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【藤井聡】札幌で考えた「危機と対峙する保守思想」~札幌・表現者シンポジウムより~

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

みなさんこんにちは、
表現者クライテリオン編集長、京都大学の藤井聡です。

表現者クライテリオンでは、
今年の2月には「創刊記念シンポジウム」を
東京で開催いたしましたが、
これを皮切りに、全国でシンポジウムを
開催していくことを考えています。

そしてこの度、5月12日に札幌にて、

 シンポジウム:「保守とは何か」
  -国家的危機と対峙するために

を開催いたしました。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/1326695100764763

当日は東京でのシンポジウムと同規模となる、
約150名の皆さんにご参加いただき、
盛況の内に開催することができました。

当日ご尽力頂いた、
札幌の関係者の皆様に、
心より感謝申し上げたく存じます。

このシンポジウムでは、
当方と柴山・浜崎・川端編集委員の四人が登壇し、
柴山さんの司会で、二時間ほど、
保守や国家的危機、
とりわけ特に激しく衰弱し続けている「北海道」の危機について、
それぞれの視点からディスカッションをいたしました。

それぞれの議論が有機的に重なり、
とても意義あるシンポジウムになったものと、
登壇している当方として大いに感ずる時間となりました。

その議論の概要をごくごく簡単にご紹介すると・・・

(1)
日本は今、とてつもない危機の中にある。
経済不況は長らく続き、
未来への投資は低迷し続け、
日本全体が凋落し、
「若者」を中心として国民は貧困化した。
中でも「地方」の凋落は凄まじく、
北海道をはじめとした日本の各地方の疲弊は、
凄まじく進行した。
かくして、「地方の若者」は、著しく低い所得を強いられ、
目を覆うばかりの惨状の中に突き落とされ、
夢も希望も潰えるような、酷い時代を迎えている。

(2)
ただし、この状況を改善するのは、
政策論的には何も難しくは無い。
政府による「大規模な財政出動」を図ればよいだけである。
それができれば、
デフレ不況は終わり、
民間の投資も誘発され、
地方や若者の貧困も緩和、解消され、
日本は再び成長していくことができる。

(3)
だけど、それが全く行われる気配はない。
なぜなら、そんなデフレを終わらせる
大規模財政政策をやるために、
それを阻もうとする政治勢力(財務省さんを中心とした緊縮財政勢力)と、
本気で戦おうとする政治勢力が、存在しないから。

(4)
なぜ、本気で「日本のために戦おう」とする勢力がいないのかと言えば、
(女の人達はさておきまして 笑)
「戦後日本の空間」の中で飼い慣らされた日本の男達は、
さながら「家畜」の様になり、
「何かを守るために戦う」ということを忘れてしまったからである。
そんな家畜達が、日本を救うために、わざわざ
強大な力を持つ財務省を中心とした緊縮財政派と、
本気で戦うはずなどない。

(5)
じゃぁ、なぜ、日本の男達が
そんな「家畜」の様な存在になったのかと言えば、
「憲法九条の第二項」で規定されているように
「日本を守るために,軍事力を持つことを放棄」
してしまったから。
つまり今の日本の憲法九条第二項は、
「守るべき伝統や文化、さらには、妻や子供達を
命をかけて守ることを『しない』」
と宣言しているわけで、
この第二項がある限り、
日本の男達の「家畜化」は止まらない。

(6)
ところが、憲法改正の議論の中でも、
「日本の男達の家畜化を回避するため、二項を削除/修正せよ!」
と叫ぶ議論はほとんど聞こえてこない。

(7)
・・・ということで、
日本の男達は戦後70年以上の時間を経て、
あらかた「立派な家畜」になってしまったわけで、
そうなれば、
女子供を助けるために何かを賭けて戦おうとする政治勢力が、
日本の中で育たなくなるのも致し方無い。
だから、このままだと、日本は衰退し、
外国から搾取され、
未来の若者達は今よりもさらに酷い状況にたたき落とされてしまうことは、
残念ながら避けられないでしょう―――

(8)
ただし、この世の中に生まれ落ちてしまった私達としては、
絶望ばかりしていても仕方ない。
できるだけの事をできるだけやっていく他無い。
例えば、北海道なら、
最低限のインフラ(第二青函トンネル、新幹線旭川線など)の整備や
農業振興
そして、それらを進めるための国勢への働きかけと、
それぞれの地域における
大小様々な地域プロジェクトの立ち上げと展開―――
こうした事を徹底的にすすめ、
「生きて行くこと」が何よりも大切である。

・・・・

これが、このシンポジウムの議論の大きな流れ、でした。
この議論の特徴は、

(1) 日本の危機論
(2) 経済政策論
(3) 地方創生・くにづくり/まちづくり論

だけでなく

(4) 日本人(とりわけ男性)の精神状況論
(5) 憲法問題

が全て有機的に組み合わさっている、と言うところにあります。

普段見聞きする議論は、
(1)だけだったり、
(2)だけだったら、
(3)だけだったり・・・
するのですが、この表現者の特徴は、
これらが全て一つのストーリーの中で展開出来ている点、
にあるわけです。

(2)や(3)の経済論や地方創生論の議論の中で、
(5)の憲法問題を持ち出すと、
(あるいは、逆の事をすると)
多くの人が面食らって、
場がしらけてしまったりするのですが――
表現者ではそういう事が全く無いところが、
ホントにうれしい限り。
ですから登壇している当方としても、とても
楽しく、意義ある(ストレスの無い!)、議論となった次第です。

ちなみに今回のシンポジウムは、
この(1)~(8)に加えて、

(9)札幌コンカリーニョでの、夜10時~明け方にかけて、
札幌の地元ミュージシャン、ハシモト・コウさんを交えた
オールナイトライブ、Night Communicationも開催され、
大いに盛り上がる・・・というオマケまでついておりました。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/1335818016519138

このライブ、当初の想像以上に盛り上がり、
昼間の絶望的な状況認識の全てを吹き飛ばす
暑い暑い夜となりました(!)。

(※ お陰様でホテルについたのが、
午前五時過ぎとなった次第ですw)

ちなみにこのライブ空間、「コンカリーニョ」というイベントホールなのですが、
まさに、上記の議論(8)で指摘した
「大小様々な地域プロジェクト」の一つとして、
札幌の夜を大いに沸かせている空間。

こうした取り組みを一つ一つ積み重ねていけば、
我が国の中でどれだけ家畜が増殖しようが、
彼らに押しつぶされずに人として立派に楽しく(!)
生きて行くことができそうだなぁ―――と改めて感じた次第です。
http://www.concarino.or.jp/

なお、今度は8月20日に、
北から南に一気に下って「沖縄」で、
シンポジウムを開催する予定です。

ご関心の方は、沖縄の方はもちろんのこと、
それ以外の地域の方も夏休み旅行もかねて、
是非、「沖縄遠征」もご検討下さい!

追伸1:
前回の週刊ラジオ表現者はまさに、このシンポで取り上げた
『「日本の借金」のウソが、日本を滅ぼします。』
というお話。家畜達と戦ってみたい――という方は是非まずは、彼らの「ウソ」をしっかりとご認識下さい!
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1517&v=3mTicXU6RYI

追伸2:
ちなみにニコニコ動画はこちら:http://www.nicovideo.jp/watch/sm33175475
(そして、今週の一曲はスガシカオの「黄金の月」この曲が、背筋がぞっとする、どれだけ恐ろしいウソについて歌っているかにご関心の方は、このニコニコ動画、ご覧になってみて下さい)

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