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【施光恒】園芸文化と日本人

施光恒

施光恒 (九州大学大学院教授)

『表現者クライテリオン』の執筆者の一人、施 光恒(せ・てるひさ)です。

今回からときどき(月一回程度)、表現者メルマガに寄稿させていただきます。
 
私事で恐縮ですが、メルマガというと私は、経済評論家の三橋貴明さんが主宰している『「新」経世済民新聞』にも、もう足掛け6年ほど書いています(最近、原稿が間に合わず、休載してしまうこともよくあるのですが…f(^_^;))

そちらからこちらに移籍するとかそういうことではなく、どちらも書くつもりです。
どうぞよろしくお願いいたします。

今日は、少し私の連載記事の話を。

『表現者クライテリオン』では、私は「やわらか日本文化論」という連載を持っています。連載の趣旨としては、タイトルに表れている通り、やわらかくというか気楽にというか、そういう肩ひじ張らないかたちで日本文化の普段あまり気にとめない側面を論じるというものです。

『表現者クライテリオン』は「保守思想誌」です。

最近はだいぶ薄まってきて来ますが、以前は、「保守」「保守主義」に対して一般の人々が抱くイメージは、「守旧派で頑固」「戦前回帰」「ナショナリストっぽくて怖い」などというものが多かったように思います。

最近では、「保守」のイメージがかなり改善し、逆にプラスのイメージが付与されることも少なくありません。枝野幸男氏や蓮舫氏といったリベラル派(左派)の政治家でさえ、「自分たちは保守だ」という趣旨の発言をしばしばするくらいですし。

ですが、やはり今でも、一般的イメージとしては、「保守」というと「頭が固い」とか(悪い意味で)「国士的」で大上段に振りかぶった「上から目線」の議論をして「暑苦しい」というようなものも根強いようです。

「やわらか日本文化論」という私の連載では、こうした「保守」の負の一般的イメージを少しでも変えられればいいなと考えています。

本来、政治思想的な意味での「保守」は、人間の理性や知性の限界を強く意識し、頭でっかちのさかしらな議論を嫌うものです。

そして、個人の机上の、ときに原理主義に陥りやすい知的思考よりも、何世代にもわたる人々の行為の蓄積としての共同体の慣習や生活習慣や伝統的知恵、日常感覚や日常の倫理観のほうを相対的に信頼します。

ですので、日本の場合は当然ながら、日本の慣習や生活習慣、日常感覚、倫理観といったものを基本的に信頼できなければ、保守の考え方は広まりません。

ですが、こうした「日本的なもの」に対する一般の人々のイメージ、必ずしも良くありませんよね。特に、政治や組織、人間関係が関わるような問題についてはその傾向が強いようです。

たとえば、最近、大騒動になっている例の日大アメフト部の反則行為について、日本のメディアが、米ニューヨーク・タイムズ紙の報道を受けるかたちで次のような記事をあげていました。

「日大アメフト問題を米紙も報道…権力者への従順が評価される日本の特殊性伝える」(『スポーツ報知』2018年5月24日配信)
http://www.hochi.co.jp/sports/ballsports/20180524-OHT1T50038.html

「悪質タックル問題を大きく掲載=ニューヨーク・タイムズ紙」(『時事通信』2018年5月24日配信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052400337&g=spo

後者の時事の記事中には、今回の騒動の発端は「日本で『パワハラ』と呼ばれる行為で、文化的な問題として全国的な問題となっている」とあります。

この『スポーツ報知』の記事が扱っている米紙(『ニューヨークタイムズ』)の記事も目を通してみました。
https://www.nytimes.com/2018/05/22/sports/football/japanese-football.html

それほど、声高に日本のスポーツ文化を批判している印象のものではないものの、たしかに報知や時事が伝えているような記述もあります。

少し前にも、女子レスリングや相撲部屋の問題が大きな話題となっていました。こういう報道が続くと、日本人自身が抱く日本の組織、あるいは文化一般に対するイメージが悪化してしまうのではないかと思います。「日本の組織は本来、権威主義的であり、上意下達が絶対的な規範だ」などというものです。

このような日本の組織や文化の見方は非常に一面的ですし、ほとんどの日本人はそれをわかっています。ただ、どうもこういう負の面ばかりをマスコミはクローズアップし、報じる傾向があります。日本人は、反省好きですから、日本の組織や文化は基本的に改革・改造しなければならないものだと考えてしまうのではないかと少々心配になります。

私の連載では、ゆるく、肩ひじ張らずに、日本文化のさまざまな側面を見ていきます。そして、「なるほどそういう面もあったか。日本人も捨てたものではないな」と読者の方々に思っていただけるようなものを目指ししたいと考えています。

しばらくは、(最近、園芸に凝っている私の趣味も兼ねて)「園芸と日本人」というテーマで書くつもりです。園芸、あるいは人と植物との関りという観点から日本文化を見つめたいと思います。お付き合いくだされば幸いです。

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