは腐敗の要因でしかないから、おバカは社会から、なくさなければなりません。ところでコイツらはインフラ整備のイすら発っしもしませんでしたよ。こんなお調子者こそ表から消さなければなりませんね。

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