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消費税と在日米軍

三幣順一(設計事務所主宰、50歳、千葉県)

 

現在、米トランプ政権とチャイナの貿易戦争が騒がしいが、注目に値するのは米中の経済が、それぞれ好調な点である。外需を期待するグローバルな自由経済から、内需中心の国民経済に移行するプロセスが、貿易戦争を介して急速に変化する様は、かつての東西冷戦を想起させ興味深い。
その一方で、移民と消費税を倍増させ、時代遅れのTPPなどの自由貿易に突き進む日本の現状には呆れ果てるばかりだが、北朝鮮状勢など鑑みると自主独立どころか対米従属が強まり戦後レジームが強化されているように見える。

日本が高度経済成長を達成したのは東西冷戦時代だが、日本の言論界の状況は当時のままだ。例えば、事実上の占領軍として日本に駐留を続ける在日米軍に対しては、自国の防衛力を充実させて全面撤退とするのが、正論だと思うのだが、左派は、米軍基地に反対しつつも防衛力の充実には反対で、右派は、米軍基地に賛成しながら防衛力の充実にも賛成と、捻れが発生している。故に、沖縄の政治状況が典型だが、基地反対勢力と、防衛力充実勢力が、反目する結果、益々、米軍基地は固定化し、自主独立も遠のいている。

常識的な判断は、こうだろう。先ず十年ほどの期間を想定し、防衛力をNATO加盟国の目標値であるGDP2%以上に倍増させる。具体的に増強する軍事力は、現在の在日米軍と同程度とする。日本に配備される戦力は最前線と想定すると、実際の軍事力は後方部隊も合わせて、在日米軍の倍程度となるだろう。正規空母は2隻、多目的空母2隻、イージス艦は十数隻、沖縄の海兵隊に相当する戦力も必要だろう。これは対外的にも軍備増強による政治的緊張を強めない、あるいは口実を与えないメリットがある。いわゆる米軍に対する「思いやり予算」は中止し、自衛隊員に対する「思いやり」が必要だし、兵器の国産化や、独自の核抑止力についても検討を進めるのは言うまでもない。地位協定は見直すべきだが、日米安保を破棄し、米軍基地のない対等な日米同盟を構築する方が早いだろう。これは日米同盟の日英同盟化と呼べばイメージしやすい。

しかし、ここで必ず出て来る問題が財源についてである。防衛費を倍増する財政的な余裕は無いだろうとの話である。自国通貨建ての国債は、中央銀行が買い入れれば(つまり現在の日銀の金融緩和だが)事実上借金が帳消しになるのだが、多くの国民は、政府が通貨発行権を行使することを善しとしない。なぜなら政府自らが財政危機を煽り、消費税を増税し続けたからだ。自然災害が頻発し防災対策が待った無しなのに国土強靭化が進まない理由も同じである。この世論をひっくり返す方法は無いのかと思うが、唯一の実践が消費税の廃止ではないだろうか?

消費税の税収は地方消費税を合わせると、22兆円程度と考えられ、これをゼロにすると22兆円もの超大型景気対策となる。財政出動の負の側面はインフレだが、8%も物価が下がるのだから、景気対策の副作用で仮に10%程度のインフレになっても、2%程度のマイルドなインフレに収まり良いことばかりだ。外国人観光客のインバウンドが脚光を浴びるが、消費税が免税と称してゼロなのが原因だろう。経済活動そのものである付加価値に対する罰則としての消費税、輸出企業への補助金として発明された消費税など、消費税のマイナス面を指摘したら際限がないが、消費税廃止こそが、20年続く需要不足によえるデフレから日本が脱せされる唯一の方法なのは明白で、緊縮財政のプロパガンダに慣らされた日本国民も、消費税廃止の暁には、日本に財政危機など存在しないと身をもって気付くだろう。

しかし、消費税廃止や在日米軍撤退などの政策を政治家が、突如語るなど夢物語で有り得ない話だ。ケインズが語った如く、政治家の言葉など、かつて思想家が語った言葉のコピーに過ぎない。お利口さんの綺麗事など現代の言論活動では全く無意味である。消費税と在日米軍をゼロにするという骨太の言論こそが、平成の30年で、ひたすら衰退の道を歩んだ日本に求められる言論人による情報発信であると強く確信している。