ガーシー議員が、再三の要請に応じず国会に出席しなかったことが問題視され、除名処分となった。日本で詐欺を働き、逃げるようにドバイに移住。金に困ってYouTube で芸能人の下世話な暴露を始めたところ評判になり、その勢いにのって昨年の参院選で三〇万近い票を得て当選したまでは良かったものの、逮捕を恐れて帰国できず、国会に一度も顔を出さないうちに除名された。結果、議員の職を失うだけでなく、不逮捕特権も失って警察から追われる身になったというのだから、ずいぶんと浮き沈みの激しい人物である。
議員として何の業績もなく終わったため、わざわざ取り上げる必要はないのかもしれないが、一つだけ、元議員が行った重要な問題提起がある。それは、「なぜ国会はリモート出席を認めないのか」というものだ。
本人は帰国できないので、苦し紛れの主張ではある。だが、会社の会議がリモートでできるのなら、国会だってリモートでいいではないかという主張には、ネット世論で支持が集まったようだ。
残念ながら、この主張には無理がある。まず、その議員が外国に住んでいる場合、背後にどんな勢力がいるか分からない。外国政府に弱みを握られ、コントロールされてしまう危険がある。日本にいればマスコミがその背後関係を嗅ぎつけることもできるが、外国にいるとそうはいかない。その可能性を排除するためにも、最低限、議員は国内に居住していなければならない。
次に、議員の活動には、議会での人間づきあいが含まれる。議員がどんな人物であるか、その言動が信頼に足るものであるかは、議会で時間を共有する仲間の議員たちでないと判断できない。仲間から信頼される人物は、与野党問わず人望が集まり、要職を務めることになる。どんな人間の集まりもそうであるように、議会も、それなりに人望のある人物が中心にならなければ回らない。議員を選ぶのは有権者だが、議員の中から要職を務める人物を選ぶのは、長く時間を共有する仲間である。議員のリモート参加を認めてしまうと、その大事な機能が壊れてしまう。
会社の会議と国会には違いがある。会社であれば、リモートで会議するのもいいだろう。時間が節約できるので、便利だという声も多い。国会はそうはいかない。議員は、票を入れた有権者に対してだけでなく、すべての国民に対して重い責任を負わなければならない。国内のあらゆる情報が集約される議会という場で、他の議員と時間を共有し、顔と顔をつきあわせ、時に議場外で丁々発止の駆け引きをしながら、国家にとって必要な事項を決定していく。議会は、そのような人間関係を軸に何世代にも渡って運営されてきた。その歴史は、いくらリモートの技術が進んでも、ないがしろにできないものなのだ。
オンライン参加で型通りの議論だけすれば国会が運営できるなら、議員はもうチャットGPTでいい。だが、人間が運営する議会制度には、それなりの暗黙知が埋め込まれている。そのことが確認できるなら、ガーシー氏の処遇をめぐる世論の大騒ぎにも、多少の意味はあったということになるだろう__
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『表現者クライテリオン2023年5月号』巻頭コラム「鳥兜」より
本誌では岸田首相の徹底批判を通じて、我が国の人民の”依存症”を見つめる特集を掲載。是非、お手にお取りください!
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