【藤井編集長・年末のご挨拶】 新春を迎える為に本年を総括せん~悪夢の中に光明有り~

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

いよいよ年の瀬も押し迫ってきましたね。

大晦日、皆様如何お過ごしでしょうか。

今年、2023年のクライテリオンは、

「反転」の年 2022-2023 ~戦争、テロ、恐慌の時代の始まり~
https://the-criterion.jp/backnumber/106_202301/

から始まりましたが、まさに時代は「平和」から「戦争」に大きく反転し、その反転が拡大する年となりましたね。

昨年から始まったウクライナ戦争は、NATO,というよりもアメリカが「希望」する通り延々と継続し、ウクライナの苦境が深化し続けているのはもちろんのこと、アメリカの「狙い」通りにロシアを大きく摩耗させ続けています。

結果、世界的なインフレが進行し、欧米各国の中央銀行は、文字通り「教科書」通りのオペレーションを敢行し、尋常ならざる水準の利上げが進められました。

しかし、各国中央銀行のスーパーエリート達が学んだ経済学のその「教科書」そのものが誤っているが故に、その利上げはインフレ対策になる保証は全くなく、(むしろ借り入れに基づいて展開し、その借り入れに関わる利払いなどのコストを価格に反映することが支配的な)一部業界では逆に、インフレを加速するという最悪の帰結をもたらしています。

一方で、その利上げは着実に投資の抑制を導き、欧米各国の基本的活力を奪い続けています

それはつまり、各国の「恐慌」リスクと肥大化させ、世界経済それ自身が世界的な「恐慌」に陥るリスクが日に日に高まり続けていることを意味します。

一方で、歴史の中で長らく虐げられてきたパレスチナ側からイスラエルに対して大規模な「テロ」が行われ、それを皮切りとした戦争が、イスラエル、そしてアメリカのシオニストの狙い通りにパレスチナからさらなる略奪を深化・加速させる方向で勃発・展開することとなりました。

その結果、その民族・国家の民として生まれた、という以外に何の咎も無い無辜の民の夥しい数の命が、パレスチナ、イスラエル双方で失われました。

我々は今、この戦いがイランやレバノンを巻き込んでさらに拡大していくリスクに晒されています。そしてそれは恐るべき事に第三次のオイルショックの危機が目前まで迫ってきていることを意味します。

つまり本年2023年はまさに、クライテリオンで年始に危惧したとおり、「戦争、テロ、恐慌の時代」が始まり、それらの流れが互いに互いを加速させ続ける悪夢の様な一年となってしまったのです。

そんな中で、我が国日本では、岸田文雄総理を中心とした国家の中枢が文字通りの機能不全に陥り、戦争、テロ、恐慌の世界史的な巨大な時代のうねりを乗り切る力があらかた喪失してしまっていることが、誰に目から見ても明らかとなる―――という最悪の一年となりました。

そんな世界史的うねりの中で、我が国では、手足の無いウジ虫のような輩達による欲望と保身だけにかまけた実にセコくて恥ずかしい事件が繰り返されました。

マスメディア界でキングとして君臨していた老人が若い男の子達の肉体を貪り続けた「ジャニー喜多川事件」に象徴される腐敗が国家全体のあらゆる局面で横行し、一部週刊誌の活躍を契機として発覚していきました。そしてその合わせ鏡として、政府の中枢が「自民党裏金問題」に象徴される惨たらしい腐敗に完全に侵食される様も白日の下に晒されることとなりました。

ここまであらゆる側面における腐敗が進行した以上、我が国の不況はさらに深刻化することは確実で、物理的暴力か否かはさておき、あらゆる種類のテロのリスクが高まっています。そして、無能となった国ほど攻め込みやすい国はない以上、我が国の戦争リスクは、戦後、かつて無いほどの高まりを見せるに至りました。

ただでさえ中国は尖閣のみならず沖縄の領有権を、ロシアは北海道の領有権をそれぞれ主張し始めると同時に米国・韓国との戦争状況を継続し続けている北朝鮮は核開発をさらに加速しているのです。

そんな極東の地政学的状況に置かれた、かの岸田文雄氏に象徴される「無能」と「無理性」に支配された我が国日本は、何もできず、内政上の混乱を拡大させながら、外国からのあらゆるタイプの侵略リスクをこの上無い程に拡大させてしまっているのです。

