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【鎌田浩毅/柴山桂太 対談】二〇二〇年代後半は世界全体が崩れていく

柴山桂太,資本主義,経済

From 啓文社(編集用) 

今回は番外編として、『表現者クライテリオン』のバックナンバーを一部特別公開します。

公開するのは、「コロナ」が導く社会崩壊」特集に掲載の、鎌田浩毅先生と本誌編集部柴山桂太の対談(前編)です。

『表現者クライテリオン』では、毎号様々なテーマを取り扱っています。

ご興味ありましたら、ぜひ本誌を手に取ってみてください。

以下内容です。

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鎌田浩毅(以下鎌田)▼

皆さんこんにちは。鎌田です。僕は地球科学が専門で、人間・環境学研究科に勤めて二十三年になります。(中略)

柴山桂太(以下柴山)▼

鎌田先生は地球科学の観点から、現在は地殻の大変動期にあると警鐘を鳴らしておられます。一九九五年の阪神・淡路大震災に二〇一一年の東日本大震災と、日本列島は相次ぐ大地震に見舞われていますが、これで終わりとはならない。
南海トラフ巨大地震が間近に迫っている上に、富士山の噴火が起きる可能性が高い、と。まさに地殻の大変動期ですが、社会科学の方面からみても、今は大きな混乱の時代です。

資本主義の終わり?

柴山▼(中略)ただ、今が混乱の時代であることは確かです。二十世紀の半ばから、われわれが当たり前だと思ってきた政治や経済の仕組みが壊れて、新たな仕組みに移行していく。そういう過渡期にあるとは言えますね。

鎌田▼政府が前面に出てくるというのは、日本だけじゃなくて、アメリカも中国も同じことをやるわけでしょう。そうすると、何が起きるんですか。

柴山▼すべての国が同じような方向に行くんでしょうね。今、多くの人が「アメリカと中国は違う」と言っているじゃないですか。でも、私はアメリカと中国のシステムの違いはそんなに大きくないと思っています。どちらも政府主導の資本主義です

鎌田▼二〇二〇年代後半は、世界的にみんなクラッシュする、と。

柴山▼少なくとも、今のグローバルな貿易と金融の仕組みは崩れていくんじゃないでしょうか。

資本主義の本質は「借金経済」

鎌田▼何となく僕はね、日本だけ一千兆円の借金なんか背負ってバカなことをしていると思っていたんだけど。

柴山▼そうとも言えません。額だけでいえば、アメリカ政府はもう二千兆円近い借金を抱えてますので(笑)。世界全体でみても、政府の債務は増え続けていく一方です。

鎌田▼そうなんだ。それでどうやって世界経済は回っているの?

柴山▼簡単にいうと、政府がどんどんお金を作り出して、給付金を配ったり公共事業をやって、経済を回しているということです。

鎌田▼基本的に借金って、借金取りが来るじゃないですか。その場合は来ないわけ?

柴山▼借金と聞くと、われわれの感覚だと「良くないもの」という感じがしますが、資本主義の本質は「借金経済」なんですよね。資本主義が誕生するまでは、僕が何か事業を起こそうと思ったら自己資本でやらなければならなかった。カネを借りるにも金利がものすごく高かった。いわゆる高利貸しですね。伝統宗教は金利に批判的ですよね。金を貸して利子を取るというのは良くない行為だと。

 近代に入ると、金の貸し借りというのは悪ではなくて、経済発展には不可欠だという話になります。価値観の大転換が起きるんです。

鎌田▼「投資」になるわけですね。

柴山▼資本主義というときの「資本」は、狭い定義でいうと生産に使う機械のことですね。機械は高いので、外部からお金を借りないと調達できないですね。

鎌田▼それは経済が右肩上がりで成長し続けているから成り立つんでしょう。でも今は、経済成長は限界だ、と言われていますね。地球規模でみると、いろいろ限界が来ていると言われているんだけど、そこのところはどうなんですか。もう少し膨張できるわけ?

