【特別公開】亀井静香「社会集団が世の中を正すことができないと思うようになったらテロの時代に入る」(特集座談会「岸田文雄とは何者か?」より一部公開)

啓文社(編集用)

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岸田首相襲撃事件を受けて、先日14日に発売されました『表現者クライテリオン2023年5月号 【特集】「岸田文雄」はニッポンジンの象徴である―”依存症”のなれの果て』より、巻頭の特集座談会を一部特別公開いたします。

亀井静香氏をお迎えして行われた当座談会で、亀井氏はテロが出てくることを「予言」されていますが、そう予言されるのは日本社会にそうせざるを得ない劣化を洞察されているからです。

この1年間で頻発する襲撃事件を受けて我々が真に見定めるべき問題とはなにか。本特集では「岸田文雄」と”ニッポンジン”を多方面から論じて、その問いに迫っています。

(クライテリオン編集部)

 

以下、「【特集座談会】亀井静香✕藤井聡✕浜崎洋介 岸田文雄とは何者か?」(本誌2023年5月号)より一部抜粋

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善人では国家は守れない

藤井▼岸田さんに対する印象はいかがですか?

亀井▼岸田を批判する特集みたいだけれど、俺は岸田と同じ広島出身だから、特別弁護人として愛ある批判をさせてもらうよ(笑)。俺はあの人のお父さんと同期でね、岸田家は人柄のいい家だね。おじいさんも非常に人柄がいいことで有名だな。岸田も悪いことをするような総理じゃない。
広島の安芸(南部)は穏やかな人が多くて、岸田は安芸の人だからそれを体現しているんじゃないかな。
 だけど、国家のためには悪を為す人間じゃないといかんな。善人が習近平やプーチン、あるいは北朝鮮を相手に日本を守ることはできないわな。場合によっては、ありとあらゆる悪辣な手を使わなければ国を守れないようなひどい相手だから、岸田は心を鬼にしてプーチン、習近平、北朝鮮に対抗しないといけないな。
 それと、アメリカのポチじゃないことも示さないと。G7サミットでバイデンが広島に来るのだから、ポチじゃないことを証明するいい機会だろう。大統領が「誠に申し訳ないことをした。日本に対してやってはならないことをした。万死に値する」というお詫びをしない限り、広島には行かせないと伝えればいいんだよ。それで「分かりました」と言うのなら案内すればいい。

藤井▼本当にそうですね。ところが岸田さんサイドからは、広島だけじゃなく長崎にまでご案内するという話も出ています……。誠に残念です。

亀井▼あの原爆は人体実験だよ。広島と長崎では種類が違うんだから。そうした所に、バイデンが謝罪の気持ちもなく足を踏み入れるようなことを岸田はさせたらいかんよ。そんなことやったら普通の国ならテロが起きるよ。

テロの時代がやって来る?

亀井これからは、下手をしたらテロの時代に入るよ。議会とか労働組合とかの集団が世の中を正す力を持たなくなってきたからね。今の連合なんて、労働者の利益を代表して経営者と交渉していますか。ストもしていないでしょう。
 かつて京都のUAゼンセン(繊維・化学・流通サービス業などの労働組合が加盟する組織)に招かれて行った時、「あなたたちの組合でスト権を確立した経験があるのはいるか?」と聞いたら、一社だけだった。労働組合の幹部が本当に社員のために経営者と交渉しようと思うなら、スト権を確立しなきゃならんでしょう。そのうえで勝負に行かないと、すべてを持っている経営者にはかなわないよ。

藤井▼そうですね。パブリックな暴力装置を使えないなら、プライベートな暴力装置を各人が使わざるを得ない。

亀井社会集団が集団の力でもって世の中を正すことができないと思うようになったらそうなるね。選挙で投票に行ったって、政党が議会で正してくれるか? 野党なんて今や存在しないも同然じゃないか。国会で政府に対して国民の利益を代表してやり合う政党があれば、国民は託すんだよ。だけど、そうでなくなったらテロが出てくる。予言するよ。

藤井▼本当にそうですね。現在国民の中に、「岸田文雄」を熱狂的に支持はしないけれど是認する態度がありますが、その一方で、「岸田文雄」に対する憤りや苛立ちも一部において激しく拡大しているのではないかと思います。

亀井テロは四〇%の支持も要らないんだよ。一人いればいいわけだから。

藤井▼そうです。ですから、他人を苛立たせるあの「岸田文雄」という存在は、むしろテロを誘発する契機となり得るのではないかと思います。

亀井▼安倍晋三だって殺されちゃったもんな。彼は熱血漢なところがあったのに、あんな玉突き事故みたいな形で殺されるのはかなわんな。思想信条に基づいて殺されるなら政治家の本望だけれど、そうじゃないでしょう。統一教会と仲がよかったと誤解してやっちゃったわけだから。あの
山上という奴はけしからんね。

藤井▼先生がおっしゃったように、組織的に圧力をかけて問題を解決するメカニズムがあれば彼はテロを起こさなかったと思います。そのメカニズムが破壊され、蒸発してしまったので仕方なく(あのテロリストにとっての)「私刑」を行ったわけですよね。彼自身の判断は間違っていますが、ああいうテロはこれからどうしても増えてくるでしょうね。

亀井▼しかし、統一教会は難しい問題だと思うよ。一方で信教の自由があるからね。「信じる自由」と「布教する自由」の両方がある。ただ、ああいう詐欺まがいの方法で物を売っているような商売をしている場合は、警察が詐欺で捕まえなければいかんよ。俺は警察出身だから言うけれど、
警察も弱くなったな。事なかれ主義で、ややこしいところに手を突っ込まなくなってきたね。

藤井▼そういうのはちゃんと司法がやらないといけないですね。

(本誌へ続く)

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続きでは岸田首相の「事なかれ主義」と日本人の美意識の劣化の関係、またそうなってしまった環境的要因などについて論じています。
是非、本誌『表現者クライテリオン2023年5月号』をお手にお取りください。

 

 

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