表現者クライテリオン編集長、
京都大学の藤井聡です。
ニューヨーク州立大学の
ステファニー・ケルトン教授が、
7月15日から19日にかけて来日されました。
そのメインの滞在目的は、
京都大学の当方主催のMMT国際シンポジウムでの
基調講演をしていただくこと。
大変有難い事に、当方から打診差し上げたところ、
ご快諾いただき、この度の来日と相成りました。
ケルトン教授滞在中、当方のシンポジウム以外にも、
研究セミナーにもご参加された他、
100人近くもの記者を集めた記者会見、
テレビ、新聞、雑誌各社の単独インタビューと
ネット動画(三橋TV)へのご出演、さらには、
与党代議士(西田・安藤・竹内先生)との意見交換会会等、
実に様々なイベントに、精力的にご参加いただきました。
あれこれとご一緒させていただいた中で
とりわけ印象深かったのが、
ケルトン教授の「誠実さ」でした。
昨今の筆者は、
政治家の方々やメディアの方々とのお仕事が増えた今、
「正確に語る」ことよりも
「分かりやすく語る」ことが求められる機会が
増えてしまっているのが実情です。
じゃぁ、学者と一緒にいれば、正確な議論ができるのかと言うと、
全く違うのが、今の日本の学術界。
日本のアカデミズム、とりわけ、経済学者のアカデミズムでは、
「知的誠実さ」を守ろうとする学者よりも、
「自分の立ち位置」を守ろうと学者が、
増えてしまっているのが実情です。
そんな中、ケルトン教授は、
正確に、しかも、可能な限りゆっくりと分かりやすく、
誠実に語ろうとされている姿に、
心が洗われる様な、
すがすがしい気持ちになりました。
そんなケルトンさんのお話を、
直接ご覧いただけるのが、
下記の記者会見の動画。
https://www.youtube.com/watch?v=ofBu81yJSCA
この動画は、下記に文字おこしされていますので、
是非、こちらも併せてご覧ければと思いますが、
https://www.facebook.com/hiroko.michishita/posts/2322389114504183
当方として一番興味深かったのは、以下の下り、でした。
ある記者が、インフレになったら
どうするのだということを質問した時の、
ケルトンさんのご回答です。
「今の質問を正しく理解できたか若干不安は残るが、もう20年以上2%の物価上昇率を達成できないでいる国において、記者のみなさまから発せられる質問がすべてインフレについて、過度なインフレについての質問であることが関心深い(笑)」
(該当部分を再生)
日本は世界で最も「インフレ懸念」から離れた国。
そんな国で、記者が皆、インフレを心配しているのが、
とても感慨深い、というか「ホント、不思議な話だ」
と感じられたのも、無理からぬ話でしょう。
それはまるで、クラスで一番ガリガリに痩せた生徒が、
肥満になる事を四六時中心配をしているようなもの。
それはまさに異常な光景だったわけですが、
その異常さに、日本人は誰も気が付いていない中――
その異常さがケルトンさんの誠実さによって、
クッキリと浮かび上がった、という次第です。
ホントに恥ずかしいお話ですが、
多くの学者やエコノミスト、政治家、そして記者たちは、
このくだりを見ても何も恥ずかしくないのでしょう。
つまり彼らは皆まさに、「恥知らず」なわけです。
そんな「恥知らず」な今の日本人を象徴するようなシーンが、
参議院選挙の夜、テレビで放送されており、衝撃を受けました。
ケルトン教授ともMMTについて意見交換をされた
西田昌司参議院議員が、
あるTV番組で勝利者インタビューを受けている時に、
番組司会者の辛坊治郎氏が、次のような質問をされたのです。
(※ もし、動画をお持ちの方がおられれば是非、
正確な文字お越し情報をお知らせください!)
