本日は『表現者クライテリオン』2022年9月号より、保守放談をお届けします。
安倍元首相狙撃事件を受けて最初に思い浮かべたのは、大正から昭和初期にかけての政治テロ(原敬首相、浜口雄幸首相、犬養毅首相の暗殺など)だった。が、次第に、犯人に政治的意図がないらしいことが分かるにつれて、その比喩も後退していった。が、それでも残ったのは、ぼんやりとした不安である。
昭和維新のテロリズムは昭和恐慌が引き金だった。恐慌によって孤独となった個人、その寄る辺なき不安と怨念がテロリズムの源泉を成した。が、それでも、彼らには、その暴力を「政治」へと繋げるだけの意志―余裕があった。が、今回の狙撃犯の手紙には、「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」とあり、ツイッターには「何故かこの社会は最も愛される必要のある脱落者は最も愛されないようにできている」とあったという。それはそのまま日本版ジョーカーの言葉ではないか。果たして、より「貧しい」のは昭和初期なのか、令和の現在なのか。
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『表現者クライテリオン』2022年9月号 『岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?』
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