昨年末には、
当方の本務であります学究、言論活動に注力するため、
6年間勤めて参りました内閣官房参与職を
辞任いたしました。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/1620366204730983
ついてはこれからは、大学での研究教育はもとより、
本メルマガも含めた、
表現者クライテリオンの言論活動をさらに、
充実させて参りたいと思います。
本年も、何卒、よろしくお願いいたします。
・・・
ところで、当方が勤めておりました内閣官房の職務は、
(総理・各大臣も含めた)政府関係者への「アドヴァイス」。
(そもそも内閣官房参与の英語名は、
special advisor to the cabinet、です)
言うまでもありませんが、
適切な政策運営において、
適切な「アドヴァイス」は極めて重要。
例えば、
武士としての心得をまとめた「葉隠」の中には、
次のような一節があります。
「人に意見をして疵(きず)を直すと云ふは
大切なる事にして、
然も大慈悲にして、御奉公の第一にて候。」
(訳:意見してその人の欠点を直す、ということは大切なことであり、それは慈悲心であり、そして、まず最初になさねばならないご奉公である)
とはいえ、アドヴァイスというのは
決して簡単なものではありません。
なぜなら、「聞く耳を持つ」という状況が訪れるまでは、
何を言っても、絶対に聞き入れられないから、です。
例えば、上記の「葉隠」では、
アドヴァイスというものは、
下記のようなものであるべきだ、
と指摘されています。
「渇く時水を飲む様に請合せて、疵を直すが意見なり。」
(訳:喉が渇いた時に水が飲みたくなるように考えさせ、
そうした上で欠点を直していく、
というのが意見というものである。)
じゃぁ、どうすれば、
「渇く時水を飲む様に」
アドヴァイスを聞くようになるのでしょうか・・・?
これについて、「葉隠」は、
信頼関係や、
様々な心理学を踏まえた適切なコミュニケーションが
必要である旨が記載されています。
原文を載せますと・・・
「此方の言葉を平素信用せらるる様に仕なし候により、さて次第に好きの道などより引き入れ、云ふ様種々に工夫し、時節を考へ、或は文通、或は雑談の末などの折に、我が身の上の悪事を申出し、云はずして思ひ当る様にか、又は、先ずよき処を褒め立て、気を引き立つ工夫を砕き・・・」
いやぁ、凄い話です。
(長くなるので逐語訳は割愛しますが)
ただ単に感情的な批判は愚の骨頂、
上手に上手に伝えなさい、という話。
若い頃、これを読んだ時、
ホント、衝撃を受けました。
以来、人にアドヴァイスするとき、
とりわけ目上の人にアドヴァイスするときは、
できるだけ、
この言葉通りにしたい・・・と思って参りました。
(※ ホント、難しいですが 苦笑)
・・・が、それだけでは限界があります。
なぜなら、
「世間一般の空気」
が、助言内容と正反対の場合、
なかなか聞き入れられないケースが、
多々あるから、です。
逆に言うなら、多くの人は、助言内容が、
「世間一般の空気」と同じ雰囲気の場合に限り、
耳を傾けるのです。
「世間一般の空気」と全然違う助言をした場合、
その助言がどれだけ理性的で、実証的で、
しかも説得的であっても、
「藤井君、なんか君、
言ってることおかしいなぁ。
もう、メチャクチャだよなぁ。」
となってしまうことが、実に多いのです。
無論、そういう時ほど、先ほど紹介した様な
「葉隠」作戦
を全面的に展開する他ありません。
そうやって、アメリカン・フットボールの試合で、
少しずつ少しずつ前進して、
「ファーストダウン」(←10ヤードの前進)
を「ゲット」していくように、
初年度アベノミクス第二の矢13兆円や、
600兆円経済目標、
二度の消費増税延期、
PB目標の5年延期
国土強靱化、
3年インフラ緊急対策7兆円、等々・・・
「短い前進」を一つずつコツコツと「ゲット」
しようとしてきた訳です。
・・・が、限られた時間の中では、
どうしても限界はあります。
そもそもアメフトで重要なのは、
「ファーストダウン」を取ることでなく、
試合に勝つこと。
だから、特定の作戦に限界が見えたら、
「変更」することも重要となります。
そして「適切なアドヴァイス」の最大の障害は、
「世間一般の空気」なのですから、
ここをどうにかする、という作戦が、
極めて重要だ、となるわけです。
おおよそ「世間一般の空気」なるものには、
驚くほど大量のウソやデマが入り込んでいます。
・日本は借金で大変ダ~
・消費増税は待った無しダ~
・人手不足だから移民は必要ダ~
・公共事業なんて無駄ばかりダ~
・人口が減るからもう成長なんて無理ダ~
・古い日本的体質は改革せにゃイカンのダ~
・・・・
まぁ、あれもこれも、
数え上げればキリがありませんが、
これらは全部デマであり、ウソ。
こんな「世間の空気」があるようでは、
どれだけ公正中立なアドヴァイスを繰り返そうが、
その影響は「限定的」になる他ありません。
かくなる上は、
世間の空気を変えていく努力、
つまり、言論活動を通した、
情報戦争への全面的な注力が必要になる・・・・
という次第です。
これはもちろん、
アメフトで言えば、相当な「ロングパス」。
成功すればメリットはでかいが、
失敗するリスクはかなり高い・・・というもの。
ですが、もはや事、ここに到れば、
「ロングパス」作戦に賭けてみるのも、
手ではないか、という次第です。
何と言っても、
世界経済がここまで混沌としている中、
我が国で「10%消費税」が実現すれば、
日本経済が奈落の底に凋落することは決定的。
アメフトで言うなら、
勝利が絶望的となる絶体絶命状況となります。
何とかここは踏ん張って、
消費増税を凍結し、あわよくば、
(敵ボールをインターセプトして
逆転タッチダウンを決めるように)
大型景気対策を敢行して、
デフレ脱却を果たさねばなりません。
・・・ですが、
どんなスポーツの試合でも、一寸先は闇。
何がどうなるのかは、
誰にも分かりません。
・・・が、それは「敵」とて同じこと(!)。
2019年、戦況はかなり絶望的ですが、
一縷の望みはもちろん未だ、残されています。
幸か不幸か、試合・・・というか戦いは未だ未だ続きます。
(もちろんそれは、こちらが白旗を上げるまで)
「猪突猛進」なこの一年、
何とか針の穴を通すような「ロングパス」を
成功させるためにも、
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!
追伸:
今年から、KBSラジオをリニューアル。題して、「藤井聡のあるがままラジオ~週刊クライテリオン」。関西方面の方は、毎週月曜日午後9時半~「KBS京都」にて、全国の方は、ラジコ、あるいは下記チャンネルご登録の上、ご聴取ください。
https://www.youtube.com/channel/UC9GNcWzLq0k7io20AHjN4qQ
執筆者 :
CATEGORY :
NEW
2024.11.21
NEW
2024.11.19
NEW
2024.11.18
NEW
2024.11.18
NEW
2024.11.15
2024.11.14
2024.11.18
2024.11.15
2024.11.14
2024.11.21
2024.11.18
2023.12.20
2024.08.11
2018.09.06
2018.07.18
2024.11.19
コメント
はじめまして、藤井聡様
日本が財政出動を100兆円しても200兆円してもハイパーインフレになんかならないと思いますが、今のように増税、緊縮財政を続けると供給基盤が壊れて悪質なインフレが起こるような気がしますがどうでしょうか。