改題第7号(通巻第85号) 読者からの手紙

安倍改憲案の「自衛隊明記」は違憲論争を招く

 安倍晋三総理大臣が、改憲集会に向けて2020年までの改憲を目指す意欲に変わ
りはないというメッセージを寄せた。しかし現実問題として2020年はおろか安倍
政権のうちの改憲も難しくなってしまった。国会での議論は全く進んでいない。野党
が改憲を前提とした議論には反対という姿勢を示しているのが大きな原因だが、それ
だけではないだろう。政権与党の公明党はともかく自民党も一体どれだけ改憲に前向
きなのか疑わしい。安保法案の例を出すまでもなく自民党あるいは安倍政権は憲法を
変える必要もなくその解釈を変えるだけで日本の安全保障を大きく変えることに成功
した。しかしこれだけ大きな政策の転換なのに憲法を変えずにできたという事は、憲
法とは一体何だろうかと思う。

 安倍総理は憲法9条に自衛隊を明記することを改憲の目玉としている。「違憲論争
に終止符を打つ」としているが、そもそも「違憲論争」などあったのだろうか。内閣
総理大臣の発言だから国会で「違憲論争」があったという意味だろうが、国会で自衛
隊が「違憲か合憲か」という論争があったと聞いてことがない。せいぜい野党の質問
に内閣法制局長官が「法律の解釈」をしただけではないのか。憲法9条に自衛隊を明
記すれば、反対する野党は9条そのものが死文化するという。しかし私は逆に1項、
2項を残したまま自衛隊を明記すれば自衛隊の活動が逆に2項に呪縛されてますます
「違憲」ではないかという批判が出てくるのではないかと思う。憲法に自衛隊を明記
するなら2項を削除してかなり詳しい自衛隊の役割について明記しなくてはいけな
い。

 かつて旧日本社会党を代表する野党は憲法第9条を「平和を守る」とか「戦争反
対」とかいう観念論だけで護符のようにまつり上げて手を触れていけないものとし
た。憲法ができた当初はそういう思想的な言葉が多く使われて観念的であっても仕方
がないが、70年もたてばそういうわけにもいかずもっと具体的な政策を書き込む必
要がある。野党の議論は憲法は政治の上にあるようなことを言っているが憲法といえ
ども現実の政治と無関係ではなく政治が大きく変われば憲法も現実を反映して具体的
な政策と無関係ではいられないのではないか。

 私は安倍総理の言う「違憲論争に終止符を打つ」ために憲法に自衛隊を明記すると
いう考えはかつての日本社会党などが主張した憲法にあるいは自衛隊に何か宗教的な
あるいは思想的な意味を持たせることと同じになってしまうのではないかと思う。自
衛隊は憲法に明記されただけで何をしていいのか悪いのかますますわからなくなって
しまいかつて国会で起きなかった「違憲論争」が自衛隊の活動のたびに起きることに
なるのではないか。

 私は自衛隊を憲法に明記するということではなく、具体的に自衛だけでなくいざと
なれば他国との交戦権さえ認めると書くべきであろう。明記だけされて2項で手足を
縛られた自衛官は本当に命さえ危なくなってしまう。憲法に自衛隊を明記するという
宗教的な意味合いしかないごまかしでこれを改憲というのは無理がある。他の条文が
どれだけ改正されても、9条については自衛隊を明記するだけだったらそれは改憲で
はなく実質上の憲法解釈の変更と同じではないか。安倍総理の自衛隊に対する思い入
れはどうでもいい。自衛隊とは何か、国を守るという事はどういうことかを憲法に明
記してもらいたい。

投稿者 : 

  • 二宮力(会社員、愛知県、57歳)

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