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特集対談① 日本国家の腐敗をいかに乗り越えるか 亀井静香×藤井聡

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

最新号『表現者クライテリオン2024五月号』より一部を掲載いたします。

形あるものは必ず滅す

藤井▼ここ最近、自民党の安倍派や二階派や岸田派の裏金問題が騒がれていたり、ジャニー喜多川の性加害問題、さらに松本人志の性加害問題があったりと、社会のあらゆる場所で進行している腐敗が明るみになりました。亀井先生にはぜひ、政界の腐敗の問題についてお話しいただきたいと思います。

政界の腐敗と言いましても、田中角栄以来のいわゆる「金権政治」には功罪両面がありますし、きちんと公表して公明正大にお金を使っていればここまでの問題にはなっていなかった部分もあると思います。例えば、今回の裏金問題は政治資金収支報告書に記載していなかったという点が法的に問題があると指摘されています。ただしこの件の中心にある最大の問題はカネの収受によって政治が歪められるという問題。例えば宏池会のパーティーに中国の著名人を含めた多くの外国人が来ていたのに、一切公的記録には残されていないということが報道されています。彼らのパーティー券購入量は二十万円未満だったから未記載なのですが、その枠でたくさんパーティーに入り込んでいたわけです。政治資金規正法では、「献金」は外国人から禁止されています。外患誘致をはじめとした、いわゆる「売国」と言われる究極の利益相反リスクがあるからです。だからどこの国でも外国人からの献金は禁止されている。ところがパーティー券を通した「事実上の献金」は、法の抜け穴になっていて、二十万未満なら外国人から何度でも何度でも受け取ることができる。これが最大の問題であり、まさにこれがあるからこそ、パーティーが腐敗の温床となっているわけで、それを岸田総理が積極的に繰り返し繰り返し行ってきたということが分かっているわけです。

この件は要するに岸田総理が政治家として腐敗しており、したがって、岸田内閣そのものがあらゆる面で腐敗している疑義を強烈に示しているわけです。

腐敗というのは、例えば食べ物なら腐って食べ物としての機能がなくなることを意味しますが、転じて組織や人間の精神が腐りきり、本来の機能を失うことを意味します。今の岸田政権が国民・国家のための機能を果たしていないとすると、それ自体が腐敗であると言えるということです。そこで、先生がお考えの「政治とカネ」の関係のあるべき姿、そしてそれを踏まえた上で「こういう腐敗はいかん」というお考えをお話しいただければと思います。

亀井▼そんなことを京大の大先生に偉そうに話せるほどの男ではありませんが、「形あるものは必ず滅す」ということからは逃れられませんね。この宇宙にしても、そのうち消えてなくなる。つまり、輪廻がぐるぐる回っているということです。物は必ず腐敗していくし、人間の場合は心が腐敗していく。心が腐敗するということは、皆で助け合って幸せになっていこうという道から外れて、他を犠牲にして自分だけが権力を握って幸せに過ごせればそれでいいという道に逸れていくということですよ。それこそが腐敗だ。そういう腐敗した奴に食い物にされている連中が反乱を起こすのです。日本の場合は百姓一揆とか大塩平八郎の乱みたいなことが必ず起きてくる。それはやはり輪廻の力ですね。まともな方向へ回復していこうという力が働くわけです。

藤井▼反乱というのはある種の反発であり、元に戻ろうとする力ということですね。

亀井▼戻るというより、ぐるぐる回っているということですね。この宇宙と一緒で、輪廻としてぐるぐる回っているわけですよ。そういう状況の中で、「形あるものは必ず滅す」ということがあらゆる物事に起きてくる。

権力を握れば強者の論理に流れる

亀井▼権力を持った人間は、本来はそれを使って同じ仲間、同じ人類の幸せを目指さなければならないはずです。けれども、人間は権力を握るとそうではなくなっていく。それが人間の歴史であり、悲しい人間の性だと思いますね。そういう意味で心の腐敗というものは、今に始まったことではないんです。

岸田も悪いことばかりやっているわけではない。彼は広島の安芸の出身で、あそこは穏やかなところなんですよ。岸田自身も非常に穏やかな人間です。岸田は今度北朝鮮まで行くと言っていますよね。弱肉強食の強者の論理に従った政治とは違う政治もやらなければならんという、彼の気持ちが垣間見えるところもあります。しかし全体としては、新自由主義の道をどんどん歩んでいますね。力を持つ者が新自由主義的な強者の論理を推し進めようとするのは、人間の持っている本能に近いんです。

