本誌先月号で「平成天譴論」と銘打った座談会で浜崎洋介氏が口にした「パブリック
なきプライベート」の言葉自体も勿論のこと、その要因が気になった。“東京人は「何
で俺たちの税金で地方に補助金が出されるんだ」と文句を言い、地方は「何で俺たち
が原子力発電所を引き受けなければいけないんだ」と憤る”これが「パブリックなき
プライベート」の典型だということは間違いない一方、どちらにも言い分があり決し
て理不尽な主張というわけでもない。例えば「原子力発電所」をそのまま「基地」や
他の言葉に言い換えても全く違和感もなく普遍的になってしまうからだ。あえて言え
ば「出入国管理法完成案」問題に置き換えることだってできる。なるほどパブリックと
プライベートの並立が必須ということは絶対善なのだろう。が、それを絶対善という
者は一度としてパブリックを避けたことはないのか?
座談会の主旨と脱線し余談になるかもしれないが、一票の格差問題における都市と
農村の利害対立の発展も「パブリックなきプライベート」の要因の一つだ。具体的に
言えば「一票の格差」を縮める目的で47都道府県ごとに分かれていた選挙区の
「合区」を行っていることだ。人口の少ない県を合区される地方からすれば、「一票の
格差と言われても労働力を奪っているのは都市ではないか。議席まで奪うのか?」と
言いたいだろう(その反面、卒業後は就職で都市部に出ることになっている学生も
多いはずだ)。しかし実際の所都市在住者の方は、自分たちより地方在住者の意見が
反映されていると本気で思っている節もある。自分たちへの公共サービスは公共事
業より切実はないと思われているので都市内で恩恵を被っているのは組織票に関係
がある有権者たちだけだと思っているのだ。
これは単に日本国民に問題があるということではない。北欧のような大きな政府
(とはいうものの今やそれも崩壊しかかっている)を成立させるのは7千万の人口規模
が限度で、1億以上の列島では難しい。納税したところで実感の湧かない国民が多い
からだ。国土の割に人口規模と密度が高すぎて、どうしても全国民が納得できるよう
な行政にはならないし、それでなくても税金の使途が不透明すぎて国民の不信感が
募るのは当たり前の話だ。なので国民は議員定数削減に乗っかり、都市部は一票の
格差のためと合区を訴え、地方は都市の訴え(待機児童)に冷ややかな反応を見せ
る。東京では一票の格差故、落選の憂き目を見たある前参議院議員は憲政史上でも
初めて打ち立てたのは、落選議員の中で30万に近い多特票者という記録と、「表現
の自由を守る」という公約という称号だが、地方からすればそんな娯楽産業に切実さ
はないと言うだろう。
だから日本国民にパブリックがないと嘆いていても意味がない。いっそ定数削減は
あきらめて一票の格差を守る、つまり合区はやめて有権者数の多い都道府県選挙区
に定数を増加、または分句させたらどうか? いがみ合った結果、定数削減するより
ましだ。どうしても定数増加がいやで、合区を行わずに人口の多い選挙区に定数を
増加しないのはこれも不公平だ。これもいっそ合区を行わない代わりに、法の下の
平等への答えとしてアファーマティブアクションとして成立させたらどうか?その代わり
に他のアファーマティブアクションを認めてもらうのだ。クオーター制度は決して
理想的ではない。確かに公平ではなく法の下の平等ではないのかもしれないが
公平だからといって全く先入観なしで法の下の平等だけで公正が保てるとは思え
ない。
下駄を履かせてもらう人がいるからあえて公正を保つために使う制度だ。その枠に
入る人たちだって本当は不本意だ。誰だって「ハンディをやるよ」と言われたくはな
い。あえて言うと合区を行わないことだってそのようなものだ。
以上が、「パブリックなきプライベート」が「パブリックのあるプライベート」に生ま
れ変わる拙案である。
林文寿(岐阜支部)
2024.10.15
御子柴晃生(農家・信州支部)
2024.10.15
吉田真澄(東京支部)
2024.10.15
羽田航(53歳・派遣・埼玉県)
2024.10.15
川北貴明(34才・芸術家・大阪府)
2024.10.15
九鬼うてな(17歳・生徒・京都府)
2024.10.15
近藤久一(62歳・自営業・大阪府)
2024.10.15
前田一樹(信州支部、39歳、公務員)
2024.07.25
奥野健三(大阪府)
2024.07.25
たか(千葉県、41歳、イラストレーター)
2024.07.25