柴山▼それは誰にも分からないですね。

鎌田▼さっき、あるところでもう上限になってクライシスになるとおっしゃっていませんでしたか。

柴山▼短期的にはそうなると思います。ただ、さっきも言ったように、それが「資本主義の終わり」となるかは分かりません。一九三〇年代の大恐慌の時代にも、資本主義は終わると言われながら、終わらなかった。
倒産や失業が拡大して、株価もGDPも大きく落ち込んだのに、第二次大戦後には再び成長を再開していったわけです。しかも戦後の資本主義国の経済成長は、人類史上でも例がないスピードでした。

 今は再び、大恐慌以来の危機を迎えています。これで資本主義はいよいよ末期になったと考えるべきなのか、それとも新しい利潤機会が見い出されて、次の成長が待っているのか。議論が分かれるところです。

鎌田▼技術、例えばITとかそういうものが革新されるから、養える人が増えるということですか。

柴山▼そういう可能性もありますし、あるいはアイデアや知的財産権のような無形資産が新たな「資本」として投資の対象となるのかもしれません。それが具体的にどんなものになるかは分からない。分かれば、今から株を買っておきます(笑)。
ただ、分からないんだけど、資本主義は簡単には終わらないという気がしますね。それが人類にとって幸福であるかどうかは別にして。

(中略)

経済の中心はどこへ移るのか

鎌田▼(中略)ちょっと話を戻しますが、次はアジアやアフリカに経済の中心は移るんでしょうか。

柴山▼アメリカの優位はまだ続くと思います。ただ、アメリカ国内でも重心の移動はあって、経済や文化の中心が東海岸から西海岸に移りつつあるんですよね。海岸と西海岸では、だいぶ文化が違いますよね。

東海岸はいわばヨーロッパの弟分みたいなもの。ボストンの街並みなんて典型的ですよね。階級社会的な文化がまだ残っていると感じる。

 西海岸になると印象はずいぶん違います。人種もアジア系が多くて、社会の作りもフラット。テクノロジー信仰があって、権威への抵抗も強い。われわれが今使っている情報技術も、ほとんどカリフォルニア州で生まれたものですよね。

 近世から近代にかけて、世界の政治経済は環大西洋の地域を中心に動いていました。二十一世紀は、重心が太平洋を取り巻く諸国に移ってくるんでしょうね。事実、ものづくりの中心はアジア諸国になっていて、これはそう簡単には変えることのできないトレンドです。

 アメリカの西海岸文化と中国の集権的文化は一見すると相容れないように見えますが、テクノロジー信仰などではわりと一致している部分もある。もちろん、これから米中の衝突も本格化しますし、その狭間にいる日本は何度も厳しい局面に立たされるでしょうが、文明の重心は大西洋から太平洋の方に確実に移ってきていると思いますね。

鎌田▼なるほど。今日はもう、夢中で聞いていたんですけど(笑)。

柴山▼いや、一人でしゃべりすぎました(笑)。今日の本題は、これまで述べてきた政治や経済の大変動と、地球システムの大変動の時期が重なっているということです。南海トラフ巨大地震や富士山の噴火など、日本の地学的危機はどんな形でやってくるのか。後半は、そのお話を伺いたいと思います。

(『表現者クライテリオン』2021年3月号より)

後編は攻守交代して、鎌田先生が2030年代に訪れる地球学的な危機を語っています。

気になる後編は、『表現者クライテリオン』2021年4月16日発売の最新号掲載です。お楽しみに!

ご興味のある方は是非本誌を手に取ってみてください。

 

最新号は4月16日販売、現在予約受付中です。

本誌はその他、人と社会のあらゆる問題を様々なテーマに沿ってお届け。毎回読み応え抜群です!

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『表現者クライテリオン』2021年5月号
「コロナ疲れの正体 暴走するポリコレ」
 https://the-criterion.jp/backnumber/96_202105/

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