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【藤井聡】今、求められる「スーパー堤防」の真実 〜堤防が要らないくらいに本当に安全な「かわまちづくり」〜

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

(1)国難をもたらす三大都市圏の大洪水

この度の西日本豪雨災害は、
我が国の国土の脆弱性を
改めて浮き彫りにしました。

今、何よりも必要なのは、
迅速な救護救援と復旧ですが、
これと同様の被害を
繰り返さない為の
国土の「強靱化」もまた、
強く求められています。

とりわけ我が国の最大のアキレス腱
三大都市圏の大河川。

それらの決壊の被害総額は
10兆円超から、
最悪「60兆円」以上にも達する
土木学会は、試算しています。

(2)家康は、江戸を「首都」にするために利根川を作った

だから私達日本人は、
こうした大河川に、
数百年、数千年の時間をかけて
防災投資を繰り返してきたのです。

例えば、徳川家康は、
江戸を「首都」として繁栄させるためには、
「利根川」が江戸のど真ん中で
頻繁に「洪水」を巻き起こしてしまう状況の
解消が絶対必要だと考えていました。

逆に言えば、
秀吉に「僻地」関東に追いやられた苦境を
逆手に取るためには、
「洪水」が頻発する江戸の「洪水対策」を
徹底的に進める他に道は無い、
と、家康は考えていました。

そして家康は、
利根川が江戸のど真ん中を通って、
「東京湾」に流れ込んでいるという状況が
洪水の根本的な原因だと分析。

だから彼は、
江戸の「北部」から千葉県の「銚子」まで
新しい「河道」をつくって、
利根川を「太平洋」に流出させるようにする、
という巨大な土木プロジェクトを敢行したのです!
http://www.ktr.mlit.go.jp/tonejo/tonejo00185.html

つまり今の利根川は、
首都・江戸を守る為に
家康が作りあげた「人工河川」なのです。

(3)高度に発展した近代都市を守るためには、新しい治水事業が必須

この例以外にも、
大阪でも名古屋でも、
何百年もかけて、
それぞれの都市を守る
様々な「土木プロジェクト」が
繰り返されてきたのですが・・・・

今の高度化した都市を守る為には、
これまでの旧来式の「治水対策」だけでは、
不十分になってきました。

現代の都市は、過度に近代化、
高度化してしまったからです。

結果、洪水が起こった時の被害のレベルが
各段に大きくなってしまい、
一発の洪水が、国難をもたらし得る状況に
なってしまいました。

事実、土木学会の試算は、
まさにその危機を明らかにしています。

しかも、海水の温度上昇のあおりを受け、
過去に経験したことの無いような
超巨大な「メガ台風」級の豪雨が、
我が国を襲うようにもなっています。

この新しい時代に対応するための、
新しい「治水事業」がいま、求められているのです。

(4)今、求められる「スーパー堤防」。それは、堤防が要らないほどに安全なまちをつくる「かわまちづくり」です。

そんな中で、21世紀の今、
強く求められているのが
「かわまちづくり」です。

これは川沿いのエリア全体「かさ上げ」し、
その上に「まち」をつくるという壮大な構想です。
http://www.kkr.mlit.go.jp/yodogawa/activity/maintenance/super/index.html

この構想は、
しばしば「スーパー堤防」とも呼ばれ、
「事業仕分け」などで
激しい批判に曝されることもあったのですが・・・
https://www.j-cast.com/tv/2010/10/29079484.html?popin=recommend

それはむしろ「いわゆる堤防」が
要らなくなるくらいに安全なまちを作る、
「ゼロ堤防まちづくり」とも言い得る、
画期的なアイディアだったのです。

兎に角これが出来れば、
「堤防決壊」による洪水が絶対起きなくなります。

同時に、
人が巨大な堤防の上に暮らし始めるわけで、
その結果、
「人と川との間に立ちはだかる障害物」
が無くなり、
私達と川の距離がグッと近づくことにもなります。

だからそれは、ひとたび完成すれば
「安全」

「川と交わる豊かな暮らし」
の双方を実現させる、
現代の治水技術の最高到達点なのです。

しかも、それが「一部」完成するだけでも、
その完成部分だけは「絶対に浸水しない」エリアになり、
周辺住民が「避難」する「命山」にもなるのです。
http://jcc.jp/news/13687851/

だから、21世紀の日本の大都市を安全で、
豊かな都市につくり変えていくために、
今こそ、「かわまちづくり」あるいは「ゼロ堤防まちづくり」
強く、求められています。

(5)洪水に破壊された「荒廃都市」をつけ回さないために

繰り返しますが、
今の東京があるのは、
家康の巨額の「防災投資」を
行ったからです。

今ここで私達が何もしなければ、
巨大洪水によって破壊され、
「荒廃しきった都市」という「負の資産」を、
後生に「つけ回し」することになるでしょう。

私達の命を守るために、
子々孫々の命を守るために、
そして、私達の都市、日本全体を守るためにも、
今、何をすべきなのかが、
強く問われています。

追伸:危機と対峙する保守思想誌『表現者クライテリオン』では、こうした自然災害の危機をはじめとした、様々な「国家的危機」の問題を思想的かつ実践的に論じています。こうした問題を、現代人としてしっかりと考えるためにも、是非、じっくりとご一読ください。
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