「MMTは黒田日銀総裁も論外だとおっしゃっているので、論外なのですが、仮に論外じゃないとして、なぜ、自民党の中でMMTの理解が広がらないのでしょう」
これに対して西田氏が「あなたも含めて勉強が足らないからです」と「誠実」に回答したのですが、それに対して辛坊氏は、
「MMTは論外です!!」
と絶叫して、その場は閉じられました。
(ケルトン教授の誠実なご解説の数々を無視した上で)
たかだか官僚崩れの一日銀総裁が
ポジショントークで言った言葉だけを根拠にして
論外だと決めつける姿勢・・・
ある説(MMT)を主張して当選した国会議員に、
そんな説は論外だと断定した上で、
その説について質問するという姿勢・・・
そして、その人物が反論した途端に「論外です!」と絶叫して、
公衆(TV視聴者)の面前で話を終わらせる姿勢・・・
これらの姿勢は全て、
ケルトン教授に見られた姿勢とは正反対のものです。
こんな不誠実が我が国で放置され続けば、
それどころか、その不誠実が喝采を浴び続ければ、
まともな学術や言論、政治をやろうとする人物が
その内、一人も居なくなってしまいかねません。
事実、こうして誠実さが踏みにじられ続けられたことの
必然的帰結として、
デフレ状況下であらゆる記者がインフレを心配し続け、
デフレ状況下で与党が消費税を主張し、
そんな与党が、選挙で勝利を収める
という恐ろしい状況になってしまったのです。
この体たらくを冷静に眺めるにつけ、
この日本を立て直すのに今、一番大切なものは実は、
レトリックでも戦略性でも、
ましてや財力でも政治力でもなく、単なる
「誠実さ」
という一点を措いて他に無いのかも知れない、
と思えてきてしまいます。
・・・そんなことを感じさせる、
素晴らしい機会となったのが、
今回のケルトン教授来日でした。
お子様たちをニューヨークに残して
一週間近くもの貴重な時間を使って、
遠路はるばるわざわざ日本にお越しいただいた
ケルトン教授の「誠実さ」に、
改めて御礼申し上げたいと思います。
本当に、ありがとうございました。
追伸:
次号クライテリオンでは、ケルトン教授の講演レポートも含めた、MMT特集を企画しています。是非、ご一読下さい!
https://the-criterion.jp/subscription/
(写真撮影:大河内禎)
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コメント
後半、「あと1円政府が使ったとしてもインフレは起こらない。」は文意から外れていると思います。同時通訳が間違ってるのではないですか?日本語に邪魔されて彼女がどういってるのかよく確認してはどうでしょう。
ケルトン教授来日に関する、記事や動画は殆ど見させて頂きました
藤井聡氏及び各関係者の、ご尽力に感謝致します
どう嘆いた所で、組織票であれ何であれ、日本国民は結果を出した訳であり、我々消費税増税反対派(廃止派)も、甘んじてこれに付き合うしか有りません(泣)
それが、民主主義ですからね
それで、更に国民が貧困化し、国防力が損なわれ、インフラが脆弱化し、老後は死ぬ迄老体に鞭打って働く事を、国民が選んだのです
投票率が低い(投票しない)とは、つまりは、消費税増税に反対しなかったと言う事ですからね?
投票しなかった方々も、自公連立政権を信任し、消費税増税に賛成し、国民の格差拡大と、老後の不安定化、将来世代に禍根を残す決断をしたのです
まぁ、ノンポリの方々が、この投稿ページを読むとは思えませんので、伝わらないとは思いますが、自公連立政権を無投票当選させた様なものです
現代貨幣理論を使えば、基本的には【誰の懐も傷まないで、ふんだんに財政政策を打つ事が可能】なのに、何故、其処まで反対したがるのか?
この【基本的には、誰の懐も傷まない】と言う、単純な事実が伝わない事も、一つの原因かも知れませんね?
極論を言えば、大企業への法人税増税も累進課税強化もせずに、消費税を減税若しくは廃止し、『インフレ率が許す限り(供給能力が続く限り)財政出動が可能』なのです
別に大企業や高所得者が、反対する理由は本来ならない
勿論、他に理由が有る
【消費税還付金(実質上の輸出補助金】
【株主への配当金(労働分配率が下がる一方で、株主配当金は増えている(ストックオプション含む)】
【海外生産拠点や販売拠点からの、回収利益で企業収益が増加しているので、国内的には、消費税増税や緊縮財政で、デフレの方が、輸出主導や海外拠点主導の企業は儲かるビジネスモデルが成立している(グローバリズム)】
ですよね?
