【葛城奈海】SDGsよりも「常若」を〈3〉

啓文社(編集用)

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皆さん、こんにちは。
『表現者クライテリオン』編集部です。

本日最終回、『表現者クライテリオン』最新号【特集論考】より葛城奈海『SDGsよりも「常若」を』を三回にわたって全文公開してきました!

この機会にぜひ、お読みください。

 

 

SDGsよりも「常若」を

一木一草に神を感じ、自然の恵みを活かす日本の文化こそ、真に持続可能な社会の実現に貢献できるのではないか。

葛城奈海

 

「海の鎮守の森」

 このように、自然の性質を見極め、活かし、無駄なく使うことで、はたまた何らかの原因で自然を損なってしまった場合には自ら軌道修正して日本人は持続可能な社会を受け継いできた。

 

 宗像国際環境会議も、そもそも玄界灘の海水温上昇によって沿岸に広がってしまった磯焼けやひっきりなしに流れつく漂着ゴミの問題を解決すべく、平成二十六年にスタートしたものだ。

近年の急激な海の変化への提言や情報を国内外に発信しつづけ、昨年で九回目を迎えた。登壇者は、地元漁協の組合長や海女から自治体の首長、研究者、メディア、企業関係者と多岐にわたる。

会議では変わりゆく海の実態が報告され、実状を改善し、子々孫々まで持続できる環境を残すためにはどうしたらよいかという多角的な議論が行われる。併せて、「Think globally, Act locally」(地球規模で考え、足元から行動する)を理念に、「海の鎮守の森」構想を掲げ、毎年、竹漁礁づくりや漂着ゴミ清掃といったフィールドワークも行っている。

 

 「鎮守の森」とは、寺社の周りに残る、神仏が宿る天然の森のこと。開発を免れた鎮守の森には、エアポケットのようにその土地固有の自然植生が残されている。その鎮守の森を見習って、磯焼けで海藻がなくなってしまった海の中にも、「海中の森」を復活させようとしているのだ。

地元の福岡県立水産高校の生徒の指導による竹漁礁づくりでは、増えすぎて森や里でやっかいものになっている竹を伐採して漁礁を作り、磯焼けで海藻がなくなった海に沈め、イカや魚を呼び戻す。

 

 かつては様々な用途で活用されていた竹だが、時代の流れとともに使われなくなり、竹林が放置された結果、我が物顔で竹が山に入り込むようになってしまった。読者のみなさんの身の回りにも、そのような光景があるのではないだろうか。

そんな竹が「森の人」や「里の人」を悩ませる一方、「海の人」は磯焼けに警鐘を鳴らす。双方の声を聞いてきた私からすると、竹漁礁づくりは、まさに陸と海の課題を同時に解決する一石二鳥の画期的な取り組みだった。

興味津々で参加し、竹と格闘しながら二時間ほど汗を流して完成した竹漁礁を見て思った。「私がイカだったら、ここに卵を産みたい!」。

 

 漁船で沖に運び、海中に投入。一週間後、水産高校の先生が潜ったら、早くも「マハタが居心地良さそうに群れていた」という。ささやかな取り組みかもしれない。

が、だからこそ、その気になれば、津々浦々で実践できる。こんな「小さくともきらりと光る地方発の取り組み」が全国に広がることを願ってやまない。

 

日本文化の使命

 こうした日本の文化・伝統の根底にあるのは、恵みを与えてくれる一木一草に神を感じ、感謝と畏敬の念を抱きながら付き合うという日本人の自然観ではないだろうか。日本人にとって、古来、自然そのものが八百万の神々が満ち満ちている場であり、人間もまたその一部であった。

 

 やはり宮大工の修行をした大工の親方・高橋義智氏から、問われたことがある。

 「柱という字は、木の主と書きますよね。木の主って、誰だかわかりますか?」

 

 咄嗟に応えに窮した私だったが、親方曰く、

 「木の主はねえ、神様なんですよ」。

 

 そう言われてなるほどと思ったのは、日本では神様を数えるときに「○柱」という。また亡くなった方を数えるときも、亡くなったら神になるということで、「○柱」という。

 

 平成二十九年七月に世界文化遺産になった「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群。

当初、日本が推薦していた構成資産の一部だけが登録を認められそうになったが、宗像大社の葦津敬之宮司らが交渉に当たり、Spiritual(霊性)、Ecology(生態学)、Animism(精霊信仰)をキーワードに提議したところ、多様な文化文明を持つ参加二十一か国の代表から、すべての構成資産について登録の賛同を得たという。

いみじくも、頭文字を並べると『SEA』、ちょうど「海」になる。近代文明が軽視してきたもの、それでいて日本人が文化として大切に受け継いできたものの価値が今、世界から見直され始めている。

 

 SDGsは二〇一六年から二〇三〇年までの達成目標として位置づけられているが、常若は世界規模での共存共栄と、人と自然の営みを大切にする思想と行動の連続の重要性を説いている。

当然ながら、その営みに、時期的目標などは存在しない。ある時期までにある行動、状態が実現すればよいという短期的視野に基づく発想自体が常若とは相いれない思想ではないだろうか。

 

 持続可能な地球環境を本気で目指すのなら、SDGsなどという降って湧いたような浅薄な概念に飛びつくのではなく、日本人がそもそも受け継いでいる古来の価値観、自然観を見直し、取り戻し、そして、それを世界に発信することにこそ傾注すべきではないか。

日本の文化伝統には、それだけの底力がある。それこそ、世界を持続可能、つまり常若な世へと導く鍵になると私は確信している。

 

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