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【藤井聡】『プライマリーバランス亡国論』が、今、時代を変えつつある。この流れをこの<令和>において徹底加速しなければならない。

藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

『プライマリーバランス亡国論』が、今、時代を変えつつある。この流れをこの<令和>において徹底加速しなければならない。

この度「骨太の方針」が閣議決定されました。

この「骨太」の閣議決定については、2025年度PB黒字化目標」を残すのか、それとも凍結するのかを巡り、政府・与党において激しい論戦がありました。

骨太におけるPB規律を巡る論戦は、毎年繰り返されてきており、当方も、2012年に参与に着任して以来、毎年様々に拘わって参りましたが、今年ほどに激しい論戦はこれまで一度もありませんでした。それくらいに今年の論戦は激しいものだったのです。

これは偏に、プライマリーバランス規律こそが、我が国の弱体化を導く、最大の原因なのだ、という、いわゆる

「プライマリーバランス亡国論」

令和版:https://www.amazon.co.jp/dp/4594091806/

が、「自民党」内部において深く広く浸透したからに他なりません。

以下これを「PB亡国論」と記述しますが、これは、当方が安倍内閣の内閣官房参与の頃、2017年の5月、まさに、その「骨太の方針」の議論が喧しく与党政府、ならびにメディア上で盛んに繰り広げられていた頃に、同名図書を出版いたしたのが、その端緒となります。

この書籍の「PB亡国論」の基本コンセプトは極めてシンプルなもので、以下の様なものです。

PB規律=国債の削減・禁止の規律

 → 政府支出が不十分になる(&消費増税)

 → 経済が低迷

 → 財政が悪化

(→これがPB規律をさらに強化。

……後はこの悪夢のスパイラル・ループが繰り返される……)

要するに、PB規律があれば、延々と増税と緊縮が繰り返され、自動的に日本経済が低迷していく、という事を主張するのが「PB亡国論」です。

だから、PB規律を撤廃し、日本の為の財政政策を取り戻すべきだ、と主張するわけです。

当時、この論理に完全に賛同いただいていたのが、時の総理大臣である安倍晋三氏でした。

ですから、この「平成版」を出版する際、帯に推薦の言葉と、自らの写真を掲載することをご承諾いただき、「安倍晋三総理の主張としてPB亡国論がある」という実態を、参与の立場で内外に鮮明に宣言することとなったという次第です。

あれから5年……。

誠に皮肉にも、PB亡国論の議論があったにも拘わらず、安倍総理は民主党政権下で決定された「三党合意」を覆すことが出来ず、消費税は10%に増税され、PB亡国論の「悪夢のスパイラル」の針はさらに前に進む事になったわけです。

そして、総理の座は菅氏、そして今日の岸田氏へと引き継がれていきましたが、安倍晋三氏の支持を得たこのPB亡国論はその間、着実に、自由民主党の中で拡大していったのです。

まず、若手の議連として「責任ある積極財政を推進する議員連盟」(以下、積極財政推進議連、共同代表:中村裕之衆院議員、谷川とむ衆院議員、中西哲参院議員;城内実顧問)が設置され、(衆議院四期、参議院二期の)全対象国会議員186名の内89名が参加するに至っています。すなわちその参加率は実に48に至っているのです。

この積極財政推進議連の流れが誕生したのは、「PB亡国論」が提案された2017でした(当時は別名称)。言う迄もなく、当時の参加者は今日の89名という大勢力とは比ぶべくも無い、極めて限られた一握りの若手議員だけでした。

それは、5年前当時、与党において「PB亡国論」は極めてマイナーな存在であったことを反映するものです。

もちろん、時の総裁・安倍氏はPB亡国論の推奨者だったのですが、与党全体では、実は少数派だったのです。

しかし、時の「総裁」が積極財政派の「PB亡国論」者であったことが、与党内の空気を大きく転換させていく重要な転機となったのです。

つまり、当時の自民党で「積極財政」を論ずるのは、何やら極端で、言うなれば「カルト」的なイデオロギーとすらみなされがちなものであったのですが、安倍総理総裁が積極財政論者のPB亡国論者であるということで、積極財政論・PB亡国論に「市民権」が与えられる状況となったのです。

