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【藤井聡】残念ながら、「信」は時に「悪の暴走」をもたらすのです。

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

コメント : 7件

こんにちは、
表現者クライテリオン編集長、
京都大学教授の藤井聡です。

当研究室では、マスメディアの研究
細々と長年、続けているのですが、
その中で、この度改めて作ったのが、このグラフです。


https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1953174621450138&set=a.236228089811475&type=3&theater

日本人だけが、断トツでメディアを信用しているというグラフですが・・・
このデータ出典は、
下記のWorld Values Surveyのサイトで公開されているもので、
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
「新聞を、どれくらい信用していますか?」
という質問を「G7各国」の国民に行ったもので、
「強く信用している/信用している」
のいずれかを選んだ回答者の割合を示しているのがこのグラフです。

(なお、このデータは、
2005~2009年に行われた調査結果ですが、
2010~2014においても、ほとんど同じ結果が得られています。
なお、2010~2014調査では、国の数が限られています)

ご覧のように、G7の諸外国は、
新聞情報を信用している国民は、ほとんどおらず、
せいぜい、2、3割程度であるのに対して、
日本では、約73%という、大半の人々が、
新聞の情報を信用しているのです。

しかし、しばしば
マスメディアが「ウソ」を垂れ流しているのは
紛うことなき事実。

要するに、欧米諸国の人びとに比べて、
日本人がメディアに対して、
丁寧に言うなら「ナイーブ」
もっとあっさり言うなら「愚か者」
(関西弁で言うなら、「アホ」)なわけです。

このままでは、我が国で
「全うな民主主義」なるものが醸成され、
「適切な世論」が形成されることなど、
絶望的に難しい、ということになるでしょう・・・。

実際、まともに考えれば、
絶対にありえない「デフレ下での消費増税」が、
まさに今、断行されようとしています。
その結果、日本経済はボロボロになり、
国民の格差と貧困がさらに加速しようとしているのですが・・・
それもこれも、煎じ詰めて考えれば、
「日本人が信頼性なき新聞を信頼している」
からに他なりません。

何といっても、あらゆる大手新聞が、
消費増税待った無しだと言い続けてきた訳ですから・・・。

つまり、

信ずることは時に、悪を暴走させるのです。

もちろん、
日本のマスメディアの
「ジャーナリストとしての倫理観」
が十二分以上に高ければ、
この「メディアに対する信頼の高さ」
日本の貴重な資産となります。

ですが、そんなものは全く期待できないのは、
筆者の長年の研究で明らかです。

例えば、現代の新聞記者は、
今や「ジャーナリスト」というより
「サラリーマン」になっており、
新聞社も「ジャーナリズム機関」というよりも
「民間企業」に成り下がっている実体が、
下記研究より、実証的に示されています。
https://policy-practice.com/db/3_181.pdf

無論、「ジャーナリズム魂はもう、皆無だ」
とまでは言えないでしょうが、
資本主義が暴走する我が国日本では、
彼らとて資本主義の論理からは、
自由にはなれないのです。

・・・何の因果か、
このメールマガジンや表現者クライテリオンに
目を通している皆さんは、
そこで目にする論調や情報が、
普段、新聞やテレビに溢れている情報とは、
少し趣の異なるものだと、お感じのものと思います。

是非とも、そんな風にして可能な限り、
複数の情報源に目を通すようにして、
異なる意見がある場合には、
どちらが正しいかを、
一度は少しだけでも考えてみる
という習慣を身に着けてもらいたいと思います。

その習慣さえあれば、
あなたの判断の基準(クライテリオン)
少しずつ磨かれ、
メディアが垂れ流すウソに騙されるリスクが、
ぐっと減っていくこととなるでしょう。

国民一人一人のそんな「考える力」を取り戻し、
それを通して一人ひとりの内に作り上げられていく
判断の基準(クライテリオン)だけが、
民主主義における「悪の暴走」を防ぐ、
唯一の資産なのです。

