『表現者criterion』メールマガジン

【藤井聡】ますます絶望的な2019年。「葉隠」作戦から「ロングパス」作戦へ!

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授) 

昨年末には、
当方の本務であります学究、言論活動に注力するため、
6年間勤めて参りました内閣官房参与職を
辞任いたしました。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/1620366204730983

ついてはこれからは、大学での研究教育はもとより、
本メルマガも含めた、
表現者クライテリオンの言論活動をさらに、
充実させて参りたいと思います。

本年も、何卒、よろしくお願いいたします。

・・・

ところで、当方が勤めておりました内閣官房の職務は、
(総理・各大臣も含めた)政府関係者への「アドヴァイス」

(そもそも内閣官房参与の英語名は、
special advisor to the cabinet、です)

言うまでもありませんが、
適切な政策運営において、
適切な「アドヴァイス」は極めて重要

例えば、
武士としての心得をまとめた「葉隠」の中には、
次のような一節があります。

「人に意見をして疵(きず)を直すと云ふは
大切なる事にして、
然も大慈悲にして、御奉公の第一にて候。」

(訳:意見してその人の欠点を直す、ということは大切なことであり、それは慈悲心であり、そして、まず最初になさねばならないご奉公である)

とはいえ、アドヴァイスというのは
決して簡単なものではありません。

なぜなら、「聞く耳を持つ」という状況が訪れるまでは、
何を言っても、絶対に聞き入れられないから、です。

例えば、上記の「葉隠」では、
アドヴァイスというものは、
下記のようなものであるべきだ、
と指摘されています。

「渇く時水を飲む様に請合せて、疵を直すが意見なり。」

(訳:喉が渇いた時に水が飲みたくなるように考えさせ、
そうした上で欠点を直していく、
というのが意見というものである。)

じゃぁ、どうすれば、
「渇く時水を飲む様に」
アドヴァイスを聞くようになるのでしょうか・・・?

これについて、「葉隠」は、
信頼関係や、
様々な心理学を踏まえた適切なコミュニケーションが
必要である旨が記載されています。

原文を載せますと・・・

「此方の言葉を平素信用せらるる様に仕なし候により、さて次第に好きの道などより引き入れ、云ふ様種々に工夫し、時節を考へ、或は文通、或は雑談の末などの折に、我が身の上の悪事を申出し、云はずして思ひ当る様にか、又は、先ずよき処を褒め立て、気を引き立つ工夫を砕き・・・」

いやぁ、凄い話です。

(長くなるので逐語訳は割愛しますが)
ただ単に感情的な批判は愚の骨頂、
上手に上手に伝えなさい、という話。

若い頃、これを読んだ時、
ホント、衝撃を受けました。

以来、人にアドヴァイスするとき、
とりわけ目上の人にアドヴァイスするときは、
できるだけ、
この言葉通りにしたい・・・と思って参りました。
(※ ホント、難しいですが 苦笑)

・・・が、それだけでは限界があります。

なぜなら、

「世間一般の空気」

が、助言内容と正反対の場合、
なかなか聞き入れられないケースが、
多々あるから、です。

逆に言うなら、多くの人は、助言内容が、
「世間一般の空気」と同じ雰囲気の場合に限り、
耳を傾けるのです。

「世間一般の空気」と全然違う助言をした場合、
その助言がどれだけ理性的で、実証的で、
しかも説得的であっても、

「藤井君、なんか君、
 言ってることおかしいなぁ。
 もう、メチャクチャだよなぁ。」

となってしまうことが、実に多いのです。

無論、そういう時ほど、先ほど紹介した様な
「葉隠」作戦
を全面的に展開する他ありません。

そうやって、アメリカン・フットボールの試合で、
少しずつ少しずつ前進して、
「ファーストダウン」(←10ヤードの前進)
「ゲット」していくように、

初年度アベノミクス第二の矢13兆円や、
600兆円経済目標、
二度の消費増税延期、
PB目標の5年延期
国土強靱化、
3年インフラ緊急対策7兆円、等々・・・

「短い前進」を一つずつコツコツと「ゲット」
しようとしてきた訳です。

・・・が、限られた時間の中では、
どうしても限界はあります。

そもそもアメフトで重要なのは、
「ファーストダウン」を取ることでなく、
試合に勝つこと。

だから、特定の作戦に限界が見えたら、
「変更」することも重要となります。

そして「適切なアドヴァイス」の最大の障害は、
「世間一般の空気」なのですから、
ここをどうにかする、という作戦が、
極めて重要だ、となるわけです。

おおよそ「世間一般の空気」なるものには、
驚くほど大量のウソデマが入り込んでいます。

・日本は借金で大変ダ~
・消費増税は待った無しダ~
・人手不足だから移民は必要ダ~
・公共事業なんて無駄ばかりダ~
・人口が減るからもう成長なんて無理ダ~
・古い日本的体質は改革せにゃイカンのダ~
・・・・

まぁ、あれもこれも、
数え上げればキリがありませんが、
これらは全部デマであり、ウソ

こんな「世間の空気」があるようでは、
どれだけ公正中立なアドヴァイスを繰り返そうが、
その影響は「限定的」になる他ありません。

かくなる上は、
世間の空気を変えていく努力
つまり、言論活動を通した、
情報戦争への全面的な注力が必要になる・・・・
という次第です。

これはもちろん、
アメフトで言えば、相当な「ロングパス」

成功すればメリットはでかいが、
失敗するリスクはかなり高い・・・というもの。

ですが、もはや事、ここに到れば、
「ロングパス」作戦に賭けてみるのも、
手ではないか、という次第です。

何と言っても、
世界経済がここまで混沌としている中、
我が国で「10%消費税」が実現すれば、
日本経済が奈落の底に凋落することは決定的。

アメフトで言うなら、
勝利が絶望的となる絶体絶命状況となります。

何とかここは踏ん張って、
消費増税を凍結し、あわよくば、
(敵ボールをインターセプトして
 逆転タッチダウンを決めるように)
大型景気対策を敢行して、
デフレ脱却を果たさねばなりません。

・・・ですが、
どんなスポーツの試合でも、一寸先は闇

何がどうなるのかは、
誰にも分かりません。

・・・が、それは「敵」とて同じこと(!)

2019年、戦況はかなり絶望的ですが、
一縷の望みはもちろん未だ、残されています。

幸か不幸か、試合・・・というか戦いは未だ未だ続きます。
(もちろんそれは、こちらが白旗を上げるまで)

「猪突猛進」なこの一年、
何とか針の穴を通すような「ロングパス」を
成功させるためにも、
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!

追伸
今年から、KBSラジオをリニューアル。題して、「藤井聡のあるがままラジオ~週刊クライテリオン」。関西方面の方は、毎週月曜日午後9時半~「KBS京都」にて、全国の方は、ラジコ、あるいは下記チャンネルご登録の上、ご聴取ください。
https://www.youtube.com/channel/UC9GNcWzLq0k7io20AHjN4qQ

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