【山上信吾】総理の品格ー石破茂はなぜ日本国代表者として相応しくないのか

啓文社(編集用)

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国際場裡で礼儀作法をわきまえぬ人物が首相の任にあること、
それ自体が日本の国益を損なう。

 石破総理の振る舞いを巡る批判が絶えない。
 首相就任直後は、「アジア版NATO創設」や「日米地位協定の見直し・改定」など、自民党総裁選の最中に打ち出した外交・安全保障政策の目玉に対する手厳しい批判が中心だったが、総理就任直後の南米でのAPEC首脳会合出席を皮切りに、国際場裡での立ち居振る舞いや所作に火種が広がってきた。
 外交の現場に四十年もの長きにわたり籍を置き、何人もの総理大臣に接してきたが、率直に言って支え甲斐があった総理は二人しかいなかった。中曽根康弘と安倍晋三だ。確固とした歴史観、国家観を有し、外国の首脳に対峙して位負けすることがなかったことが大きい。それだけでなく、背筋を伸ばし、相手の目を見て理路整然と話す姿に凛としたオーラを感じ、日本の代表として誇らしく思えたものだ。そんな二人とは、石破茂は比べようもない。むしろ、鳩山由紀夫や菅直人と同じカテゴリーに分類・整理されるのがふさわしいように思える。何十年か経って歴史家が評価を下す際にも、おそらくは同様の評価がなされるのではないだろうか?
 こうした指摘をするたびに石破支持派からは感情的なまでの反発が寄せられる。
 「外見だけを過度に重視する『ルッキズム』だ」といった批判などが典型だ。こうした論者の思いが至らない点は、上に載っている石破茂は、市井の一市民ではないことだ。総理大臣たる者、対外的に日本国を代表するのだ。
 そうした観点から、外交の場での石破総理の行動を見ていて外交専門家として気づいた点を以下に整理してみたい。

プロトコル・オーダーの無視

 第一に指摘すべきこととして、国際場裡で如何に振る舞うべきかについて、なぜあれほどまでに無知で常識が欠如しているのだろうか?
 昨年十一月のAPEC首脳会合を思い出してほしい。
 カナダのトルドー首相その他の首脳が、会議場で自席に着いていた石破総理に次々に挨拶に来てくれたのは嬉しい展開だ。だが、相手側は立っているのに、日本の総理は椅子に座ったままで握手した。これはアウトだ。
 外交の世界には、プロトコル(儀典)・オーダーというルールがある。各国の元首級のリーダーが居並ぶ場合、着任年月が古い者が上位に立つ。すなわち、米国大統領や中国国家元首であっても、常に上席を占めるわけではない。古くから就任している小国の首脳より下位に置かれることはたびたびだ。主権国家の平等を旨とする国際社会の知恵でもある。大国面をしない日本こそ敏感であるべき問題だ。
 総理大臣に就任したばかりの石破茂は新参者の一人。オーダー上は最下位に近い位置づけ。そんな人間が名だたる先輩首脳が挨拶に来てくれているのに、なぜ座ったままでいられるのか? そもそも、プロトコル・オーダーなど知らずとも、先輩が自席にまで挨拶に来てくれたのなら、立ち上がって礼を尽くして対応するのが人の道。自民党の会合でも同じだろう。
 もっと気になったのは、マルチ(多数国間)の国際会議が始まる前に自席でスマホをいじり書類をのぞき込むだけで、他国の首脳と積極的に交わろうとしない孤独で寂しい姿だった。国際会議は国益と国益がぶつかり合う真剣勝負。会議が始まる前には、他国の出席者に誼を通じて情報交換に努めるだけでなく、日本にとって大事な問題につき日本の立場を説明して支持を頼んでおくのは常道だ。
 かつて防衛大臣を務め、何度も国際会議に出ていた石破総理が知らないはずはない。SNS上では、「なぜ外務官僚が『ご起立を』と進言しなかったのか」という指摘が散見されるが、そんな基本さえわきまえていない人物が首相の任にある不幸こそ、嘆くべきだ。
 そもそも、あのような場面で「ご起立を」などと口走ったら相手国の首脳やお付きの役人にも聞こえてしまう。恥の上塗りとはこのことだ。
 こうした問題を指摘された時の石破総理の当初の反応も見苦しかった。素直に反省すればよいものを、「外交マナーとはそんなものですか?」と反問する姿勢。いただけない。

所作の無愛想

 第二に挙げるべきは、愛嬌に欠け、非礼と捉えられても仕方がない程の不愛想ぶりを時に垣間見せてしまう点だ。
 本年二月にワシントンで日米首脳会談ができたのは良かった。だが、到着時のアンドリュース空軍基地で政府専用機のタラップを降りる際、左手をコートのポケットに突っこんだままにしたのはどうしたことか!
 ホワイトハウスでのトランプ大統領との首脳会談冒頭部分(マスコミ取材へ開放された場面)での所作も問題だ。スーツの上着のボタンも外すこともなく堅苦しくソファーに深く腰掛けたままの姿勢がまずかった。ボタンを外して、ソファーに浅く腰掛けたトランプとは好対照だった。そのためか、椅子のひじ掛けに肘をついたまま握手する羽目となり、尊大に見えてしまう座り方、固すぎる表情と相まって、緊密な日米同盟を演出するには到底ふさわしくない絵柄になってしまった。おそらく初めての日米首脳会談で相手がトランプということで、緊張の余りガードが固くな
り、柔和な表情ができなかったのだろう。だが、繰り返すが、日本国を代表する立場にある総理大臣だ。
 世界標準の広報コンサルタントが付いていたなら、頭を抱えていただろう。議論に没頭する際の白目剝きと合わせ、親しみやすい愛嬌を生み出せていない。修養を重ねる必要は明白だ。

「人に見られている」意識の欠如

 第三に指摘すべきは、、、、続きは本誌にて…


<編集部よりお知らせ>

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