思えば、明治黎明期に、
福沢諭吉が「学問のすすめ」を刊行したのも、
まさにそうした思いからでした。

当方も是非、一人でも多くの「現代」の皆さんに、

本誌「表現者クライテリオン」に

お触れていただきたいと、祈念しています。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

追伸
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コメント

  1. 令和の時代は平成時代からの転換を! より:

    藤井先生に全く同感です。
    日経新聞の長年の日本財政破綻論や朝日新聞の慰安婦問題とか彼等がいかに長年嘘を付きつけたかをその反省とか嘘を言ってきた事を省みずに未だに同じような事を
    言い続けてる新聞を見ると彼らから全く知的誠実性を感じません
    そういう知的誠実性を放棄してる新聞記者の書いてる事や新聞は公器なんだから
    信じられるとか言うのは物凄い危険だし道を誤ります
    知的誠実性を放棄した新聞はアジびら以下だと思います。

  2. chocobo より:

    小生も随分以前は新聞の情報が頼りでした。 家内が朝日新聞を取りたいというので 日経と朝日を取っていました。 1990年前後からです。 ある時 朝日の一面の見出しが 北朝鮮礼賛記事が多いこと 沖縄サンゴ捏造記事で 朝日をやめ 毎日や読売を試しました。日経新聞の経済記事も首をかしげるような記事があり、その点 朝日の経済記事の方が (当然量は少ないですが)まともなことが書いてあると思いました。 その後 2011の震災のあと ネットの情報をよく見るようになり 色々な見方があると思いました。普通の家では複数の新聞を購読するのは無理なのですが、コメダ珈琲店のようなところで複数の新聞を読んでいるという話を聞きました。

    以前は 新聞記者は 文系の学生にとってあこがれの職業といわれていたと聞きました。

    仕事で 記者の方と会う機会が少しありましたが、業界の話を十分理解できる記者はいなかったと思います。結局彼らは どの業界に関しても門外漢です。 ですから 例えば 新聞記者の座談会なんていう企画は 何を話すのだろうと思ってしまい、まったく関心がありません。 

    以上 小生の新聞に関する経験と考えを述べましたが、日本人の新聞に対する信頼度には驚きます。 

    以上です。

     

  3. アスナロ より:

    メディアリテラシーがないのは、教育の問題もあるとは思いますが、日本人自体が下からの革命を経験してないせいもあると思う。例えば、明治維新だって立ち上がった多くが士族であるし、基本的にインテリが主導するパターンが多かった。自称保守派はこの穏便な革命に日本人の良さを見いだそうとする傾きがあるが、僕はそう思わない。それは、民衆の「批判精神」の欠如に起因していると思われるからだ。勿論、「批判精神」がない方が物事は穏便に進みやすく、コンセンサスを得るのは容易だろう。しかし、それが「弱さ」となって現れる場合もあり、最近生じている問題は、その「批判精神」のない「弱さ」に起因しているような気がする。

    • yamatomahoroba より:

      下からの革命云々は関係ありません。何故ならこのグラフ中の英独も下からの革命を経験していないからです。またフランスやアメリカもインテリ主導の革命を経験した国です。

      日本人の批判精神の無さは現代日本社会において『嘘・騙し』が非日常性・非現実性を帯びている事に因るのではないかと思います。

      「公平・公正は常に担保されている筈」という社会共同体への信頼の高さが逆に脆弱性として表れているのでしょう。

  4. 拓三 より:

    信用と依存…

    これは本当に難しい問題。
    私の定義では信用は築くもの。依存は頼るもの。と区別しています。

    この違いは大きく、例えば己が築いたものにヒビが入れば修復しようとするが、頼っているものにヒビが入れば修復の仕方が解らず、その不安感に耐えることが出来ずに破壊を誘発する恐れがあります。今の日本がまさにこれ。戦後日本は米国に依存していたがゆえ己の信用を築いてこなかった。それゆえ米国に対して疑いが出始めるとすべてが不安になりすべてを破壊しようとする。もしくは対処法として米国に対し依存度を深めることで不安感を取り除くか…

