本日は4月16日発売の最新刊、
『表現者クライテリオン2025年5月号 [特集]石破茂という恥辱ー日本的”小児病”の研究』から特集座談会をお送りします。
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藤井▼現在、トランプ政権誕生に象徴されるように世界史的に大きな転換点が迫りくる中、「日本丸」の船長(総理大臣)である石破茂に対してはさまざまな批判が寄せられています。彼は今、今まで言ってきたことを全て反故にして、財務省や中国共産党、アメリカ等々、「権力を動かす『権力』」あるいは「日本版ディープステート」の言いなりになっている状況です。
ウクライナ戦争を皮切りにNATOがなくなった場合の議論も俄に真剣になされ始め、ヨーロッパはアメリカ抜きの安全保障体制を議論する場を作り、マクロン大統領は自国の核を集団安全保障体制のための欧州全体における核の傘として活用する準備があるという議論をしています。自分で自分の身を守るための議論を始めつつ、アメリカがヨーロッパから手を引かないような交渉を始めている状況にあります。
ヨーロッパはそうした「大人」の外交を展開しているわけですが、片や石破総理は、欧州と同様にトランプによって日米安保体制がほころび始めているにもかかわらず、そうした「大人」の安全保障体制の議論を始める気配は一切ありません。それどころか、国会で少数与党として予算をどうするのかということに汲々としており、驚くべきことに衆議院で通った予算案を参議院が始まった三日目に反故にして修正するという憲政史上初めての異例の事態が進行しています。
なぜそうなったのかと言うと、参議院議員たちには次の選挙で負けると大変だという空気が濃密にあり、その空気に飲まれる格好で参議院の選挙に勝つためにはこの修正に応じたほうがいいという判断になったからですが、周りの大人たちの圧力に流されるままに振る舞い続けるこうした対応はまさに、「日本的小児病」の症例そのものです。普段の言葉の使い方や振る舞いも含めて考えれば、彼は「大きな子供」と言わざるを得ぬ存在です。
二十世紀の歴史学者であるホイジンガは、社会は前近代までは大人を中心に作られていたが、近代になって急速に大人たちが幼児化していると論じ、その現象を文化的小児病(ピュエリリズム)と名付けました。それから時代がずっと流れてきた今、小児病の最先端の国として日本があり、その行き着く果てに誕生したのが石破茂という政治家だという次第です。そういう人物が「日本丸」の船長(総理大臣)という最も「大人」でなければならない立場にいるという現状を描写することを通して、文化的小児病に冒された現下の日本の現状を明晰に把握した上で、いかにしてこの「小児病国家日本」を立て直し、「大人」の国家として再生させることができるかを考えたい、というのが今回の特集の趣旨です。
以上が全体のイントロですが、まずは柴山さんからご発言をお願いします。
柴山▼トランプの再登場で世界は目に見えて変わってきましたが、変化はその前から起き始めていました。ごく簡単に言えば、戦後アメリカの覇権の下に構築されてきたリベラルな国際秩序は崩れ始めていたわけです。トランプは最後のひと押しをしていると理解すべきであって、本当はもっと前から日本はこうなることを想定して、準備しておかなければいけなかったんです。
ウクライナ戦争について言うと、欧州の頭越しにアメリカとロシアが和平交渉を進めているので、欧州諸国はかなり挑発されているように感じているでしょう。「お前らは口を出すな」と言われているようなものですから、屈辱以外の何物でもないわけです。三月のドイツの選挙でもAfD(ドイツのための選択肢)への支持を表明して露骨な内政干渉を行ったり、付加価値税の高い欧州地域を念頭に相互関税を課すと言ってみたり、トランプ政権は欧州にかなり挑発的ですね。
トランプは中国に厳しく当たるのかと思いきや、少なくとも今の段階では米欧の亀裂を意図的に作り出そうとしているように見えます。この挑発にEUは即座に反応して、軍事投資を百数十兆円もやるとか、マクロンがド・ゴール以来の国是を変えてまで核の傘を提供すると言い始めている。ドイツも、厳しい財政規律を課す憲法を変えて、国防費の大幅増額に方針転換しました。アメリカに喧嘩を売られたことで、欧州各国の対抗心に火がついたわけです。
アメリカに軍事的にも経済的にも深く依存しているカナダやメキシコでさえ、トランプ関税への対抗関税を打ち出している。これが普通の国家の反応というものです。その上でお互い対等な交渉に臨もうとするわけですが、石破総理はアメリカを怒らせないことしか考えていないように見えます。トランプとの会談は、本当に屈辱的でした。トランプの機嫌を損ねないように汲々として、百兆円規模の投資の約束などのお土産を持っていっただけですから。おまけに名前は覚えないし、最後は握手もなく追い返される。これ以上の外交的な恥辱はない。