結果、若手が積極財政の議論の論陣に参画することのハードルが随分と下げられることになり、今日の若手の約半数が参画するに至ったのです。

これは、5年前を考えると、隔世の感を禁じ得ません。

かつては、与党議員たるもの「緊縮財政派」じゃないと恥ずかしい、「積極財政派」なんて、馬鹿丸出しだ、という空気があったのですが、今や、その空気は完全に「相対化」され、積極財政派にも十二分以上の「市民権」が与えられることになったのです。

そんな空気があったからこそ、積極財政を主張する高市早苗氏が昨年の総裁選で大きな支持を得ることになり、その帰結として、政調会長になる流れができたわけです。

そして、その高市政調会長の下に「財政政策検討本部」安倍晋三最高顧問、西田昌司本部長、城内実幹事長)が設置され、緊縮財政派の「財政健全化推進本部」(最高顧問、麻生太郎副総裁)と互角以上の政治勢力を、「積極財政派・PB亡国論派」が獲得することに成功したのです。

本年の骨太方針は、最終的には、「骨太方針2021に基づき経済・財政一体改革を着実に推進する」と記載されてしまい、PB規律が事実上残存することとなりましたが、それでも、このPB規律について

「状況に応じ必要な検証を行っていく」

「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」

という二つの文言が、「骨太」に明記されたことは極めて大きな進歩です。2012年以降、骨太におけるPB規律を巡る記述に拘わってきた当方としては、この「進歩の大きさ」がしみじみと理解できます。

自民党内の安倍氏、西田氏、城内氏、中村氏、谷川氏、中西氏らをはじめとした積極財政派の議員の皆様に心から深い感謝の念を表したいと思います。

もちろん、財務省、ならびに、その財務省の論調に同調する、現総裁の岸田氏や額賀氏、税調の宮沢氏等、自民党内には緊縮財政派の議員もまだまだ多数残存しています。そして、そうした緊縮財政派議員達と財務省は、若手議員の中にも着実に、緊縮財政の思想を広めていることも事実です。

そして、今の政府には、上記の骨太の「検証」や「選択肢を狭める」という文言を、徹底的に「無視」しようとしている態度があからさまにあることもまた事実です(例えば、松野官房長官は、今回の骨太の決定について、わざわざ「財政健全化に取り組む姿勢に変更ない」と言明しています)

https://jp.reuters.com/article/japan-honebuto-idJPKBN2NO0J7

ですが、繰り返しますが、かつては、緊縮財政派一色であった自民党内部が、「PB亡国論(平成版)」出版からの5年間で大きく転換(ピボット)し、積極派と緊縮派が「五分五分」の状況に至っているのが現実なのです。

今や勢いは、緊縮派ではなく、積極派にあります。

つまり、PB亡国論は、今や、与党を席巻する勢いを持つに至っているのです。

ついては、この勢いをさらに確実なものにすべく、この度、過去5年間の様々な状況変化、とりわけ、与党内の積極財政推進議連や財政政策検討本部での議論等の報告も含めて、抜本的に改定したPB亡国論として、

「<令和版>プライマリーバランス亡国論」

https://www.amazon.co.jp/dp/4594091806/

を、この度、出版する事とした次第です。

来月の参議院選挙の最重要論点とすべき、財政論、PB論について、深く、そして、適正に理解頂くためにも、是非とも、一人でも多くの国民にご一読いただきたいと思っております。

いずれにせよ、国の未来は、国民の手に、そして、認識に委ねられているのです。「正しき認識」が明るい未来を導くのです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

追伸:

骨太決定で展開された、積極財政派と緊縮派との闘争について更に詳しく下記にて解説しました。

『骨太決定「ホンマもんの話」:財務省はPB規律を死守、しかし「積極財政派」の勢いは今、過去最高に到達。国民が財務省に勝利するまであと一歩。」

https://foomii.com/00178/2022061222033995623

 

 

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