今日我が国では政界や財界等の劣化、腐敗の度は目を覆うばかりの水準に達している。そしてこの認識の下、人々の適切な振る舞いを導き得る「適切な仕組み」を構築すべしと叫ばれることがしばしばとなり、様々な「改革」が断行されてきている。 しかし、どんな愚かな指導者であろうとも一定以上の組織的成果が期待できる「仕組み」等というものは単なる「幻想」の類いに過ぎない。実際、構造改革をどれだけ繰り返そうが、我が国の各組織の劣化や腐敗を食い止める事など全くできていないのが実態だ。
 では、政府を含めたあらゆる組織の能力を最大化せしめる「素晴らしき指導者」とは一体どのような存在なのか?本特集では、こうした問題意識の下、「「指導者」の条件」と題した特集を企画することとした。
 そして特に本特集においては、これもまた「当たり前」の話でありながら昨今の組織論、改革論で看過され続けてきた、指導者の”徳”や”品格”の問題に焦点を当てる。そして指導者の“徳”や“品格”こそが、指導者として欠くべからざる第一条件なのだという思想を、様々な歴史的事実や事例等も交えながら多角的に本特集にて論ずることとしたい。

表現者クライテリオン編集長 藤井聡