こんにちは、表現者クライテリオン編集長、京都大学の藤井聡です。
最近のニュースを見ていますと、
北朝鮮が核実験場を廃棄を決定するなど、
6月の米朝首脳会談に向けた「和平」「休戦」の流れが
大きく報道されています。
一方で、米英仏の連合軍のシリアへのミサイル攻撃も大きく報じられています。
こうして今、世界は大きく動き始めていますが、
これらの背後にはともに、ロシアや中国等の大国の思惑があることは、
忘れてはなりません。
中国は(そして中国のみならず最近ではロシアもまた)、
「隣国」北朝鮮の体制を持続させ、
上手に「てなずける」ことを通して、
北朝鮮という一つの国を、
対立しているアメリカに対する「盾」あるいは「番犬」
にしようと、考えています
同時にロシアは、アサド政権を支援することを通して、
中東における「ロシア基地」としてのシリアを支え、
中東での覇権の拡大を図ろうとしています。
しかも、シリアは「ロシアと地中海を結ぶ航路の途上」にあることから、
ここを通して、地中海への勢力拡大の足場にしようと画策しています。
つまり彼らは、「国益」の拡充のために、
大量殺戮兵器である「核」を保有する北朝鮮を支援し、
トンデモなく非人道的な「化学兵器」を使うアサド政権を支援しているわけです。
さらにロシアは今、
中国と周辺諸国との対立が深刻化している、
南シナ海の覇権争いにまで乱入しようとしています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9897.php
まだ、中国がこの動きにどのように対応するかは見えていませんが、
思惑の一致が見られれば即座に、
南シナ海で中露が連携していくこととなるでしょう。
・・・
こう考えますと、中東、朝鮮半島、南シナ海といった、
これまで「世界の超大国アメリカ」が大きな影響力を誇っていた地域に、
軒並み、ロシアや中国が介入し始めている様子が浮かび上がります。
こうした動きは、次のような大きな流れの中のものです。
1)
かつて世界は、
アメリカのパワーを源泉としてつくられた体制の下で、
一定、安定していた。
2)
しかし、アメリカの相対的国力が陰りを見せると同時に、
国内世論が遠い外国への介入を嫌いはじめたことから、
世界各地からアメリカが撤退しはじめました。
3)
そうしてできあがった覇権の隙間に、ロシアや中国が、
それぞれの地域の「権威主義国家」(シリアや北朝鮮等)と協調しながら、
介入しはじめた。
なお、この流れにおける「アメリカ」と同じ様な立ち位置に
(少々小さなスケールにて)欧州もいます。
・・・
こうしたアメリカ、欧州等の
「自由民主主義」国家の衰退、
ロシア、中国等の
「権威主義」国家の台頭
という大きな流れは、今後も変わっていくことなく、
むしろ加速していくものと思われます。
なぜこんな流れになったのかと言えば・・・
第一に、「自由民主主義」国家の政府は、
「国内世論」や「経済界」の「顔色」を窺い続けないといけないし、
選挙に負ければ「クビ」になってしまう「不安定」な存在である一方、
「権威主義」国家の政府は、そんな心配はほとんど無く、
「じっくり」と長期的に外交・安全保障対策に専念できる。
第二に、
「自由民主主義」陣営が、
素晴らしいものだと礼賛し続けた「グローバリズム」のせいで、
貧しい国だったロシアや中国が息を吹き返し、経済成長し、
「自由民主主義」国家達を駆逐するだけの力を身につけてきた。
という背景があります。
・・・
さて、我が国は今、「自由民主主義」国家、という事になっていますが、
こんな状況の中で、どうすればいいのかというと・・・・
まずは何よりも、上記のような「現実」をしっかりと、
一人でも多くの国民が常識として認識することが大切だと考えます。
もちろんそれはとても難しいとは思いますが、
このまま世論が「幼稚」であり続ければ、
確実にそこから出てくるリーダーも「幼稚」になるでしょう。
そんな幼稚なリーダーなら、
プーチンや習近平に手の上で転がされて、
身ぐるみ剥がされ、メチャクチャにされて終わるだけ、です。
だからまずは、
「兎に角、どんな時でも、アメリカと共に歩みます!」
「自由民主主義の価値を、私達は、絶対に、守り続けます!」
「グローバリズムこそが、歴史の必然であります!」
・・・というような幼稚な事「ばかり」言っていても、
日本は何もよくならない、
ということは当然のこととして、ご認識いただきたいと思います。
その上で、
「現実のこの世界は、
各国間の押し合いへし合いの『パワーゲーム』が延々と続いている。
だから、『タテマエ』の理想をあまりに真に受けるとヤバイ。
重要なのは『パワーゲーム』を戦い続けること。
さもなければ、残念ながら、この世界で生き延びてはいけない。」
ということを肌感覚で認識いただきたいと思います。
ただし、一つ補足ですが・・・・
ここで重要なのは、一応『タテマエ』も大事だ、という一点。
例えば、大の大人が、
「フェイクOK! セクハラOK! 弾圧OK! 政治家の暴言最高!!」
なんてことを恥も外聞も無く公言し続けてると、
こいつアホかと軽蔑され、
政治的な影響力(いわゆるソフトパワー)もががた落ちになるのがオチ。
何と言っても、ロシアや中国や北朝鮮だって、
そんな事は全く「公言」してませんからねw
・・・・ということでまた、来週!
追伸:
外交で大切なのは「ホンネ」と「タテマエ」のバランス。でもそのバランスを崩して、タテマエを真に受けて制度を作っちゃう馬鹿なインテリが世界に蔓延、結果、世界は大混乱・・・そのあたり、「週刊ラジオ表現者」でお話しています。是非、お聴き下さい!
https://www.youtube.com/watch?time_continue=121&v=T8xJWNZubv8
(YouTubeの「チャンネル登録」もよろしく御願いします!)。
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