『表現者criterion』メールマガジン

【藤井聡】今日の「言論活動」は、基本的にいつも「冤罪との闘い」である。

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授) 

こんばんは、
表現者クライテリオン編集長、
京都大学教授の藤井です。

とある仕事の関係で、最近、
「歴史修正主義」について考えることがありました。

歴史修正主義とは、
それを唱える人々が海外では
「リビジョニスト」と呼ばれるもので、
しばしば「極右」勢力であるか否かを識別する際に、
用いられる概念です。

リビジョニスト・歴史修正主義者達の典型的な主張は、
ナチスドイツが実際に働いた悪行非道を
「そんなものは存在していない!」
と否定するというもの。

こういう種類の発言は、
極めて倫理的に問題のあるものだとみなされます。

そして、お国によっては、
その発言を行っただけで、
「刑法違反」と見做され、
「犯罪者」になってしまうこともあります。

ナチスドイツについては、
我々日本人はあまりピンとこないことがありますが、
かつてなら、マルコポーロという雑誌が、
「ナチスドイツのユダヤ人に対するホロコースト」
に疑義を呈する記事を掲載したところ、
海外のユダヤ人団体から抗議を受けて廃刊に追い込まれた、
という、いわゆる「マルコポーロ事件」を
ご記憶の方もおられるかも知れません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AD%E4%BA%8B%E4%BB%B6

こうした状況は、
「ナチスの犯罪」については
「議論をする」ことすらが
「犯罪」となるリスクがあるという状況があることを示しています。

もちろん、
「100%間違いない大量虐殺や戦争犯罪」
についてなら、議論をすることすら犯罪となるという状況は、
正当化し得るものであり、
したがって議論を始める人々を
「歴史修正主義者」
として糾弾することもまた、
倫理的に正当化され得ます。

しかし、あくまでも一般論として申し上げますが、
「神」の視座から観た場合に「えん罪」であるにも関わらず
(犯罪の有無、あるいは、程度に関する)「濡れ衣」を着せられて、
罰せられている事案があったとすれば―――
それは、近代法の基本的精神の下、
ゆゆしき事態だと言わねばなりません。

しかし、この「えん罪」は、
犯罪者と糾弾されている者が
「汚名をそそぐ」ことを目指して闘わざるを得なくなった場合、
極めて難しい戦いを強いられることになります。

なぜならその「えん罪」が一旦社会的通念になってしまった時、
「犯罪者」の証言に対してほぼ誰も耳を傾け無くなると同時に、
「被害者」の証言はほぼ無条件に信頼されがちとなるからです。

筆者がこれまで戦ってきたおおよその言論戦は、
こうした「えん罪」を巡る戦いであったやに思います。

インフラ論については、
筆者がどれだけ客観的なインフラ投資の重要性を論じても、

「どうせ、土建屋の利権でインフラの話してんだろ!?」

という濡れ衣を、常に着せられ続けてきました。

消費増税については、
筆者がどれだけ消費増税の問題を客観的に論証しても、

「消費増税反対論なんて、どうせ住民エゴだ。
 それを主張する論者はしょせん、ポピュリストだよ!」

という濡れ衣を着せられてしまいます。

積極財政論・デフレ脱却論についても、
筆者がどれだけその公益性を論証しようとも

「どうせ、トンカチで公共事業やりたいから、
 ケインズだとかMMTとか、都合のいいの、
 持ち出してきてるだけだろ!?」

という濡れ衣を着せられてしまいます。

大阪都構想の時でも、
客観的な根拠に基づいて反対論をどれだけ展開しても、

「どうせ藤井は、大阪市の利権と繋がってるだけだから」

という濡れ衣を、未だに着せられ続けています。

さらには、一般の方には
あまり知られていないかもしれませんが、
大学の研究で明らかにした公共政策(国土強靭化等)の
実現を目指して、内閣官房やメディアの仕事に従事していると、
学会では、おおよそ、

「まぁ、藤井は、そういうの好きな奴だからなぁ」

とか

「なるほど、金儲けはそうやってやればいいわけね」

なぞという濡れ衣を着せられてしまいます。

こういう発言を耳にした当初の頃、
ちょっと彼らが何言ってるか、全く分からなかったのですが、
どうやら彼らは、当方が、内閣官房やメディアの仕事を、
好きでやってたり、金儲けのためにやってたりと
思っているようなのです。