問題は、それに反抗し、そういう権力を倒すための力や精神を国民が持てるかどうかです。残念ながら、そういうものがなくなっていますね。力が強い奴がどんどんカネとモノを持つようになり、人の心まで支配してきている。そうするのは当たり前なのではあるが、それに対抗しようとする者がいなくなった。これが問題ですよ。力を持つ者があまりにひどいことをやる時には、革命まではやらなくても、権力に立ち向かって変えていかなければいかんと私は思います。

藤井▼我々の身体も生きている限り腐敗しませんが、死んでしまえば朽ち果て、腐敗していく。その朽ち果て腐敗していくこの世の摂理に抗うことが生命の本質であるように、人間の精神、そして政治の本質は、強いモノが支配するというこの世の摂理に抗うことのはずです。つまり先生が先ほどおっしゃったように、この世の摂理に抗って、皆が協力し合って幸福に生きていけるような社会の秩序を目指すのが、政治の本質なわけです。それにもかかわらず強いモノが支配する流れに棹さすような政治をするというのが、政治の腐敗であり、それは人間精神の活動が停止している、つまり、精神が死んでいるということを意味する。つまりは腐敗は死の別名、です。新自由主義の流れに身を任せているような今の岸田政治の問題の本質はここにあり、したがってまさに腐敗している、ということですね。

続きは『表現者クライテリオン』五月号で…

亀井静香(かめい・しずか)
36年広島県生まれ。東京大学経済学部卒業。サラリーマンを経て警察庁に入庁。退官時の階級は警視正。その後衆議院議員を13期務め、運輸大臣、建設大臣、自由民主党政務調査会長、国民新党代表、内閣府特命担当大臣(金融担当)などを歴任した。17年の総選挙に出馬せず引退。著書に『永田町動物園 日本をダメにした101人』など。石原慎太郎氏との共著に『「YES」と言わせる日本』『日本よ、憚ることなく』『石原慎太郎 日本よ!』。他の共著に『自民党という絶望』など。

藤井 聡(ふじい・さとし)
68年奈良県生まれ。京都大学卒業。同大学助教授、東京工業大学教授などを経て、京都大学大学院教授。京都大学レジリエンス実践ユニット長、2012年から2018年までの安倍内閣・内閣官房参与を務める。専門は公共政策論。文部科学大臣表彰など受賞多数。著書に『大衆社会の処方箋』『〈凡庸〉という悪魔』『プラグマティズムの作法』『維新・改革の正体』『強靭化の思想』『プライマリーバランス亡国論』など多数。共著に『デモクラシーの毒』『ブラック・デモクラシー』『国土学』など。「表現者塾」出身。「表現者クライテリオン」編集長。


〈編集部より〉

本記事が掲載されております最新号『表現者クライテリオン2024年5月号』はいよいよ明日発売です!!

全文は本誌に掲載されておりますのでご一読ください。

特集タイトルは

不信の構造、腐敗の正体

政治、エンタメ、財務省

です。

今、日本の各領域において激しく進行している「腐敗」とそれに対する国民の「不信」の構造を明らかにすることを通して、その「腐敗」を乗り越えるため方途を探る特集となっております。

ぜひお読みください!!

巻頭言と目次はこちら

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6月 古田徹也
講義テーマ:謝罪の言葉を哲学する

7月 川端祐一郎
講義テーマ:保守は反体制派に何を学び得るか? ―カルト、テロ、レジスタンス

8月 片山杜秀
講義テーマ:未定

9月 施光恒
講義テーマ:保守の世界秩序構想

10月 小泉悠
講義テーマ:ユーラシアの地政学と安全保障 ー癒着する地理とアイデンティティ

11月 苅部直
講義テーマ:小林秀雄と「伝統」

12月 大場一央
講義テーマ:選択された「忠誠」―『靖献遺言』に見る人生を無駄にしない生き方

1月 小川さやか
講義テーマ:文化人類学の方法とビジネスとの新しいかたち

2月 富岡幸一郎
講義テーマ:未定

3月 柴山桂太
講義テーマ:未定

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