あの会談は欧州諸国に対し、「日本みたいに揉み手で来たらなでなでしてやるよ」と見せつける意図があったんじゃないですか。そういう誇示に使われているだけなのに、石破は「話が合った」と喜んでいる。このずれ方は致命的です。
藤井▼メディアも「よくやった」という反応でしたよね。
柴山▼そこが問題で、会談は成功だったとメディアが報じて支持率が上がったんですよ。日本人は客観的に物事を見ることができなくなっているのではないか。
そもそも石破が実現したい安全保障政策は、東アジア版NATOでした。日本は軍事的にアメリカを動かす要素を一切持っていないのに、「お父さんの軍事力を使えば僕たちは安全だ」と言っているようなもので、本当に子供っぽい。そんな人物が、安全保障問題に一家言ある政治家と言われている。戦後、一人前の主権国家として外交をやってこなかったことのツケが恐ろしいことになっていると感じます。
藤井▼まずはそういう現状を認識するのが日本再生の第一歩になるということですね。浜崎さんはいかがですか。
浜崎▼まず、この世界史的な大転換に際して、「石破茂」という幼稚な人間を首相に選んでしまっている日本という国に絶望してしまいますが、自己と他者との関係を自覚し、それを調整する力を持つ人間のことを「大人」だと言うのだとしたら、石破氏は全く「大人」ではありません。
たとえば、石破氏はこういうことを言っています。「普通の大臣の何倍もしんどい。なんせしんどい……新聞読んだら誰も褒めてくれないし、ネット見たら何だか本当、悲しくなるし。寝る時間はほとんどないし……」と。そうぼやくなら辞めればいいだけなのですが、続けて、こうも言うのです、「できるだけ首相は続けたほうが国家のためになる場合が多い。しょっちゅう代わることがあってはならない……みんなで選んだ首相であれば、それぞれがどれだけ首相の負担を減らせるかを考えることは大事だ」(二〇二四年十二月二十七日の講演会)と。
思わず笑うしかありませんが、要するに「もっと、俺を甘やかしてくれ!」と言っているわけです(笑)。ハッキリ申し上げて、ここまで酷い首相を見たことがありません。で、この「酷さ」の由って来るところを見極めるべく、今回、私は、石破氏が首相になる直前に出した著書『保守政治家 石破茂──わが政策、わが天命』(講談社)を読んできたんです。
柴山▼そのタイトルをつけられるのは凄い(笑)。
浜崎▼「保守政治家」って、ホント泣きたくなりますよ(笑)。
で、本を読んだ感想を言うと、驚くべきなのは、そこには「決断」の一切が不在だということなんですね。彼は、常に何かの「流れ」に乗っているだけで、その「流れ」が自分にとって都合が悪くなるとヘソを曲げ、都合がよくなるとはしゃぎ出す、ただそれだけなんです。
たとえば、第三章「わが来歴──政治家以前」の冒頭が凄い。「人間というものはその出自、家庭、育ち方、進学、結婚という周辺環境によって、大きな影響を受けるものである」と言いながら、その直後に「しぶしぶながら〔人生を振り返れという編集者の〕ご指示に従いたいと思います」と書くのです。つまり、自分は、編集者が用意した「流れ」に乗っているだけで、別に回想文を書く責任は自分にはないということを暗に示しているわけです。
で、彼の履歴の全てが「流れ」として示される。
たとえば、鳥取から東京の慶應高校に来た時には、周りがシティボーイばかりで肌に合わず、高校を辞めて鳥取に帰りたかったとまで書かれるのに、ものの三カ月くらいで、「違和感なく溶け込んだ」と言うのです。じゃあ、最初の違和感は何だったのか。
その後も、彼に「決断」と、それに伴う「葛藤」が訪れることはありません。慶應大学に進学し、法曹の道や学者の道も考えるんですが、できない理由を見つけるとあっさりと断念する。それで就職は、鉄道好きを活かして国鉄に入ろうとするんですが、政治家の父親から「あれはもうすぐ潰れるんだ」と言われると、何の抵抗もなく諦める。それで全日空に行こうとするんですが、これも父親の「お前は田中先生にご迷惑をかけた会社に入るのか」の一言で諦めてしまい、それならと、朝日新聞とNHKを考えるんですが、これも、やはり父親の「人の批判ばかりして飯を食うのは俺は許さん」の一言であっさりと諦めてしまう。
つまり、石破氏には、その人格形成において、、、、続きは本誌にて…
<編集部よりお知らせ>
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第一回特別ゲストとして高市早苗議員をお呼びすることとなりました!
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