【藤井聡】実に愚かな「消費増税」問題を、「反緊縮」拡大のチャンスに。

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

コメント : 2件

この週末、

「山本太郎×藤井聡×松尾匡
本当に日本を再生できる
みんなのための財政政策 Part3」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/440034

というシンポジウムに登壇しました。

経済学者の松尾匡先生、
参院議員の山本太郎先生は共に、
『別冊クライテリオン:消費増税を凍結せよ』
にて、執筆・対談等頂いた先生で、

今回のシンポジウムでも、
「消費増税」問題を中心に議論しました。

予定していた定員を
大幅に上回る方にご来場いただき、
大いに盛り上がる三時間となりました!

このシンポジウムで一番深く感じたのは、
これまで、ともすれば「ありがち」と
言われてしまいかねない

「消費増税」反対

の運動が、今、確実に、

「反・緊縮」

の運動へと進化している、というところ。

「緊縮」というのは、
政府の財政のあり方の態度の一つで、
兎に角、カネを使わない、という態度です。

増税ばかりやって、支出をほとんど使用としない・・・
そういう「ケチ」な態度を「緊縮」といいます。

ここ数十年、日米欧の先進諸国では、
この「緊縮」「ケチ」な態度こそが、
「正しい政府の振る舞いだ」
という思い込みが、エリート層の間に浸透しており、
それが各国経済の低迷、貧困、格差拡大を
導いている―――というのは、
これまで何度も指摘してきた通り。
(例えば、http://ur0.biz/MCc2

こうした緊縮=ケチに対する反発の象徴が
フランスの「黄色いベスト運動」
であり、かつ、これが今、急速に世界的に
拡大しつつある・・・というのが世界の現状です。
https://jp.reuters.com/article/yellow-vest-euro-zone-bond-idJPKCN1PA0HE?fbclid=IwAR00mKN3WHVD0BLxtjQnQQH9lPtIiB_IFipKpdV0CJ-AGvgcASMhqM8Skic

そして、我が国日本の今回のシンポジウムでは、
この「緊縮」という考え方それ自体に対して、
批判する議論が、大いに盛り上がったわけです。

そもそも、このシンポジウムのタイトルが、
「本当に日本を再生できる みんなのための財政政策」
であるところが、象徴的ですよね。

では、消費増税反対と反緊縮では、
どのような違いがあるのか。

まず、「消費増税反対!」という運動だったら、
増税推進派の人達が、

「どうせ、カネを払いたくない市民が、
わがまま言って反対してんだろ?」

と言って、簡単に片付けてしまいがち、です。

そして、挙げ句の果てに、

「こういう“わがまま”な国民の声を押し切って、
ニッポンの未来のために
消費税を断行するのが、
ホントの政治っていうモノなのだ!!!」

という訳の分からない「倫理観」に火をつけ、
増税推進派をさらに加速してしまう―――
という側面が、あったのです。

つまり、「消費増税・反対」の声が
大きくなれば大きくなるほど、
(保守オヤジにありがちな)増税推進派の
「増税せにゃいかん!」
という思いを、
激しく「たぎらせて」しまうのです。

「え“・・・ちょっとちょっと、
おじさん、おじさん・・・
ひょっとして、自分、アホなん・・・?」

と言う言葉がついつい、
口をついて出そうになってしまうのですが・・・
(注:ちなみに「自分」というのは、
関西弁で「あなた」という意味です)

そういう手合いが
(主としてホシュ親父として)
掃いて捨てるほど生息してるのが、
霞ヶ関や永田町、丸の内や大手町っていう街。

しかし、こういう「ホシュ親父ども」を
黙らせてしまう潜在力が、

「反緊縮」

にはあるのです。

何といっても、消費税反対と違って、
「反緊縮」が反対しているいのは、
消費税だけではありません。

「政府の態度」

それ自身を批判するものなのです。

つまり、

「政府の緊縮というケチな態度のせいで、
日本全体がダメになってるじゃないか!」

という、
いたって公的な、パブリックな主張が、
「反緊縮」の基本なのです。

だから、「消費増税反対」よりも「反緊縮」の方が、

「どうせ、わがままで、反対してんだろ?」

と言われ難いのです。
ついては、「消費増税反対論者」は、

私の議論は、「反緊縮」の議論なのです

という一言を是非、
付け加えていただきたいと思います。

そうすれば、自らの主張は決して、
「プライベートなわがまま」ではなく、
「パブリックな公論」なのだという事を明確化し、
その主張を強化できるなるわけです。

そして実際、今回はまさに、
そういう方向の運動が展開され始めています。

今回ご一緒した松尾匡先生は、
「反緊縮」と言う理念を主張する「議員」
に「薔薇マーク」を提供する

「薔薇マーク」運動
(ばらまーく)