まさに、内憂外患

ただし今年の最大の特徴は、こうした流れが拡大したということそれ自身ではありません。

そうした事は、年始のクライテリオンの特集号で論じていた通りの流れであり、一部の心ある日本人にとっては、常識のように認識されていたことでした。

今年の最大の特徴は、そうした「内憂外患」の深刻さの認識が、広く一般の国民にも共有された、という一点にあったと言えるでしょう。

そうした世論の転換を象徴する最大の社会現象は、「増税メガネ」と揶揄され、侮蔑された我が国の宰相、「岸田文雄」氏に対する国民的イリテーション=苛立ちの圧倒的肥大化でした。

表現者クライテリオンは、だれからも無能扱いされる人物が宰相となり、その席に保身だけを理由として居座り続ける「岸田文雄問題」こそが、我が国を亡ぼす最大の要因となると、岸田内閣誕生の2年3ヶ月前に予感し、それ以後、3回に渡ってその「岸田文雄問題」を特集するという取組を続けて参りました。

当初はなかなか、その岸田文雄問題が国民的に浸透せず、編集長として忸怩たる思いを抱き続けていたのですが、今年はようやくそうしたクライテリオンの言論出版活動が功を奏したかの様に、岸田氏への不満爆発が、後半になってようやく勃発したのです。

国家の崩壊、そして滅亡の最大の根本的原因はいつも、外的要因ではなく、国家中枢の腐敗なのです。

したがって、国家崩壊・国家滅亡を防ぐには、まずは、国家中枢の腐敗を認識することから始めねばなりません。気がつかなければ、腐敗進行は留まることは絶対にないのです。というよりむしろ、腐敗という現象は、「気付かない」という現象と表裏をなす社会的政治的現象なのですから、腐敗の治癒は「気付かない」という状況の改善なくしてあり得ないのです。

2023年はそうした意味で、多くの国民が国家中枢の腐敗に気がつき、その腐敗を糺さねばならぬと気づき始めた「反転」の年となったのです。

その国民的大反転の最大の功労者は、何を隠そう、「岸田文雄」という一人の日本人です。

彼のような「まるで絵に描いた様な有能有らざる人物」が宰相として居座り続けたという政治現象が、日本の最大の問題の所在を多くの国民に知らしめる巨大な「警報」となったのです。

そしてそれと連動する恰好で、マスメディアの空気を一変させたジャニーズ問題発覚が与論全体に衝撃を与え、森永卓郎氏の書籍『ザイム真理教』が大ベストセラーとなりました。

そういう意味で、今年2023年は悪夢が悪夢を呼ぶ恐るべき悪夢のような年ではありましたが、唯一の光明は「増税メガネ」「ザイム真理教」「ジャニー喜多川性加害問題」という言葉の流行に象徴される、国家中枢の腐敗についての国民的認識の深化・拡大にあったと言えるでしょう。

そう考えれば、今年一年も完全に絶望だけに支配された一年だったと振り返らずに済むようにも思います。

何と言っても大晦日は、一年を振り返り、あらゆる汚れを払い落とし、新しい年を晴れ晴れとした心持ちでお迎えするために何よりも大切な、日本人にとってクリスマスとは比較できないほどに重大な意義を持つ一日。

そのためにも、今年一年の悪夢に全て思いをはせ、可能な限り全力で日本の、現状を憂いつつ、その現状を改善せんが為に何ができるのかを考え、実践する新しい年のお正月を「正しく」お迎えすることと致しましょう。

……

そんなこんなで表現者クライテリオンも今年なんとか一年乗り切り、新しい年をお迎えすることができました。

それもこれも、本誌、ならびに本誌を中心としたあらゆる言論活動に様々な形でお触れ戴いている、読者、購読者、視聴者の皆様あってのこと。

それは大げさな物言いでも何でも無く、至極当たり前のことです。言論活動というのは、発言者だけで成立する活動なのではなく、発言する者とそれに耳を傾ける者との「共同作業」だからです。

そういう意味で、今年一年、大変に御世話になり、本当にありがとうございました。

編集長として、心より御礼申し上げます。

それと同時に、皆様が素晴らしい年をお迎えできますよう、ご祈念申し上げます。

では、よいお年をお迎え下さい!

表現者クライテリオン編集長

藤井聡

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