    今の日本はデフレの病と依存の病が2つ同時に襲いかかり重度の合併症状態。
    何が真実で何が嘘かも区別がつかない。その判断能力欠如の状態で苦しさ紛れで違う所に依存をもっていく。例えば安倍信者。しかし依存は依存。案の定裏切られ病は悪化。これホンマヤバイ状態。

    藤井はんの仰る様に信(依存)は悪の暴走をもたらします。が、逆に破壊も産み出します。現に民主主義である一人一票性がおかしいと言い出す気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い政党も出てきております。

    しかし、この状況を一挙に打破する武器が藤井はんが押すMMTなのです !
    MMTを社会主義と批判する人がいますが確かに社会主義「的」にも使えます。しかし本質は国家です。民主主義です。国家無くして経済など有り得ないことを現実に証明しているのがMMTです。そして国家、信用は自ら築くものだと経済から訴えているのがMMTなのです。そしてそして戦後日本己が築いた信用が有る事を証明しているのもMMTなのです。そしてデフレ脱却も !
    本来国家を否定する左派ならばMMTは論外です。そして現実を隠します。もし左派がMMTを推進しているならばMMTを理解していないバカか、もしくは左派では無い証明です。ただのレッテル。この計りで日本を見ていれば誰が真実で誰が偽りかが解ります。ほとんどがどちらでもなく重度の病ですけど…

    言いたいことは 信用は築くもの ! で御座います。

  5. 荒川公平 より:

    納得する結果です。日本人の特質を見事に表すデータです。この特質は日本人の遺伝子の問題ではなく、教育の問題かもしれません。多くの革新が、常識を鵜呑みにしない発想から生まれるように、教育は物事を鵜呑みにしないことの重要性を教える必要が有ります。ところが日本の教育は、物事を信じて吸収すること以外を教えません。物事を鵜呑みにする日本人を大量生産しています。しかるにマスメディアの責任は甚大です。しかし、マスメディアは使命の全うより保身に走り、責任を放棄しているかのように見えます。これは大きな罪と言ってもいいかも知れません。こう見てくると国民にも、マスメディアにも問題が有りますが、、まずは、国民が目覚める事が必要です。この事については藤井先生の活動にとても期待しております。

  6. 神奈川県skatou より:

    藤井先生のご活躍を熱く熱く応援しております。

    なぜ・・・

    なぜ日本人は斯様に新聞等の旧来マスメディアを信じているのでしょうか。
    いったいいつから、日本人はこうもマスメディアに依存しているのでしょうか。
    しかも空気(あるいはBGM)でなにかを得た心持になってしまう態度になるのでしょうか。

    もっと良質なメディア(?)が席巻すれば問題は解決するのでしょうか。

    まさしく雑誌クライテリオンの意思のとおり、基準たるものがいつしか欠落した結果、手近で「(戦後の)過去から正しいと認められた(旧)マスメディア」を妄信することが、てっとりばやくて間違いが無くて、自分が他人から笑われない、後ろ指さされない、大丈夫な常識人になれるという、(我々から見れば)頼りないステレオタイプに安住しているのかもしれない。

    NHKと朝日新聞の主張に沿っていれば、いちおうまじめで正しい人に自分がなった気になる。
    それはGHQ下の昭和どころでなく、平成30年を超えて令和の今でもなおかつ、そうなのかもしれません。

    いや、そんなマスコミよりも、自分達には信じているものがある。

    そう言えないぐらい、確かなものがないのが普通過ぎているのかもしれない。なにやら心配になってきました。

    すくなくともその断絶は、終戦になって「すべて大人の言っていたことが嘘になった。そのときすがるべき正しさは、日本に無かった」ということだったのかもしれません。それぐらい根深いものだと、自分には思われます。

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