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【藤井聡】「大阪維新」が主導するゴミの島·夢洲での大阪万博/IR計画には当初から無理あり。延期/規模縮小·閑古鳥等で「大混乱」は必至の状況(前編)

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

コメント : 1件

こんにちは。京都大学の藤井聡です。

2025年春開催予定の大阪万博。IR/カジノ構想も含めたこの万博について、多くの国民は、さして関心も無いでしょうが、開催しないよりも開催した方が盛り上がってメリットもあるだろうと漠然と認識しているものと思います。ですが、当該プロジェクトの専門家である土木関係者の間では、そんなもんホントにできるのか、無理なんじゃないのかという声がよくささやかれていました。

なぜなら、会場となる「夢洲」というのは、名前こそ「ゆめしま」となにやらとても良いものだというイメージですが、それは、「ごみ(一般廃棄物)の最終処分場」であり、単なる「大阪中のゴミが最後に捨てられ、そのゴミでできた島」だからです。

フィリピンのマニラでは、町中にゴミが捨てられた山があり、そこがいつも化学反応を起こしてガスを出したり煙が出たりしているため「スモーキーマウンテン」と呼ばれていますが、あれと夢洲は(廃棄物が一定処理だとは言え基本的には)同じようなものなのです。

だから、今でも汚染水は大量に出てきますし、ガスが地中から大量に吹き出ている場所です。もちろん、万博の計画ではそれをきっちり「処理」するから大丈夫だという事になっていますが、それ、完璧にやろうとすりゃ、かなり大変だなぁという率直な印象を多くの関係者は持っていたわけです。

しかも、ゴミの島ですから、「地盤」が必ずしもしっかりとしたものではありませんから、そこで大規模イベントするっていうのも、多くの関係者はその意味でもやっぱ大変だよなぁ、と思っていたわけですが、案の定、地盤が緩すぎて、万博をするなんて無理だ…ということが途中で発覚し、慌てて大阪市は、少なくとも790億円という巨大な公費を使って地盤を改良し、万博に備えるという話しになりました。

多くの関係者は、「そりゃ、そうでもせにゃ、使えんよなぁ」と思っていた訳ですが、案の定、という他ありません。

しかも、それだけの地盤改良を行っても、建物を建てる最低基準をギリギリクリアするレベルでしかありませんから、立派な構造物を立てるにはかなり深い杭を打つことも必要であることも危惧されますから、施工費が通常以上にかかってしまうことも危惧されます。

もちろん、こうした万博を進める吉村大阪府知事、松井元大阪市長ら「維新」の方々は

「負の遺産であるゴミ捨て場の島を、本当の『夢の島』としてよみがえらせる」

というスローガンを掲げています。それはそれで大変結構な話ではありますが、要するに、かねてより「それって技術的にホントにできるのか?」という疑義が濃密にあったわけです。

一言で言ってそれは、時間とおカネさえたっぷり使えば、絶対に可能です。

でも逆に言うなら、時間とおカネがなければ、それは〝絶対〟不可能なのです。

そして、吉村·松井等を中心とした大阪「維新」の地方政府は、十分な時間とおカネを用意しなかったのです。しかも、合理的な計画もなく、「行き当たりばったり」と言わざるを得ないような対応で終始しているため、大阪万博/IRの成功は黄色信号どころか赤信号がともる危機的状況に陥っているのです。

その典型的証拠が、上述の「地盤改良に大阪市が790億円拠出することになった」という顛末です。

大阪維新といえば、「身を切る改革」だとか「二重行政の廃止」だとかなんだとかいって、行政の予算を削ることを有権者にアピールし、選挙人気を獲得し、その勢力を伸ばしてきた政党です。

ですが身を切る改革だとかいって削れるのは、人件費の数千万とか数億、二重行政でも、いろいろな検証をへてせいぜいが数億円か十数億円程度の予算が削れただけでした。

そんなドケチ政治をやってきた維新が、790億円もの公費を「ぽん」と出すことを決めたわけですから、よっぽど万博の開催が「ヤバい」状況になっちゃったと焦っていたのだと推察されます。

たかだか地盤の改良で790億円の公費を出さないと行けないくらいヤバい状況だったのですから、これからあらゆる問題が噴出することは確実です。

例えば、大阪都構想はじめ、大阪の「維新」問題を長年取材してこられた、戦争ジャーナリストの西谷文和氏は、夢洲万博/IRについても、関係者に多様な取材を行い、何度も現地に足を運ばれて長い間情報を集めてこられていますが、それを通して、以下のような深刻な問題が、万博/IR開催にはあるということを明らかにされています。

(詳細は、こちらの動画をご参照ください→『風雲急!必ずこける!?大阪万博』https://www.youtube.com/watch?v=R5R0CJw5PPk

■USJの「4倍」もの来客を想定しているが…普通に考えて無理である。

 まず、この万博の開催費は基本的に全て入場料収入で賄うことを想定していますが、そのため、来訪客を期間中(約半年間)に2820万人という数字を想定しています。これを一日あたりにすると、約16万人ですが、これは、大阪の大人気テーマパークUSJの一日来訪客3.4万人の4倍以上」の集客数。しかも、バブル絶頂の頃の国際博覧会である「つくば博」や、同じく大阪での「花博」の実績来訪者数よりもずっと高い数値ですから、デフレ不況の今、これだけの来客があるとは普通に考えて想定できません。