故に、今後も正論語りは苦しい闘いを強いられますが、頑張って参りましょう
個人的な提案として【MMTでの財政運営なら、誰も痛みを生じ無いで、財政出動が可能】と言うレトリックを、広めるのも手段ではないかと提案致します
メディアは放火魔と同じマインド。
増税すれば人が死に、幼児虐待も増え、道連れ自殺も増えます。(メディアは儲かる)
しかしその理由を違う所に持っていく。
「日本の仕組み自体がダメなんだ !」
「根本的に国の形を変えなければ !」
「改革だ !」
辛抱が正義顔しながら画面越しで吠えてる映像が目に浮かぶw
京都での放火殺人より人が死ぬのにね。解ってんのかな ? 辛抱&読売さん達よ。
たまたまそのシーンを私も拝見していて、衝撃を受けました。
「論外!」と叱りつけるように気合を入れて発声し、なんか「決まった」感じでした。
辛坊氏のこういったやり方に対して、ブーイングどころか喝さいを送りそうな人をたくさん知っています。
私の周りでは、そういった人には、会社などでけっこう出世していて社会に影響力を持つ人も多いように思います。
ところで「令和日本・再生計画」拝読いたしました。
現状があまりにもひどくて、読めば読むほど心に負荷(主に怒り)がかかる感じが致しました。この負荷は私のような者でも「日本に良い未来を」という気持ちがあるからこそなのかもしれません。そういった意味では、この怒りは持って良い怒りだとも思っています。子供たちに変な日本を残すわけにはいかないとも思っています。
私は今まで「大人としての責任」を意識していました。
これからは「真実を知った者の責任」も意識するようにし、また、たくさんの人が真実を知ってくれることを祈りたいと思います。
この度のケルトン教授の来日に際しまして、様々な形で携われた皆々様、お疲れさまでした。改めて感謝申し上げあげます。ところが、自立に向けた先日の国政選挙に於きましては、国民の大半の賛同を得る事が、叶わず残念な結果となりました。その要因も選挙の裏側を利用したジャニーズとか吉本興業などが世間を騒がせ、先生方の取り組みも半減した状況にありました。それからそれと利害が一致する、主流派経済学派の取り巻きや太鼓持ち連中も加担する姿には、とても悔しくて仕方ありませんでした。それによりこれから一旦、コメント投稿も控える事にいたします。それでは、しばしの間まで、ごきげんよう。
そもそも、MMTを理論と言っている時点で、私なんぞは違和感を感じます。
国民経済計算、資金循環統計、財政資金対民間収支などの統計を見ていれば、当たり前の話ですし、特別会計に関する法律、日銀法などの法律を読み込めば、現実に日本で行われている事ですから、理論ではなく、事実でしかないのではないかと思うわけです。
経済学者という人種は、専門外だからと法律を読まないので、思いが至らないのかもしれません。
何より、国民経済計算ストック編の2ページ目に、国内の金融資産と負債は相殺されると、はっきり記述されています。(よって、国の資産は非金融資産と外貨。)
学ぶ事を止めた人達が、民主主義を実践するなど、無理な話なんです。(ハイエクはかつて民主主義の対局を権威主義と言いましたね。)
日本銀行の借金である日本銀行券を握り締めて、「私の資産だ」という事に違和感を感じない人達が大多数のこの国に、私は希望を持てません。
かつて日本もMMTを実践して高度経済成長を成し遂げた歴史を持ちます。
石油ショックによるスタグフレーションで福祉国家の黄金期が終わり、新古典派経済学が主流派と呼ばれるようになってから、世界には自己責任の名の下に格差ばかりが拡がり、経世済民は等閑のままです。
高度経済成長という最高のお手本を今一度、思い起こさせてくれるのがMMT。
ぜひ一気に正しい経済政策に対する国民の理解を拡げて頂きたいと存じます。
「インフレになったら どうするのだ」
さしずめ、バカボンのパパなら、
「んっ! これでっ いいのだっ! 」
そんな馬鹿な小話より、安倍総理も居られたのかが気になりました。
頭にリフレーンして来るのは数年間の国会で石井苗子(名前間違っていたら後で修正します。ご了承ください。)議員等が第3の矢、成長戦略(構造改革の言葉のすり替え詐欺)の推進の要望ばかりを安倍総理にしていた質疑です。
民間の活力を・・・・と言うのなら本来第3の矢は要らなくて第2の矢に含めてしまえばいいのです。そうすりゃ民間は50年前のように次第に活気付くのです。そうなってから、どうするのだ、の詳細の質を問えばいいのです。
せっかく延長したのだから間違っていたことを全議員に明らかにして、言説を代えておかないと危機突破どころか危機泥沼延長連鎖じゃないですか。西田議員は辛抱強いんですね。
ケルトン教授の話題からは脱線してしまい失礼しました。
石井議員の氏名は間違ってなかった。
自分のペンネーム、斑と班を間違ってた。
まったくどうでもいい書き込み失礼しました。
先生は不誠実という言葉で表現されておりますが、これはもしかすると、不誠実というよりも、「もう努力する気力がない」という状態なのかなと思いました。
MMTが本当に経済現象を「より」表象する言説なのか、自分の頭を絞って、また、自分の経験つまりは過去の認識の数々と突き合わせて精査し、確認する、という作業。
これがテレビ出演する、物事をよく知っていると目される有名人のような人でさえ、過去繰り返しその努力をしてきて、すべて虚しく終わった苦い経験の積み重ねで、もはや目前の本当のチャンス(MMT)すらも感じる心が無くなった、哀れな化石、というだけで、誠実さといえば、その過去の努力という点で、本当は、そうとう
誠実な人だったのかもしれない。
つまり学び方が不幸だったのではないか。
認識すること、学ぶこと、学べないこと。
そんな知見が、そもそも学ぶ前にあると良いかもしれない。ああ、その分野の学問は、今すべきことがあったようですね。
力尽きて流される方々が、再び海の底から這い上がれるようお祈りしたいです。
そのためにも、くりかえし、くりかえし。
言葉で説明し、図表で提示し、身振り手振りでダイナミズムを表す。
その積み重ねの先に、明日があるのだと思いました。
ケルトン先生と似た香りのする自分の知っている先生方はみな亡くなりました。なにかとても勝手に懐かしく思われます。