を始めておられます。
https://rosemark.jp/

「反緊縮」を支援する有権者は、
「薔薇マークを掲げる議員」に投票すれば、
それで、「反緊縮」の運動支援ができるという次第。

同じく、シンポジウムでご一緒した
山本太郎議員も、
SNS上の自らのページに、
「反緊縮」
というキーワードを明記し、
街頭演説でも常に、
この反緊縮の論調を訴えておいでです。
http://twitcasting.tv/yamamototaro0/movie/481185027

・・・

とは言え、
一般の方には「反緊縮」という言葉は、
少し難しい言葉だと、思います。

ですが、「消費税」については、
誰もが多かれ少なかれ、
関心をお持ちだと思います。

ついては、一人でも多くの国民に、
「消費税」
という問題を入り口に、
少しだけでも日本全体の事について
思いを巡らしていただき、

「『緊縮』という、病的な思い込み」

こそが、今、
日本を衰弱させ続けているのだ―――
という「真実」を
僅かなりとも認識いただきたいと思います。

さもなければ、
隣国中国がますます膨張し、
北朝鮮や韓国から様々な圧力をかけられ、
ロシアには北方領土で
煮え湯を飲まされ続ける一方、
かつて栄華を極めた日本企業が
敗北し続ける―――
という状況に
歯止めがかからなくなるでしょう。

曲がりなりにも
「民主主義」を標榜するわが国が、
こうして激化していく国際競争の中で
生き残っていくためには、
国民が本当の事実、真実を
しっかりと認識する他に
道はないのです。

この「消費増税」というピンチを
チャンスに変えるためにも、
この愚かしい機会を、
「反緊縮」の考え方を広める絶好の機会
と捉える姿勢が今、
求められているのです。

追伸1:
本シンポジウムの動画は全て、下記からご覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/440034

追伸2:
今年からリニューアルした、KBSラジオ「藤井聡のあるがままラジオ~週刊クライテリオン」。是非、下記チャンネルご登録の上、ご聴取ください。
https://www.youtube.com/channel/UC9GNcWzLq0k7io20AHjN4qQ

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コメント

  1. 藤井和克 より:

    いつも貴重なご発信有難うございます。
    失われた20年とか30年はどうして放置されたかというと、「日本人の真面目さが仇になった」象徴と思います。
    つまり、『稼いだ以上に使う』ことの抵抗感が災いしています。ただし、個人の基準と国家の基準は違うという点が決定的に問題を大きくしています。
    目的は、デフレ脱却してゆく(経済成長を継続的にしてゆく)為に、先ずは政府が使って、有効需要(消費+投資)を大きくし、それが国民の所得を増やし、結果的に消費が増える。という循環に拍車をかけることだと思います。
    一般の日本人がそれでも抵抗感を禁じ得ないのは、具体例がかけているからだと感じ、『重税感の高い北欧ではどのように政府支出をしているのか。どのような経緯で現在の消費税(20%を超える)にいたったのか。それでも、
    経済成長をしているようである(日本に比べて)』。勿論、国柄(高福祉・高負担、小さい経済規模、輸出主導型等々)が違うので一概に言えないとは思いますが、他国での実例である程度納得し得ることがらで実証してもらうとありがたいです。もっと極論すれば、リーマンショック後の中国の経済政策は、ある意味日本と正反対の対策を採り少なくとも日本よりは、政策としては真っ当な方策だと考えます。

    • 杉山 隆 より:

      藤井和克さんと同様に「他国での実例である程度納得し得ることがらで実証してもらうとありがたいです。」と思います。
      その後、何らかのメッセージは得られたのでしょうか?
      北欧に関する見解はどうなのでしょう。
      まさか、高福祉を目指していないのではないと思うが?

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