本日は、『表現者クライテリオン2021年1月号』より、メルマガ読者の皆様に巻頭コラム【鳥兜】を公開します。
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以下、巻頭コラム鳥兜「領土を奪われる幼児国家日本」
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十一月二十四日、訪日していた中国の王毅外相が日中外相会談後に、日本の茂木外相と同席した記者会見で「一部の真相が分かっていない日本漁船が釣魚島(魚釣島の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生しており、中国側としてはやむを得ず、非常的な反応をしなければならない……引き続き自国の主権を守っていく」と発言した。これは要するに、尖閣は我が国の領土である、お前達が領海に侵入すれば武力をもって排除するぞ、と日本を恫喝したのである。
言うまでもなく、我が国はこうした発言を即刻否定し、その発言を取り下げないのならば友好的な外交交渉は全て打ち切り、即刻帰国せよと言わねばならなかった。さもなければ、日本が中国側の尖閣は中国領だという主張を是認した事になるからだ。
しかし誠に驚くべき事に茂木外相はこの発言に抗議一つせずに会見を終了した。しかも茂木外相は、自ら冒頭で述べたこの日中外相会談は有意義で喜ばしいものであったという感想を今もなお取り下げてもいない。そして菅総理はそうした茂木外相を更迭しようとする動き一つ見せていない。
我が国はもちろん尖閣は日本固有の領土であり、その領土を中国が侵略しようとしている、という認識に立っている。しかし今や中国もまた同じ事を主張しているのだ。中国の国防白書の中には、尖閣が中国領土であり国防の対象である旨が明記されている。つまり今回の王毅発言は、中国側の「教科書的」な公式見解に過ぎぬものなのだ。
だからもはや今、尖閣を巡って、必ずしも我が国が中国よりも優位に立っている、というわけではないのだ。尖閣に日本側の駐在者も施設も存在しておらず、その領土の実効支配は完遂していない。せいぜい領海を海上保安庁が警備しているに過ぎぬ状態だが、その優位性すら、昨今の中国船の激しい領海侵入を通して失われつつある。しかも中国はこの度、海上警備での武器使用を認める法整備に着手すらしている。つまり今や尖閣を巡る日中の立場は、日本優位から中国優位へと逆転しつつあるのだ。
これはもはや重火器を使わぬ「準戦争」状態だ。
そんな中で日本国内で行われたのがこの度の日中外相会談だったのだ。だからこそ中国は尖閣が今や準戦争状態であることを前提に会談に臨み、あの発言に至ったのである。一方で日本側はそうした認識を一切持たず、ただただ友好的な日中関係を取り結ぼうとしたのである。
そもそも日本は、TPPやRCEPを始めとした貿易交渉から尖閣問題に至るまでのあらゆる外交交渉において、外交関係を取り結ぶことそれ自身が国益であり「その交渉内容は問わない」という恐るべき態度をとり続けている。茂木外相にしても菅総理にしても、大国中国と事を構える気など端からない。ただただビジネス交渉をしながら外交の真似事をして国内にアピールする程度のことしか考えてはいない。かくしてもはや我が国政府は中国に対して、馬鹿や阿呆といった生ぬるい言葉ですら足らぬほどの愚挙中の愚挙に出たのである。
本気で尖閣を取りに来ている大人の大国中国と、商売以外の事は何も分からない幼児国家日本──今回の外相会談が始まる前から今回の歴史的な外交的大敗は決定していたと言わねばなるまい。この状況を打開し、風前の灯火と化した日本領尖閣を守りきるには、菅内閣を象徴とする日本国家の今日の腐敗ぶりをしかと認識した上で、日本国民が日本国民として覚醒するという、文字通り絶望的に実現し難き希有なる事態を期待する他にもはや道などどこにもない。
(『表現者クライテリオン』2021年1月号より)
『表現者クライテリオン』2020年1月号
「菅義偉論 改革者か、破壊者か」
https://the-criterion.jp/backnumber/94_202101/
写真の出典は内閣官房ホームページhttps://www.cas.go.jp/jp/ryodo/senkaku/gallery/index.html#
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コメント
内容はまぁいいんですけど……。
このコメントみたいに、段落を買えるときには改行してください。
読みにくいので。