【書評】安倍政権の長期化と制度の関係を問い直す――早瀬善彦

啓文社(編集用)

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皆さん、こんにちは。
「表現者クライテリオン」編集部です。

本日は『表現者クライテリオン』11月号より書評をお届けします。

安倍政権の長期化と制度の関係を問い直す
早瀬善彦

 

川上高志 著

『検証 政治改革なぜ劣化を招いたのか』
岩波書店、2022年2月刊

 

 「アベ政治を許さない」など、安倍政権をめぐる批判的言説においては、安倍総理個人へ矛先が向けられることが多い。この傾向は、「やっぱり安倍さんだ」といった特集を組む保守系の論壇においても同様だ。左右を問わず、これまでの論壇やマスコミは、安倍晋三という政治家個人の言説や行動、思想にのみフォーカスを当て、評価を下していくという手法に陥りがちであった。

 一方、現代日本政治を専門とする学者は、制度という観点から政治を分析する傾向が強い。すでに多くの政治学者が指摘するとおり、第二次安倍政権を安定化させた制度的要因の淵源は、九〇年代に着手され、二〇〇一年に確立した一連の行政改革(それに続く内閣官房の改革)及び九四年に実現した選挙制度の改革であった。本書は、これら制度改革の実態を、コンパクトにまとめた著作である。

 いわゆる橋本行革の目的のひとつは、内閣機能の強化であった。首相は自らが主宰する閣議で「内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる」と規定され、首相の権限が明確化された(本書三八頁)。また、二〇一四年に新設された内閣人事局は、官僚人事に対する首相官邸の力を決定的に強めた。

 選挙制度の改革、なかでも、小選挙区制の導入は、自民党内における権力の所在を大きく変えた。各候補者の立候補のためには政党の公認が必要となり、公選法も政党本位の選挙になるよう改正されたからである。結果として、党の執行部に権限が集中していく。さらには、その権限を背景に、自民党の総裁は閣僚指名などの人事権も強化していくというわけだ(本書五一頁)。

 以上のような制度的変化をフルに活用したのが小泉政権と第二次安倍政権だったという著者の主張は、新制度論的政治学の立場に立つ政治学者とほぼ共通している。ただ、著者は、現在のような自民党一強多弱の政治状況を生み出す要因となった一連の改革について、一貫して否定的にみている。安倍政権下で起きた政権の国会軽視、忖度官僚の出現は、政権による現制度の乱用というわけだ。

 だが、果たしてそう単純化できるのか。本書を通読すればわかるとおり、著者は、そもそも、自民党や維新の会に批判的であり、野党、特に立憲民主党に好意的な立場である(本書一〇七頁)。著者のような政治的スタンスに立てば、たしかに、自民党一強状態をつくり上げた制度改革は「失敗」だったとうつるのだろう。だが、そもそも九〇年代当時、政治改革・行政改革の必要性を高らかに主張していたのは、現在、安倍政権に批判的なマスコミ、政治学者たちであった。さらにいえば、自民一強の背景には、制度さえ上手く活用できなかった旧民主党政権の大失敗がある。

 たしかに、著者のいうように、橋本行革が進めた政治主導の裏には「国民への説明責任の徹底」が求められること、国会改革が未だ実現化していないことは事実である(本書三八頁、五章)。とはいえ、政治は制度のみで決まるわけではない。確立された制度を、時の政権や政治家がいかに上手く使うのかが重要なのである。

 

 

 

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