【島田洋一】石破「拉致対応」に見る背信の歴史

啓文社(編集用)

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超党派の拉致議連初代会長であった石破は、
閣僚に“一本釣り”されると北朝鮮制裁に反対し出した。

日朝交渉の「闇」にうごめく石破

 石破茂という政治家に典型的な「文化的小児病」は、北朝鮮による拉致問題をめぐる対応に最もはっきり表れている。

 具体例を挙げよう。「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、家族会)が繰り返し、かつ明確に反対を表明している「連絡事務所」設置案(反対理由は後述)に、石破は、「反対の声があることは十分承知している」と言いながら、決して取り下げようとしない。

 私は、二〇二四年秋の総選挙に日本保守党から立候補するまで、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(以下、救う会)の副会長を務めていた。家族会と共に活動してきた全国規模の支援団体である。

 また衆議院議員に当選後は、「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(以下、拉致議連)の一員として、従来とは違った形で、しかしより密接に家族会、救う会と連携している。両会の表に出せない本音も踏まえた「質問主意書」も多数出してきた。国会議員の質問主意書には、政府は、閣議決定を経た上で答弁書を出す義務がある。また、所属する衆院法務委員会の場でも、繰り返し拉致問題を取り上げてきた。従って、「連絡事務所」問題の経緯と背後の狙いはよく理解しているつもりである。

 日朝交渉には様々な「闇」がある。その闇にうごめく中心人物の一人が石破である。隠されてきた部分を順次明らかにし、拉致問題を棚上げにした日朝「利権正常化」の動きを潰していかねばならない。

 一般に議員外交は、政府より強い立場を打ち出す必要がある。そのことが政府の交渉力を高める。被疑者に対するときの「バッド・コップ、グッド・コップ」(鬼の警官、仏の警官)の関係と同じである。この点をよく認識していたのが安倍晋三元首相であった。一方、安倍の「真逆」と言えるのが石破である。少し歴史を振り返っておこう。

 

石破があの時、飯倉公館にいた理由

 一九九七年四月、自民党衆議院議員の中山正暉を会長として、超党派の「北朝鮮拉致疑惑日本人救援議員連盟」(以下、旧拉致議連)が設立された。ところが、当初拉致問題に強い姿勢で臨むとしていた中山会長が、同年十一月に平壌を訪問した後、「まず北朝鮮との国交正常化を行った後に拉致問題の解決を行うべき」等々、明らかに北に取り込まれたと思われる言動に転じた。事実上の拉致棚上げ論である。この中山の転向に対して、各方面から批判が噴出し、旧拉致議連は活動休止に追い込まれる。

 この状態を打開するため、二〇〇二年四月、中堅・若手議員が中心となって、旧拉致議連を解散させ、家族会、救う会との連携を掲げた「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」を発足させた。その初代会長の座に就いたのが石破茂である。

 この時点において、最も熱心に拉致問題に取り組んでいた自民党議員は、安倍晋三や中川昭一だったが、安倍は官房副長官、中川は自民党広報本部長と、それぞれ要職にあり動きにくいため、二人よりやや年下で、それなりに保守的な言動を取っていた無役の石破に白羽の矢を立てたのである。

 従って二〇〇二年九月十七日の小泉純一郎首相第一次訪朝時、石破は超党派の拉致議連会長という重要な立場にあった。ほとんどの拉致被害者が死亡という虚偽の情報が伝えられた直後、家族会、救う会、拉致議連が合同で記者会見を開いたが、その席でも、石破は最前列で横田滋家族会代表の隣に座っていた。

 拉致問題が衝撃的な形で動いた瞬間、石破は歴史の中心にいたわけである。率先、宥和勢力と対峙し、制裁発動など圧力を強化する闘いの先頭に立つべきであった。

 ところが石破は、、…続きは本誌にて…


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