 なお、これだけの集客想定なんて土台無理だろう…と腹の中では感じている主催者は、それでも何とかチケットをちょっとでも売り飛ばそうと、関西財界の主要17社のそれぞれに、前売り券(一枚約6000円)を1社当たり15万~20万枚を売りつけることを依頼しています。ということは、各社約9億~12億円を負担する見込みですが…この依頼を全て関西財界が飲んだとしても、それで売れるのは所詮最大で340万枚。全体の12に過ぎませんから、2820万枚を売りさばくのは並大抵の事ではないのです。

■交通渋滞、下水処理の円滑対応が…今のままだと絶対無理。

 さて、仮に上記の来客があったとすれば今度は、毎日19万人分の「交通」と「廃棄物処理」(中でも最大の問題は糞尿処理)を夢洲で行わなければならなくなります。

 こういう話しは、まさに「土木計画学」という、当方の専門分野で学部の学生に毎年教えている講義内容の範疇の話しなのですが、少なくとも今の計画を見る限り、交通と廃棄物処理が円滑に行えるとは到底思えません。

 まず交通ですが、主催者は半数が地下鉄を使うと予定しており、残りの半数はバスということです。ということは、8万人をバスで処理する、ということですが、バス一台あたり約40人と想定すれば、(往復で)これは4000便のバスということになります!一台あたり40人平均以下だとすれば、5000便程になります。

 しかし、これはとんでもない数なのです。

 例えば、日本最大級のバスターミナルであるバスタ新宿の発着バス数は1600便/日ですから、夢洲のバスターミナルはこの新宿の3倍前後の処理量が必要となるのです!

 仮にバスターミナルでそれだけの処理が可能となったとしても、そのバスが「橋」を渡って夢洲にやってくるわけです。そして、来訪時刻は集中するでしょうし、橋を利用するのはバスだけじゃなく、物流のトラックも併用します。だから、しっかりとした道路交通計画を立てておかないと「大渋滞」となる事が真剣に危惧されます。

 一方、16万人の人間が一日夢洲で活動するのですから、廃棄物処理、とりわけトイレ処理は相当な量となります。今のところ、近隣の既往の下水処理施設を使用する計画となっているようですが、西谷氏によれば16万人が純増した場合、その処理量を圧倒的に上回ることが懸念されていると報告しています。

 いずれにしても、仮に開催して閑古鳥でなく大成功した暁には、交通、汚水処理で大混乱となることが、今のままでは避けられない状況なのです。一方で閑古鳥であれば、万博は失敗となりますから、現状、八方塞がりの状況にあるわけです。

■「開催延期·縮小」は必至か

 以上の話しは、開催できた場合の懸念ですが、その開催自体も危ぶまれるというリスクもあります。

 そもそも万博には153カ国・地域が参加を表明していて、このうち56カ国・地域が独自パビリオンを建てることが想定されています。が、このパビリオン、今のところ全く工事が始められていないのです。こうした状況を受け、大阪市政関係者からは、

「会場の夢洲ではまだ工事なんていっこも始まってへんよ。あと2年もないのに、今から始めて全部完成さすなんて、どう考えても無理やろ。役所ん中では万博延期説まで流れ始めてますわ」

という声もでていると(本年7月3日時点で)報道されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/1cce5a11253640e54fb3c849dbe8fc85be61cae6

 しかも、「遅れる」だけでなく、「撤退」する国もあるだろうということが、関経連の会長で、万博を準備する日本国際博覧会協会(万博協会)の副会長である松本正義氏(住友電気工業会長)は、7月18日の記者会見で、次のような驚くべき発言をされています。

「(参加国の中には)今ごろ設計もない、何のレスポンス(反応)もない、そういう国が56カ国の中にある」

「箸にも棒にもかからないような国だなというのがある」

「(撤退する国が)あるでしょうね。仕方ない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/130b7e3fa1dbffc345b7d65317ec6db875a8d734

つまり、解散延期も、開催規模縮小も必至の状況にあるわけです。

                           (以下、後編に続く)

※ 本編の「後編」https://foomii.com/00178/20230727144731111972)では、

外国パビリオンでは業者は決まらない

相当な追加予算/追加期間(=延期)を覚悟しないと万博の成功どころか「開催」すら危うい

③要は、「維新」が合理的な計画を検討しないまま無理矢理万博IRを進めてきた事のツケが、最終的に「大阪市民」に回される疑義濃厚。

…等について解説。是非下記「後編」ご一読ください。

『「大阪維新」が主導するゴミの島·夢洲での大阪万博/IR計画には当初から無理あり。延期/規模縮小·閑古鳥等で「大混乱」は必至の状況(後編)』

https://foomii.com/00178/20230727144731111972

 


 

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コメント

  1. 藤原昌樹 より:

    論稿を読んで、以前に私が拙稿「『沖縄の基地問題』にまつわる嘘話」で書いたことを思い出しました。これだけの工期とコストをかけても普天間基地は返還されない可能性が高いです。
    (膨らむ総事業費と延びる工期)防衛省は辺野古の新基地建設の技術検討会で、軟弱地盤への対応等で、政府が示した総事業費3,500億円が約2.7倍の9,300億円に膨らみ、工期が12年に延びるとの試算を明らかにした。日米両政府が合意した返還時期は、2030年代以降にずれ込む見通しとなっている。総事業費9,300億円が、新国立競技場の事業費(約1,600億円)の約5.8倍、火災で焼失した首里城の焼失前の復元に要した総事業費(約240億円)の約39倍に相当すると言えば、辺野古の新基地建設がいかに膨大な費用がかかる事業になるのかということをイメージしていただけるであろうか。

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