【特集インタビュー】ディープステートは全く「ディープ」ではないーグローバリストたちの浅はかな選民思想/ジェイソン・モーガン×川端祐一郎

川端 祐一郎

川端 祐一郎 (京都大学大学院准教授)

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今回は、特集インタビューの一部をお送りいたします。

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アメリカ的リベラルの背後にある優生学

川端▼今回は、ワシントンの背後にある「ディープステー 卜」的な権力構造について伺いたいと思います。前号で は、ワシントンのエスタブリッシュメントは非常に暴力的 な「チンピラ」であるという話をしていただきましたが、な ぜ彼らは、思想的には「リベラル」が多いのに差別的であっ たり暴力的であったりするのでしょうか。ナチスのように 反リベラルな思想を唱えているなら、差別や抑圧や暴力に 結びつくのも分かるのですが。

モーガン▼ナチスの思想の背景には優生学がありますが、 実はアメリカ生まれです。かつてのアメリカの一番の問題 はどうやって非白人を支配するかということであり、優生学もそのために作られました。私の好きな黒人の哲学者で あるW・E・B・デュボイスは、「南北戦争で戦っている 北軍には、実は解放した奴隷をどのように扱うかについて の計画が全くなかった」と指摘しています。北軍が南部に入ってきたとき、「この黒人たちをどうしようか?」となっ たのです。そこで、”Freedmen’s Bureau” (解放黒人局)という組織を立ち上げました。これは解放された黒人奴隷の社会生活を支援するという名目だったのですが、南北戦争を 俯瞰して結局どうなったかというと、奴隷がいなくなった というより、マルクス主義的に言えば賃金奴隷や工場奴隸を量産することになったのです。奴隷制度が廃棄されたど ころか、全国まで拡大されたのですね。そしてさらに、北部中心の連邦政府が、黒人やインディアンだけでなく、国 民全員を支配するようになっていったというのがアメリカ の歴史なのです。 優生学が導入されたのは、黒人など非白人の繁殖を抑えるためです。(実は、黒人の遺伝を改善するために、デュボイスもある程度優生学を認めていました。)もともとは、例えばトーマ ス・ジェファーソンは十四歳の奴隷を強姦しまくっていま した。強姦すればするほど子供が生まれて自分の財産が増えるのでそうしたわけです。でも奴隷制度が廃止される と、逆に黒人が繁殖するのは困るという状況になった。それで、優生学などの理論が発達しました。白人は、アメリカ大陸は自分たちの大陸だと思っているので、奴隷制度がなくなった後も自分たちが彼らを支配するロジックが必要 だったのです。

川端▼白人と非白人の間では、暴力的な支配関係がずっと続いているということですね。現在でもこの構図はあまり変わっていないのでしょうか。

モーガン▼変わっていないですし、優生学こそがアメリカの支配体制の本質だと思います。今回の大統領選で民主党(昔、奴隷制度を必死に守ろうとしていた政党)を代表するカマラ・ハリスや元大統領バラク・オバマは、名誉白人と呼ば れ利用されている特殊なエリート層に過ぎません。ハリスの裏には、中絶マネーがあります。全国展開している中絶クリニックの創設者であるマーガレット・サンガーという人はレイシストで、KKK(クー・クラックス・クラン)の支持者でした。サンガーは、黒人は「人間の雑草」だと言って、非白人の繁殖が白人の遺伝的純粋に対する脅威だと思っていたので、優生学を推薦していました。

川端▼中絶賛成派の「ブロチョイス」 (選択権の擁護)というの は、人権思想というより、優生学的に遺伝子を選抜して特定の人種を絶滅させるための方便ということですか。

モーガン▼全員とは言いませんが、そう考えるのが多いと思います。ハリスを支援している中絶クリニックがター ゲットにしているのは黒人とヒスパニックです。実際にクリニックは黒人が多い地域にあります。非白人が繁殖するのは困るという優生学そのものです。 そして、その膨大な中絶マネーが民主党の候補者に流れ ています。民主党がそのビジネスを守るからです。昔の奴隷時代と何も変わらず、非白人に暴力を振るいながら、表向きは民主主義を掲げているのです。アメリカでの中絶 は、「ブラック・ジェノサイド」、つまり黒人に対する民族浄化だと捉える人々は少なくありません。

暴力性こそがリベラルの本質

川端▼リベラルも実は差別的なのだとすると、ハリスやオバ マは、「黒人はもはや差別されてない」というイメージを演出するために利用されているという理解になるのでしょうか。

モーガン▼そうです。本人たちもそういうものだと分かって いて、出世したいのなら協力するしかないということです 。 この間、ハーバード大学では、黒人女性であるクロー ディン・ゲイ学長が盗作のスキャンダルで引きずり下ろさ れました。盗作は確かにあったのですが、ゲイが学長になったのは、白人の工作でした。裏では理事長のベニー・ ブリツカーという女性が実質的に物事を決めているのです が、彼女は民主党の有力者であり、白人です。彼女と他の 理事会のメンバーが、DEI (Diversity. Equity. Inclusion) の イデオロギーに基づいて、「次の学長は黒人女性にしておいたほうがよい」ということで、ゲイが選ばれたのです。そうすることで、ゲイは多様性を標榜するハーバード大学の看板になる。でもその裏で権力を握っているのは、バリ バリの白人であるプリツカーです。 それに、ゲイはハイチから移民してきたエリートの娘で す。ハイチというのはほとんどスラムのような国で、そんな状況になったのは、かつてフランスの植民地としてひどい奴隷制度が敷かれていたためです。そこからアメリカに 移民し出世するハイチ人というのは、要するにアメリカのエリートに協力して運良く引き上げられた人たちで、その典型が、ハイチからアメリカへ移民した両親の子、ゲイ学長です。彼女は「私はアメリカ黒人の代表です」みたいな顔をしていますが、アメリカの黒人の実際の苦しみを分かっ てはいないと思います。

川端▼「リベラル・デモクラシー」の看板が表には掲げられ ているものの、実際にはリベラルどころか、優生学にもつながるような抑圧的な思想が、いまだに民主党の根っこにはあるということですか。 モーガン『私はそれがリベラルそのものだと思います。隠れ蓑としてリベラルや自由貿易、個人主義を掲げているの です。ジョン・スチュアート・ミルでさえ、自由主義を唱 えながら、大英帝国を支持していました。これのどこが自由主義者なのでしょうか。イギリス人は「自由主義は素晴らしい」という綺麗事を言いますが、それは白人同士での 話であって、その裏では植民地を経済の基盤にしてきまし た。リベラルとはそういうものであり、アメリカはその典 型的な存在なのです。

ブロバガンダとしての映画の役割

川端▼リベラル思想の広告塔になっているハリウッドにつ いて…続きは本誌にて


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