【藤井聡】石破政権である限り「トランプ」は危機となるー今こそ「自主独立」を目指す政権を樹立せよ

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

2月16日発売の最新刊、
『表現者クライテリオン2025年3月号 [特集]トランプは”危機”か”好機”か?』から特集論考をお送りします。

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「トランプショック」に伴う「負担増」は、
日本が独立自尊の精神を持つなら
「好機の源泉」になる。

トランプ政権誕生は「危機」にも「好機」にもなり得る



トランプ政権の誕生は、日本にとって危機にも好機にもなり得るものである。世界、そして日本に大きな影響力を持つアメリカの政治がトランプ政権誕生によって転換し、その結果、日本の政治的・経済的・外交的・安全保障的環境が変化することになるからだ。そもそも生態系内の各生物にとってあらゆる環境変化は危機ともなり得る一方で好機ともなり得る。その生命がその環境変化に適応できなければその変化は危機となる一方で、その変化に適切に適応できれば好機となる。

その意味において、「日本」という一つの国家が、「トランプショック」と呼ぶべき変化に対して一つの有機体として適切に「適応」できるか否かによって、危機ともなれば好機ともなるのである。

トランプ政権誕生は、日本に「負担増」を強いるものである



「トランプショック」は内政におけるディープステートの解体や、外交・安全保障政策におけるアメリカ・ファースト(米国第一主義)の推進、その線に沿った保護主義の拡大など様々な要素で構成されているが、煎じ詰めて考えればそれらは全て、「米国の『負担減』と、日本の『負担増』」という一言に集約できる。

例えばトランプは関税を引き上げ、「外国製品を買ってやる(輸入する)」という対外貢献を縮小させようとしている。その結果、日本はこれまでアメリカに買ってもらっていたもの(輸出)が買ってもらえなくなることで、内需拡大やアメリカ以外の外国への販路の拡大といった「負担」が生ずる。

あるいはトランプは在日米軍に投入しているアメリカ側の負担を縮小させる一方、その分の負担を日本に要求しようとしている。

在日米軍のみならず、米中新冷戦で発生するあらゆるコスト(米中貿易を縮小させるために発生する米国の対中輸出減少等)を可能な限り引き下げるために、日本にもそのコストを負担するように要求することともなろう(例えば中国に対して輸出できなくなったものを日本に買わせる、日中貿易の縮小等)。さらにはウクライナ支援における米国負担の縮小と、その肩代わり要求を日本に突きつけることも危惧される。

かくして「トランプショック」はあらかた、「日本の負担増」となって日本を直撃することになるのである。

トランプショックは、自主独立の気概があれば「好機」に、なければ単なる「危機」となる



これらの「負担増」はもちろん「危機の源泉」となり得るものだが、必ずしもその危機が確定しているわけではない。そもそも「負担」というものは、自ら成長することを目指している個体にとっては、成長の「糧」となるからだ。筋力トレーニングをする人間にとって、腕立て伏せや腹筋等による筋力への負担増は、体躯を強化するために自ら進んで(時に金まで支払って)わざわざ手に入れようとするものだ。

つまり日本が「より上を目指したい」「成長したい」という意志を持っている限りにおいて「トランプショック」による負担増はいずれも、より上を目指し成長するための「糧」として活用することができるのであり、「好機」の源泉ともなり得るのである。

しかも、「トランプショック」は巨大地震や他国によるミサイル攻撃のような単なる破壊を導くような純然たる惨事とは根本的に異なるものだ。なぜなら「トランプショック」による負担増はいずれも、これまで日本が戦後八十年にわたって続けてきた「米国依存体質」故に生ずる負担増だからだ。だからその負担増は、日本が対米従属、対米隷属状態から、対米自立を起点とした自主独立国家を目指すにおいで必然的に生じ得るものなのである。

おおよそ「在日米軍」なるものが存在し、それが日本の安全保障政策において必要だという対米従属状態そのものが独立国家としてあり得ぬ状況だ。だからトランプの求める防衛負担増は、トランプから要求されるまでもなく自主的に進めるべきものだと言わねばならないものでもあるのだ。

そしてそれは、…続きは本誌にて…


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