そもそも真理の追究を目指す学者の一般的感覚からしてみれば、
内閣官房の実務やメディアで分かりやすく話すなんて話は、
砂を噛むような嫌な最悪の仕事なわけですが、
そういう感覚は、彼らには一切分からないのでしょう。

そして、こうした「えん罪」の構造は、

「歴史認識問題」

にも当てはまり得ることになります。

歴史認識問題における「えん罪」の場合、
その濡れ衣を着せられている側が
どれだけその「えん罪性」に関する客観的な証拠を突きつけても、

「どうせお前、自分の罪や罰を軽くしたいから、
 嘘ついてんだろ!?」

と言われてしまうわけです。

・・・

こうした「えん罪」について、
我々は如何に振る舞えば良いのでしょうか?

言うまでも無く、

第一に、それが「えん罪」に過ぎぬ事を、
自らの良心の下、繰り返し繰り返し徹底的に、
自らで論証し続け、その上で

第二に、そうして明らかにした
「えん罪」であることの証拠を、
あらゆる方途で説明し、
「言論」活動という名の
「弁明」活動を続ける他ありません。

そして第三に、
その弁明に対する非難がどれだけ深刻な水準に到ろうとも、
決して心を折ること無く、
そして、前言を一切、撤回することなく
上記の第一と第二の活動を繰り返し続ける他ありません。

(ただし、第四に、もちろん、
自らの勘違いが明らかになった場合には、
即座にこれまでの弁明を謝罪・撤回し、
その責任を取る誠実さが必要です)

・・・・こうした「弁明」を、
敗戦国家日本は、
戦後レジームを作り上げた連合国側に、
しっかりと行ってきたのでしょうか・・・?

筆者には、到底そう思えません。

だとしたら、筆者が言論人である限り、
そして、本誌クライテリオンが言論誌である限り、
自らの、そして我々の良心に賭けて、
上記の第一、第二、第三(そして場合によっては第四)
の取り組みを、延々と続ける他ありません。

読者各位におかれましては、
是非、そうした言論活動を、
ご支援いただけると、とてもうれしく思います。

今後とも、よろしくお願いいたします。

追伸1:
今回の「藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~」では、ゴッドファーザー三部作を起点に「国土」について考えてみました。
https://foomii.com/00178/2019092011000058609

追伸2:
先週、および今週の「ラジオクライテリオン」は、『緊急招集!LIVE版!クライテリオン! 藤井聡 もっと!あるがままラジオ&ライブ!』です。普段と一味違うライブ盤のラジオ。是非、お聞きください!
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1348&v=sxikhybT1G8

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コメント

  1. くらみっちゃん より:

     いくら根拠を示し「冤罪」を解こうとしても濡れ衣を着せ続ける人々はたくさんいます。そのような人々は思考停止してしまっているのでしょう。社会がこれだけアノミー化し、ニヒリズムが蔓延してくるとまたスパイラル的に思考停止するのでしょうね。ですが、1~4の言論活動を続けておられる藤井先生のお話を聴いて、「この奇怪なことは、そういうことだったのか」と身体で分かる人も多くいます。大都会の真ん中で今まさに、諦めて自分も思考停止してしまいそうな人を救い、人生を変えることだってあります。
     編集長日記の「弔わない人が急増した東京」のお話、ぞっとしました。東京だけではありません。都島区や北区は流動人口が多いから「維新ヤレヨヤレヨ」いう人が多い理由、実際に目でみて分かりました。同じものを見たり体験しても、先生の仰る1~4の言論がまったくなければ、心折れていく人間も多いことでしょう。

  2. 横山信行 より:

    ここに記載の通りで、冤罪を晴らすためには大変な時間と労力、精神力が必要となりますね。
    日本人は、まず、GHQやメディア、中国共産党などなどグローバル勢力、財務省、などによって無意識のうちの洗脳されてしまったいるという事に気付くべきだ思う。
    その上で、真っ新な頭で、新たな理論や提言をじっくりと考えることをすべきだと思う。それも急いで!

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